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第二章、国王を粛正するまで

第32話・「旅立ち」

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 元魔王はソルの正式な配下となり、魔王代理として魔王領の発展に尽力することに。ユニはやる事があると言い、ルナは魔王領に残るというのでソルは召喚した配下4人を引き連れ魔王領へ向かう。





 ー第二章、国王を粛正するまでー

 「ふー、大変だったな」

 ソルは塔を攻略し魔王となった。その後、人間の国へ行くことを決意したのだが問題が生じる。
 それは塔があった場所は魔王領の真ん中だったのだ。
 という事は、魔王領の半分くらいは移動しないと人間の国へ辿り着けないという事だ。

 俺は元魔王を頼ろうとも思ったのだが、魔王代理を任せておいて戻るのも情けないなと思い諦める。次にシャーロットが転移魔法を使えるらしいので頼むと言ったのだが、行ったことのある場所にしかいけませんと断られる。
 その後、アンに「ソル兄!歩いて向かおうよ!」と言われたので歩くことに。確かに、塔から出られたのに外を満喫しないのはいけないよなと同意したわけだ。



 歩き出してみると魔王領は俺の知っている外ではなかった。
 まず空は紫、太陽は黒、いかにもなドブや恐ろしい形をした木がいっぱい生えている。ゲームとかで出てくる魔界のような場所だ。俺的には太陽の照り付ける荒野とか草原とかを期待していたのだが全く違った。ここは人間の住む場所ではないと認識した。
 
 道中は魔王、大天使のガブリエル、魔法無効化のヴィシャ、無慈悲なアン、最強の闇魔法使いシャーロットという圧倒的な戦力で歩いていたために、有象無象の雑魚モンスターぐらいしか襲ってこなかった。
 人間の国へ向かっている最中に森があった時は、配下が無理やり道を作ってくれた。とはいえ山越えが面倒だなぁと言った時、シャーロットが山を丸々粉砕したから色々大丈夫かと心配したよ。配下達に常識を教えねば人間と上手くやれないだろう。

 このパーティーは睡眠や食事を全く必要としないためにガンガン進んでいたのだが、10日ほどたった。
 遠くを見ると俺が憧れていた青い空と光輝く太陽があった。魔王領との境で空の色がはっきりと分かれているようだ。

 「ソル様、つきましたね」

 「ああ、長かった。本当に」

 しみじみと思う。ぶっとうしで歩くのは疲れるよ、本当に!
 
 「どういうところなんだろうね!」

 アンが楽しそうに話してくるが、俺には悩んでいることがある。
 まずは国境を警備している人間がいないか、人間のフリができるかという点だ。配下含めて。
 これが大問題、アンは気に入らないことがあれば一発で人類の敵になりそうじゃない?
 
 だから考えた。
 一旦、人間に見える常識人だけで街を歩いて情報収集をする。人間以外を迫害するような感じだったらそもそもが無理だしな。
 とりあえず俺の姿を配下に見てもらったが人間に見えるとお墨付きを頂いた。ゾンビだったのに成長したなとしみじみ思う。

 で、配下達は翼が生えていたり、甲冑がとても怖かったり、しっぽが生えているものもいるので人間みたいな姿になれるか?と聞くと、なれますとの事。なれるんだ。
 ヴィシャの甲冑はどうしようもないが、中にいるのは人間だと言えば問題ないのではとの事で問題なし。
 アンは何もしなくても人間に見えるので容姿は問題ないのだが、無理だよなぁ・・・トラブルを起こしそう。これを加味すると配下達全員を召喚解除して俺一人で偵察したほうがいいよな。アンが拗ねるから。

 皆に人間の国を一人で歩いてみたいと説明し召喚解除する旨を伝えた。
 ガブリエルやヴィシャは頷くだけ、アンは当然のようにごね、シャーロットは分かってますよと笑みを浮かべていた。
 最終的には説得して全員の召喚を解除する。
 
 一人になったら寂しいものだな、とソルはつぶやいて魔王領と王国の国境へと歩いていく。
 
 そしてあっけなく国境を越える。
 夢にまで見た清々しい空気と青空、光り輝く太陽の前に俺は辿り着いたぞー!と叫んでしまう。
 塔での出来事が遠い昔のように感じる、ユニとルナは元気にしているだろうか。Lvは相当上がってたはずだから余裕で元気だろうな、多分。

 辺りは草原、警備兵等の姿はない。よしよし。
 国境問題はなにも起こらず、草原を歩いて人がいそうな町を探す。
 
 ・・・

 って!どこまで歩くんだよ!
 もう2日間ぐらい歩いてるんだけど?魔王領での歩きと違って配下もいないし、さすがにつらいよ!と誰もいないのに突っ込む。

 3日目にしてやっと辿り着いた、村が見える。
 よかった3日で・・・
 
 あの村なら問題なく情報収集出来るんじゃないか?城だと通行税とかとられそうだし、どうしようかと思っていたんだよ。
 まず村へ着いたらこの辺の情報収集はするとして、お金はいるだろうし宿も用意しないとな。俺自身は睡眠も食事もいらないから問題ないんだけど、そんな人は化け物としか思えないよな。人間と生活するなら人間らしく生きねば、などと考えているうちに村へ入った。

 「しらねえ顔だな?旅人か」

 畑を耕していた男性が話しかけてきた。
 旅人に見えるのか・・・うん、旅人というのは都合がいいかもしれない。常識外れなことをしても違う地域の風習とか言ってもいいかも。 

 「ええ、世界を旅しておりまして」

 「そか、こんな辺境までよくきなさった。村長のところへ案内するよ」

 「ありがとうございます」
 
 ソルは普通の人間と初めて話した。
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