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第一章、魔王を粛清するまで 

第16話・ホーリーゴールドトラスト

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 ルナが目覚めたので俺達の容姿が変わっていることやガブリエル、生贄召喚についてを説明した。 


 階段を上がりきると、洞窟のような場所だった。
 光源はなさそうに見えるがなぜか暗くない、残念成金が眩しいからじゃないよな?と大天使を見る。大天使は俺の視線にビクっと肩を上げていた。
 
 気を取り直して戦闘用にゾンビ20体ほど召喚する。
 召喚したゾンビを見て俺自身が固まってしまう。15体のゾンビが黒くてしっかりとした鎧に黒い剣(フランベルジュ?)と黒くて立派な盾を持っている、残りの5体も黒い鎧に盾まで同じだが剣の代わりに黒くて厳つい杖を持っている。俺が召喚する際に強いゾンビの兵隊前衛15体、後衛5体と思い浮かべたらこうなった。 
 ユニとルナはゾンビ達を見て「おおぉぉ」と声を上げた。

 声を上げるのも無理はない。召喚されたゾンビ達の装備は上位装備では?と思うようなもので、そのおかげか強者のオーラを纏っているようにも見える。俺のゾンビ部隊がここまで格好良くなるなんて感激だ。

 召喚したゾンビ達を先頭にして洞窟をどんどん進む。
 低Lvの時はゾンビ達を後方にも配置し奇襲を警戒していたが、今はガブリエルも控えているため気にもしていない。
 
 こちらに向かってくる有象無象のモンスターは状態異常や魔法等様々な攻撃を行ってきたが、ゾンビ達は連携しながら薙ぎ倒していく。
 時には、洞窟の壁を壊して俺に奇襲を仕掛けてくるものもいたが、ガブリエルが金の槍で消し飛ばしていた。
 ガブリエルさんはとても強いようです。
 


 長いこと歩き回り、ようやく洞窟に似つかわしくない大きな扉を発見した。 

 「ボスだねぇ」

 「ボスだな」

 「ボスね」
 
 俺は88Lvになっていた。
 このパーティーで戦闘を行ってきたのは、召喚されたゾンビ部隊とガブリエルのみ。
 まさかの3人がニートという状況。いや、俺は召喚士なのだから一番働いている事になるよな。他2人は汗水流して働いている俺を笑いながらついてきたのだろう、こうやって働くものと働かざるものという社会の縮図が出来上がるのかと思い、ウンウンと俺は頷く。

 「えい」

 パンッという音共にソルの右腕は弾ける。

 「はぁ!?な、なにを!」

 「ソルが変な事を考えるからだよぉ、お仕置きだよ」

 ユニの野郎!!!
 俺が不死身なことをいいことに簡単に体を吹き飛ばしてやがって殺人鬼と変わらねえじゃねえか!
 ん?今、落ちてる石を拾って投げただけだよな?それで腕が弾け飛ぶってどんな威力をしてるんだ、ユニには脳筋の
 
 「えい」
 
 パンッという音共にソルの左腕は弾ける。

 「!?おいいぃぃい!!!ふざけ、い、いや、なんでもないです」

 ソルは左腕も吹き飛びゲームに出てくるような両腕のない雑魚ゾンビと化した。
 そのことをユニへ抗議しようとしたら満面のどす黒い笑みを浮かべており、俺はなにもなかったことにするしかなかった。なんとも言えない気持ちで自身に生贄召喚を用い両腕を再生する。
 覚えてろよ、ユニめ。

 「もう!ボス戦を前にイチャイチャしないでよ、さっさと行くわよ」

 ルナに注意を受ける、何故かそんなことないよぉとユニは恥ずかしがっている。
 いやいやいや、冷静に考えて両腕を弾け飛ばす相手とイチャイチャしているとかありえんだろ。これだから頭まで筋肉が詰まったものはと心の中で悪態をついていると、ルナがボスへの扉を開けていた。

 皆で扉の中に入ると今までの洞窟といったところから一変、闘技場となっておりボス部屋に相応しい雰囲気がしている。
 その中央に立つボスの印象はごつい悪魔としか言いようがない。頭に角2本、顔は上位の悪魔ですと言った感じ、体長は4mぐらい?で黒い翼も生えており、どんなやつでも殺しそうな迫力のある体格をしている。ラスボス近辺に出てくる風格だ。
 
 「大きいねぇ」

 間の抜けた声でユニが言うので緊張感のないやつだなとソルは苦笑いする、とはならない。
 パーティー全員が全くと言っていいほど緊張していないのだ。禍々しく強者の風格を持つボスが待ち受けているにも関わらず余裕で倒せる自信がある、その自信はLv差なのか相性なのかまでは分からないが敵にならないだろう。

 

 ボス悪魔が雄叫びを上げ翼で飛び上がると、口を開き黒いエネルギー弾のようなものを膨らませる。
 
 し、しまった・・・対空戦とは聞いてないわ。
 俺は杖を持ったゾンビに慌てて魔法攻撃の命令を出すが、いくら上位装備で固めたゾンビだとしてもボス悪魔の攻撃を迎撃できるとは到底思えない。なにか打てる手はないか打てる手はないかと考えていたときに思い出す、あ、俺召喚士だったわ。
 あの悪魔の攻撃に対抗できる奴はいないかと急いで召喚リストを見ていると、後ろからガブリエルが悪魔に向かって飛び立つ。

 悪魔はガブリエルを確認すると、膨らんだ黒いエネルギー弾を放つ。
 その黒いエネルギー弾はガブリエルを飲み込むほどに大きくなっているが、ガブリエルは真正面から突っ込んでいく。

 「聖装」

 ガブリエルが一言唱えると全身が光輝く。
 その光は悪しきものを殲滅せんとする聖なる光、それを纏う事で自身のステータス向上に加えて闇属性へのダメージ上昇と闇属性からのダメージ減少を兼ね備えるバフ。聖なる光を纏った金色の装備は今や目で見れないほどに眩しい。

 「ホーリーゴールドトラスト!」

 ガブリエルは聖なる光を纏った金色の槍を構えて突撃する、金色の槍と黒いエネルギー弾が激突すると黒いエネルギー弾のほうが跡形もなく消し飛んだ。
 悪魔は黒いエネルギー弾が消し飛んだことに動揺した顔を見せるが、その直後に輝きまくっているガブリエルを視界に入れてしまい悪魔は叫びながら手で目を覆う。

 「はぁぁぁ!!!」

 ガブリエルは黒いエネルギー弾を消し飛ばした勢いのまま、槍を構えた状態で悪魔へ突撃していく。
 

 殺すな。翼を削りつつ致命傷を与えろ。
 「ソル様?・・・了解です」


 ガブリエルは頭の中に聞こえたソルの声に従い、悪魔の右胸辺りへ槍で突撃し、右胸、肩、腕、翼を抉りとり通り抜けた。
 悪魔は汚い悲鳴を上げながら地面へ落ちる。

 相当な質量が地面に落ちたためにものすごい音と共に地面が揺れるが、そんなことは関係ないとばかりにソルは悪魔の元に近寄って身体に触れる。

 「生贄召喚」

 悪魔の身体を包み込むほど巨大な魔法陣に飲み込まれていくと、すぐに魔法陣から悪魔が召喚される。
 召喚された悪魔の身体はガブリエルが与えた致命傷は一切存在していない、だが悪魔は地面に手をついて荒い息を吐いている。敵である俺達を気にする余裕もなさそうだ。
 俺はすかさず悪魔の身体に手を置き生贄召喚を再度行う、それを10回ほど繰り返した。

 悪魔の目はうつろとなり、口からは涎が出ている。
 しばらくの間、俺達はおかしくなってしまった悪魔を見守っていたのだが、敵である俺達が視界に入ってもなにもしてこない。完全に壊れたようだ。

 「実験終了かな。ボスという規格外にも生贄召喚は効く、そして生きてきたことを後悔させ続ければ壊れると。生贄召喚は完全に精神攻撃だな。ガブリエル、これ以上苦しめぬよう一撃で殺してやれ」

 「はっ!仰せのままに」

 ガブリエルは先ほどと同じくホーリーゴールドトラストで悪魔に槍で突撃すると、悪魔の上半身が丸々消し飛んだ。
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