大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

文字の大きさ
112 / 165

婚約者が大人気です。

しおりを挟む
デビュタントの時ぶりの王宮は、あの頃と同じく煌めいて見える。

今日の夜会は、季節ごとに開かれる定例のものだ。

招かれた人しか入れないとはいえ、ホールには多くの人がひしめき合っていた。

その中でも、騎士服姿のアマンド様は相当目立っているらしい。

「んまぁ!アマンド ガーナー様ではなくて?」

「君の活躍をこの目で見たよ!素晴らしい才能だ!是非私の孫に会ってやってくれないか!?」

「アマンド様!私とあちらでお話ししましょう?」

周りを囲まれ、私は完全に添え物と化した。

マルグリット侯爵家のお茶会の時とはまた違って、皆さん目の色変えてガツガツ来る。

やはり御前試合が終わったばかりで、話題性が違うのだろう。

(こっ・・こういう場合は気配を殺していればいいのかしら?でも・・)

押しの強い令嬢が、私を押し出しながらアマンド様の腕に絡みつこうとしている。

必死に足を踏ん張るが、今度は寄りかかるフリをしながら、肩を入れてグイグイ押してきた。

無邪気な笑顔をアマンド様に向けながら、全力で私を押してくる令嬢の、この手練れ感。

くっ!絶対負けたくない・・!

御前試合でジュディ様が解説してくれた内容を思い返す。

こういう時は腰を落として押し返した方がいいんだっけ?

どう対抗すべきか策を練っていると、アマンド様に腕を引かれた。

「失礼、レディ。離していただけますか」

私の肩にアマンド様の手が回り、ギュッと抱き寄せられた。

「リア、俺から離れないで?」

頭にチュッと柔らかい感触がして、向こうのほうからキャー!と軽く悲鳴が上がる。

「まあ、皆様。いくら渦中の方でも、そんな取り囲むような真似はいけませんわ?」

ジュディ様のお母様・・!

ニコニコしながら、さりげなく取り巻く皆さんと私たちの間に入ってくれる。

「こんなにお熱いおふたりですもの。おふたりの時間を奪うのは不粋というものですわ。フフフ」

侯爵夫人の登場に気圧されてたじろぐ皆さん。

「マルグリット侯爵夫人、それではお言葉に甘えて失礼します。」

「ええ。良い夜を」




「助かったな・・」

ジュディ様のお母様として接する時とは全然違って、高位貴族のオーラがすごかった。

それにしても・・

「アマンド様、改めてすごい人気ですね」

アマンド様が苦笑する。

「人気というか、見せ物になったような気分だな。マルグリット侯爵家の後ろ盾があると知られれば、おいそれと無理なことは言ってこないだろうが・・話が広まるまで、何か腹に入れておこう。」

「はいっ!」

そうだ!折角夜会に来たのだから・・!

私はワクワクしながら、アマンド様と飲食スペースへ足を向けた。

夜会には、食事よりつまむものが多い。

やはり、ガッツリ食事を食べる人の方が少ないんだろう。

得意のお肉コーナーを目指そうとするアマンド様だったが、その奥に目的のものをみとめて、私は彼の腕を引いた。

「どうした?」

「アマンド様、私、あちらに行きたいです!」

「あちらって・・」

私が指差した方をチラリと見て、ああ、とアマンド様が頷いた。

「喉が渇いた?それならこっちに飲み物が・・」

回れ右しそうなアマンド様を引き留める。

ふふ、そうじゃなくて!

「アマンド様、私、お酒を飲みたいです!」

私の指差す先にあるバーカウンターに目をやりながら、アマンド様の顔が困惑していく。

「・・レイリアが、酒を?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『めでたしめでたし』の、その後で

ゆきな
恋愛
シャロン・ブーケ伯爵令嬢は社交界デビューの際、ブレント王子に見初められた。 手にキスをされ、一晩中彼とダンスを楽しんだシャロンは、すっかり有頂天だった。 まるで、おとぎ話のお姫様になったような気分だったのである。 しかし、踊り疲れた彼女がブレント王子に導かれるままにやって来たのは、彼の寝室だった。 ブレント王子はお気に入りの娘を見つけるとベッドに誘い込み、飽きたら多額の持参金をもたせて、適当な男の元へと嫁がせることを繰り返していたのだ。 そんなこととは知らなかったシャロンは恐怖のあまり固まってしまったものの、なんとか彼の手を振り切って逃げ帰ってくる。 しかし彼女を迎えた継母と異母妹の態度は冷たかった。 継母はブレント王子の悪癖を知りつつ、持参金目当てにシャロンを王子の元へと送り出していたのである。 それなのに何故逃げ帰ってきたのかと、継母はシャロンを責めた上、役立たずと罵って、その日から彼女を使用人同然にこき使うようになった。 シャロンはそんな苦境の中でも挫けることなく、耐えていた。 そんなある日、ようやくシャロンを愛してくれる青年、スタンリー・クーパー伯爵と出会う。 彼女はスタンリーを心の支えに、辛い毎日を懸命に生きたが、異母妹はシャロンの幸せを許さなかった。 彼女は、どうにかして2人の仲を引き裂こうと企んでいた。 2人の間の障害はそればかりではなかった。 なんとブレント王子は、いまだにシャロンを諦めていなかったのだ。 彼女の身も心も手に入れたい欲求にかられたブレント王子は、彼女を力づくで自分のものにしようと企んでいたのである。

[完結]「私が婚約者だったはずなのに」愛する人が別の人と婚約するとしたら〜恋する二人を切り裂く政略結婚の行方は〜

h.h
恋愛
王子グレンの婚約者候補であったはずのルーラ。互いに想いあう二人だったが、政略結婚によりグレンは隣国の王女と結婚することになる。そしてルーラもまた別の人と婚約することに……。「将来僕のお嫁さんになって」そんな約束を記憶の奥にしまいこんで、二人は国のために自らの心を犠牲にしようとしていた。ある日、隣国の王女に関する重大な秘密を知ってしまったルーラは、一人真実を解明するために動き出す。「国のためと言いながら、本当はグレン様を取られたくなだけなのかもしれないの」「国のためと言いながら、彼女を俺のものにしたくて抗っているみたいだ」 二人は再び手を取り合うことができるのか……。 全23話で完結(すでに完結済みで投稿しています)

家が没落した時私を見放した幼馴染が今更すり寄ってきた

今川幸乃
恋愛
名門貴族ターナー公爵家のベティには、アレクという幼馴染がいた。 二人は互いに「将来結婚したい」と言うほどの仲良しだったが、ある時ターナー家は陰謀により潰されてしまう。 ベティはアレクに助けを求めたが「罪人とは仲良く出来ない」とあしらわれてしまった。 その後大貴族スコット家の養女になったベティはようやく幸せな暮らしを手に入れた。 が、彼女の前に再びアレクが現れる。 どうやらアレクには困りごとがあるらしかったが…

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

元婚約者様へ――あなたは泣き叫んでいるようですが、私はとても幸せです。

有賀冬馬
恋愛
侯爵令嬢の私は、婚約者である騎士アラン様との結婚を夢見ていた。 けれど彼は、「平凡な令嬢は団長の妻にふさわしくない」と、私を捨ててより高位の令嬢を選ぶ。 ​絶望に暮れた私が、旅の道中で出会ったのは、国中から恐れられる魔導王様だった。 「君は決して平凡なんかじゃない」 誰も知らない優しい笑顔で、私を大切に扱ってくれる彼。やがて私たちは夫婦になり、数年後。 ​政争で窮地に陥ったアラン様が、助けを求めて城にやってくる。 玉座の横で微笑む私を見て愕然とする彼に、魔導王様は冷たく一言。 「我が妃を泣かせた罪、覚悟はあるな」 ――ああ、アラン様。あなたに捨てられたおかげで、私はこんなに幸せになりました。心から、どうぞお幸せに。

「ばっかじゃないの」とつぶやいた

吉田ルネ
恋愛
少々貞操観念のバグったイケメン夫がやらかした

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

処理中です...