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ゴウキ・ファミリー
未知の魔物
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リフトの非礼により、あわや一触即発となりかねなかったその場は、クレアとリフトの謝罪でどうにか一旦収まったが、リフトのことについては中央への報告は免れないこととなった。
リフトは甘んじてその決定を受け入れるが、内心は腹に据えかねていた。
「今回の敵についてお聞かせ願えますか?」
場の空気を切り替えるため、クレアが切り出した。
ギリアムとグリードがお互い顔を見合わせ、頷き合う。
「始め、奴らは我がディンコクの地から発生しました」
グリードが神妙な顔をしながら、とつとつと語る。
ディンコクの国境に近い地から突如現れた正体不明の未知の魔物達は、従来より認知されている魔物と比較して強く、習性など特徴も把握していないために苦戦したという。
掃討できぬ間に魔物は数を増やし、やがてバルジ王国を目指すように進行を開始。ディンコクで発生した魔物が隣国であるバルジ王国へと侵入してしまえば、ディンコク国軍の恥としてグリード率いる国境警備隊は奮闘するも、不慣れな敵であることが不利なのもあって力及ばず押し切られ、バルジ王国国境侵入を許してしまう形となった。
今はディンコク軍の責任でもあると国境警備隊がバルジ王国軍に協力を申し出る形で共同戦線を取っている形になっているという。
バルジ王国軍とディンコク軍の活躍により、ある程度は押し返すことに成功したが、今だに魔物の殲滅には至っていない。
味方の被害が増える中で、更なる増援を要請しようと考えていた矢先、クレア達が到着したのだという。
「見たことのない魔物・・・ですか」
クレアは顎に手を添え、考え込む仕草を見せた。
「えぇ、複数種類いるのですが、いずれもこれまで確認されているどの魔物とも型が一致しません」
ギリアムとグリードは心底参っているかのように溜め息をつく。
軍隊の魔物との戦い方は、敵の種類によって指揮官がそれに応じたベストの戦術を練って命令し、殲滅作戦を決行する。例えば空を飛ぶことのある魔物だと、狙撃できる弓兵や黒魔法士の部隊を前面に配置する・・・といったようなものだ。だが、未知の魔物となると特徴や行動パターンなどのデータがないために、指揮官の方も混乱してしまうのだ。
効率的な戦術を練られないと、当然現場がその分負担を強いられることになる。今回の大苦戦もそういった不慣れによる混乱が積み重なって起きたことであった。
「わかりました。これから私達が前面に出てみます」
戦術が錬られず苦戦するのであれば、圧倒的な力を持つ勇者達が前面に出て戦って魔物達の戦力を削るしかない。そして勇者達が打ち漏らした敵を後ろから連合軍が掃討を行うことになった。
未知の魔物の軍団との戦闘・・・
クレアは何か予感めいたものを感じた。
それはこれから始まる大きな、とても大きな戦いの予感であった。
リフトは甘んじてその決定を受け入れるが、内心は腹に据えかねていた。
「今回の敵についてお聞かせ願えますか?」
場の空気を切り替えるため、クレアが切り出した。
ギリアムとグリードがお互い顔を見合わせ、頷き合う。
「始め、奴らは我がディンコクの地から発生しました」
グリードが神妙な顔をしながら、とつとつと語る。
ディンコクの国境に近い地から突如現れた正体不明の未知の魔物達は、従来より認知されている魔物と比較して強く、習性など特徴も把握していないために苦戦したという。
掃討できぬ間に魔物は数を増やし、やがてバルジ王国を目指すように進行を開始。ディンコクで発生した魔物が隣国であるバルジ王国へと侵入してしまえば、ディンコク国軍の恥としてグリード率いる国境警備隊は奮闘するも、不慣れな敵であることが不利なのもあって力及ばず押し切られ、バルジ王国国境侵入を許してしまう形となった。
今はディンコク軍の責任でもあると国境警備隊がバルジ王国軍に協力を申し出る形で共同戦線を取っている形になっているという。
バルジ王国軍とディンコク軍の活躍により、ある程度は押し返すことに成功したが、今だに魔物の殲滅には至っていない。
味方の被害が増える中で、更なる増援を要請しようと考えていた矢先、クレア達が到着したのだという。
「見たことのない魔物・・・ですか」
クレアは顎に手を添え、考え込む仕草を見せた。
「えぇ、複数種類いるのですが、いずれもこれまで確認されているどの魔物とも型が一致しません」
ギリアムとグリードは心底参っているかのように溜め息をつく。
軍隊の魔物との戦い方は、敵の種類によって指揮官がそれに応じたベストの戦術を練って命令し、殲滅作戦を決行する。例えば空を飛ぶことのある魔物だと、狙撃できる弓兵や黒魔法士の部隊を前面に配置する・・・といったようなものだ。だが、未知の魔物となると特徴や行動パターンなどのデータがないために、指揮官の方も混乱してしまうのだ。
効率的な戦術を練られないと、当然現場がその分負担を強いられることになる。今回の大苦戦もそういった不慣れによる混乱が積み重なって起きたことであった。
「わかりました。これから私達が前面に出てみます」
戦術が錬られず苦戦するのであれば、圧倒的な力を持つ勇者達が前面に出て戦って魔物達の戦力を削るしかない。そして勇者達が打ち漏らした敵を後ろから連合軍が掃討を行うことになった。
未知の魔物の軍団との戦闘・・・
クレアは何か予感めいたものを感じた。
それはこれから始まる大きな、とても大きな戦いの予感であった。
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