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第2章
第五話 ⑰ ~激戦の予算会議~ 放課後 悠斗視点 その①
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第五話 ⑰
昼休みの時間の放送の効果もあり、クラスメイトからも予算会議のことについて、色々と聞かれてきた。
部活に入っているクラスメイトは、活動時間なので見れないが、入っていないクラスメイトは見てくれる。と言ってくれた。
腹案について聞かれたけど、それはまだオフレコだよ。とつっぱねた。
そうしていると、六時間目の授業が終わり、SHRも終わった。
そうしてやって来た放課後の時間。
「桐崎。私は予算会議については何も言わない。お前から頼まれていたことに関しては全て解決しておいた。あとはお前たちの頑張り次第だ」
と、山野先生から言われた。
「全部と言うのは、校長先生や教頭先生だけでなく……」
「そうだ。部活動の顧問の先生にも話を通しておいた。とりあえず、部活動支援金の制度に関しては、先生たちの了承は得ている。実行は可能だ」
「ありがとうございます!!」
俺は山野先生に頭を下げる。
「なに、気にするな。半ば無理やり入会させたとすら思っているし、この程度のことならなんの手間でも無い。あと、今日の学級日誌の提出は不要だ。お前も黒瀬もそれどころでは無いだろう?明日提出してくれれば構わない」
先生はそう言うと、教室を出ていった。
山野先生には借りがたくさん出来てしまったな。
何とか返していかないと。
俺はそんなことを思いながら、自分の席に戻り、支度を進める。
「……悠斗くん。お願いがあります」
「ん……何かな、詩織さん?」
隣から、少しだけ恥ずかしそうに、詩織さんが話しかけてくる。
「その、大変お恥ずかしいのですが……緊張してまして」
「あぁ、確かに。俺も少し緊張してる」
彼女のその言葉に、俺は苦笑いを浮かべる。
「……良ければ、手を握っても良いですか?」
「……え?」
放課後の教室。
部活動があるクラスメイトはみんな部活に向かい、帰宅部の連中はみんな食堂やら喫茶店やらファーストフード店などでたむろしながら、予算会議の配信を見る予定だ。
そのため、今、この場には、俺と、詩織さんしか居ない。
「緊張を納めるには、信頼する人の手を握ると良い。と聞いた事があります。彼女の居る悠斗くんにお願いするのは心苦しいですが、もし良ければと。……その、嫌でしたら断ってもらっても構いません」
「……わかった」
俺はそう言うと、右手を前に差し出す。
「……っ!!あ、ありがとうございます!!」
詩織さんはそう言うと、俺の手を両手で握りしめる。
や、柔らかい……
初めて握る彼女の手は、少しひんやりしてて、とても柔らかかった。
「……ありがとうございます。すごく、落ち着きます」
と、彼女は微笑みながらそう言う。
そ、その笑顔は反則だよなぁ……
俺はそんなことを思いながら、自分の右手を愛おしく握りしめる詩織さんを見ていた。
一分程だった頃だろうか。
一時間程にも思えた触れ合いの時間。
詩織さんからある提案がされる。
「……嫌なら断ってください」
「……詩織さん。その頼み方はずるいよ……」
俺は彼女に苦笑する。
「……手を繋いで会議室まで行ってもいいですか?」
「……マジで言ってる?」
「はい。マジです」
この時間は他の生徒はほとんど居ない。
仮に会議室まで手を繋いで歩いたとしても、見つかる可能性は低いとも言える。
で、でも。こういう事をして前回、痛い目にあったじゃないか……っ!!
学べよ、俺!!
「本日の朝。朱里さんから言われました」
考え込む俺に、詩織さんが話しかける。
「な、何を言われたのかな?」
「『悠斗は詩織ちゃんが何をしても決して靡いたりなんかしないから、何をしても構わないよ』という旨の言葉を頂いております」
う、ウソだろ……
「さすがにその言葉はに従って、キスだのなんだのを求めるのはちょっと行き過ぎな気がしましたので、手を繋ぐくらいなら許してもらえませんか?と」
「そ、そうなんだ……」
俺の知らないところで行われた二人のやり取りを知らない以上、俺に選択肢は無かった。
「わかったよ。会議室までは手を繋いでいこう」
「……っ!!ありがとうございます!!嬉しいです」
俺の手を握りながら、本当に嬉しそうに笑う詩織さん。
「あ、あくまでも会議室までだからね!!それと、人の気配がしたら離すからね!?」
「わかってますよ。悠斗くんは本当に優しい人ですね。そういう所が大好きです」
そう言って、微笑む詩織さん。
その顔に弱いんだ、俺は……
てか、しれっと『大好きです』って言われたよな……
「……はぁ」
俺の精神がガリガリ削られるイベントだが、何とか理性的に行かないと……
大事な予算会議の前に現れた難題に、俺はため息を吐いた。
昼休みの時間の放送の効果もあり、クラスメイトからも予算会議のことについて、色々と聞かれてきた。
部活に入っているクラスメイトは、活動時間なので見れないが、入っていないクラスメイトは見てくれる。と言ってくれた。
腹案について聞かれたけど、それはまだオフレコだよ。とつっぱねた。
そうしていると、六時間目の授業が終わり、SHRも終わった。
そうしてやって来た放課後の時間。
「桐崎。私は予算会議については何も言わない。お前から頼まれていたことに関しては全て解決しておいた。あとはお前たちの頑張り次第だ」
と、山野先生から言われた。
「全部と言うのは、校長先生や教頭先生だけでなく……」
「そうだ。部活動の顧問の先生にも話を通しておいた。とりあえず、部活動支援金の制度に関しては、先生たちの了承は得ている。実行は可能だ」
「ありがとうございます!!」
俺は山野先生に頭を下げる。
「なに、気にするな。半ば無理やり入会させたとすら思っているし、この程度のことならなんの手間でも無い。あと、今日の学級日誌の提出は不要だ。お前も黒瀬もそれどころでは無いだろう?明日提出してくれれば構わない」
先生はそう言うと、教室を出ていった。
山野先生には借りがたくさん出来てしまったな。
何とか返していかないと。
俺はそんなことを思いながら、自分の席に戻り、支度を進める。
「……悠斗くん。お願いがあります」
「ん……何かな、詩織さん?」
隣から、少しだけ恥ずかしそうに、詩織さんが話しかけてくる。
「その、大変お恥ずかしいのですが……緊張してまして」
「あぁ、確かに。俺も少し緊張してる」
彼女のその言葉に、俺は苦笑いを浮かべる。
「……良ければ、手を握っても良いですか?」
「……え?」
放課後の教室。
部活動があるクラスメイトはみんな部活に向かい、帰宅部の連中はみんな食堂やら喫茶店やらファーストフード店などでたむろしながら、予算会議の配信を見る予定だ。
そのため、今、この場には、俺と、詩織さんしか居ない。
「緊張を納めるには、信頼する人の手を握ると良い。と聞いた事があります。彼女の居る悠斗くんにお願いするのは心苦しいですが、もし良ければと。……その、嫌でしたら断ってもらっても構いません」
「……わかった」
俺はそう言うと、右手を前に差し出す。
「……っ!!あ、ありがとうございます!!」
詩織さんはそう言うと、俺の手を両手で握りしめる。
や、柔らかい……
初めて握る彼女の手は、少しひんやりしてて、とても柔らかかった。
「……ありがとうございます。すごく、落ち着きます」
と、彼女は微笑みながらそう言う。
そ、その笑顔は反則だよなぁ……
俺はそんなことを思いながら、自分の右手を愛おしく握りしめる詩織さんを見ていた。
一分程だった頃だろうか。
一時間程にも思えた触れ合いの時間。
詩織さんからある提案がされる。
「……嫌なら断ってください」
「……詩織さん。その頼み方はずるいよ……」
俺は彼女に苦笑する。
「……手を繋いで会議室まで行ってもいいですか?」
「……マジで言ってる?」
「はい。マジです」
この時間は他の生徒はほとんど居ない。
仮に会議室まで手を繋いで歩いたとしても、見つかる可能性は低いとも言える。
で、でも。こういう事をして前回、痛い目にあったじゃないか……っ!!
学べよ、俺!!
「本日の朝。朱里さんから言われました」
考え込む俺に、詩織さんが話しかける。
「な、何を言われたのかな?」
「『悠斗は詩織ちゃんが何をしても決して靡いたりなんかしないから、何をしても構わないよ』という旨の言葉を頂いております」
う、ウソだろ……
「さすがにその言葉はに従って、キスだのなんだのを求めるのはちょっと行き過ぎな気がしましたので、手を繋ぐくらいなら許してもらえませんか?と」
「そ、そうなんだ……」
俺の知らないところで行われた二人のやり取りを知らない以上、俺に選択肢は無かった。
「わかったよ。会議室までは手を繋いでいこう」
「……っ!!ありがとうございます!!嬉しいです」
俺の手を握りながら、本当に嬉しそうに笑う詩織さん。
「あ、あくまでも会議室までだからね!!それと、人の気配がしたら離すからね!?」
「わかってますよ。悠斗くんは本当に優しい人ですね。そういう所が大好きです」
そう言って、微笑む詩織さん。
その顔に弱いんだ、俺は……
てか、しれっと『大好きです』って言われたよな……
「……はぁ」
俺の精神がガリガリ削られるイベントだが、何とか理性的に行かないと……
大事な予算会議の前に現れた難題に、俺はため息を吐いた。
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