上 下
181 / 505
ゴウキ・ファミリー

未知の魔物

しおりを挟む
リフトの非礼により、あわや一触即発となりかねなかったその場は、クレアとリフトの謝罪でどうにか一旦収まったが、リフトのことについては中央への報告は免れないこととなった。
リフトは甘んじてその決定を受け入れるが、内心は腹に据えかねていた。


「今回の敵についてお聞かせ願えますか?」


場の空気を切り替えるため、クレアが切り出した。
ギリアムとグリードがお互い顔を見合わせ、頷き合う。


「始め、奴らは我がディンコクの地から発生しました」


グリードが神妙な顔をしながら、とつとつと語る。
ディンコクの国境に近い地から突如現れた正体不明の未知の魔物達は、従来より認知されている魔物と比較して強く、習性など特徴も把握していないために苦戦したという。
掃討できぬ間に魔物は数を増やし、やがてバルジ王国を目指すように進行を開始。ディンコクで発生した魔物が隣国であるバルジ王国へと侵入してしまえば、ディンコク国軍の恥としてグリード率いる国境警備隊は奮闘するも、不慣れな敵であることが不利なのもあって力及ばず押し切られ、バルジ王国国境侵入を許してしまう形となった。
今はディンコク軍の責任でもあると国境警備隊がバルジ王国軍に協力を申し出る形で共同戦線を取っている形になっているという。
バルジ王国軍とディンコク軍の活躍により、ある程度は押し返すことに成功したが、今だに魔物の殲滅には至っていない。
味方の被害が増える中で、更なる増援を要請しようと考えていた矢先、クレア達が到着したのだという。





「見たことのない魔物・・・ですか」


クレアは顎に手を添え、考え込む仕草を見せた。


「えぇ、複数種類いるのですが、いずれもこれまで確認されているどの魔物とも型が一致しません」


ギリアムとグリードは心底参っているかのように溜め息をつく。
軍隊の魔物との戦い方は、敵の種類によって指揮官がそれに応じたベストの戦術を練って命令し、殲滅作戦を決行する。例えば空を飛ぶことのある魔物だと、狙撃できる弓兵や黒魔法士の部隊を前面に配置する・・・といったようなものだ。だが、未知の魔物となると特徴や行動パターンなどのデータがないために、指揮官の方も混乱してしまうのだ。
効率的な戦術を練られないと、当然現場がその分負担を強いられることになる。今回の大苦戦もそういった不慣れによる混乱が積み重なって起きたことであった。



「わかりました。これから私達が前面に出てみます」


戦術が錬られず苦戦するのであれば、圧倒的な力を持つ勇者達が前面に出て戦って魔物達の戦力を削るしかない。そして勇者達が打ち漏らした敵を後ろから連合軍が掃討を行うことになった。

未知の魔物の軍団との戦闘・・・
クレアは何か予感めいたものを感じた。

それはこれから始まる大きな、とても大きな戦いの予感であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。 そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。 幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。 だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。 はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。 彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。 いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

これが私の兄です

よどら文鳥
恋愛
「リーレル=ローラよ、婚約破棄させてもらい慰謝料も請求する!!」  私には婚約破棄されるほどの過失をした覚えがなかった。  理由を尋ねると、私が他の男と外を歩いていたこと、道中でその男が私の顔に触れたことで不倫だと主張してきた。  だが、あれは私の実の兄で、顔に触れた理由も目についたゴミをとってくれていただけだ。  何度も説明をしようとするが、話を聞こうとしてくれない。  周りの使用人たちも私を睨み、弁明を許されるような空気ではなかった。  婚約破棄を宣言されてしまったことを報告するために、急ぎ家へと帰る。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

【短編】追放した仲間が行方不明!?

mimiaizu
ファンタジー
Aランク冒険者パーティー『強欲の翼』。そこで支援術師として仲間たちを支援し続けていたアリクは、リーダーのウーバの悪意で追補された。だが、その追放は間違っていた。これをきっかけとしてウーバと『強欲の翼』は失敗が続き、落ちぶれていくのであった。 ※「行方不明」の「追放系」を思いついて投稿しました。短編で終わらせるつもりなのでよろしくお願いします。

処理中です...