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それぞれの春
アマンド ガーナーの邂逅②
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「ード様・・アマンド様」
体を揺すられて、自分が寝てしまっていたことに気づいた。
しまった・・ここは・・そうだ、レイリアとの茶会だ・・
「アマンド様、白状してくださいませ。昨夜はお仕事だったのでしょう?」
「・・・いや」
昨日は王都を騒がせていた強盗団の大捕物があり、徹夜明けだった。
「では昨日は何時に寝たのです?」
いつもならすぐに取り繕えるはずなのに、寝起きの頭ですぐに反応できなかった。
「ほら、すぐに言えないではないですか。やはり寝ていないのでしょう?」
レイリアが、俺に詰め寄る。
「今からお屋敷に戻ってお休みください。折角のお休みが無駄になります」
決然とレイリアが言い切る。
無駄?無駄とはなんだ。俺は君と会うために今日まで頑張ってきてー
「やはり週に1回のお茶会は無茶です。月に1回に変えましょう」
は?月に・・1回!?
「レイリア、待ってくれ。月に1回なんて」
そんなこと、言わないで。
「いいえ、もうこれはアマンド様がどう言おうと・・もう決めました」
いやだ・・いやだ。これ以上、会えなくなるなんて耐えられない。
「なんでそんなこと言うんだ!俺は大丈夫だ!」
「大丈夫って・・今寝てしまうほどお疲れではないですか!」
「今は少し気を抜いただけだ!次からは気をつける」
「そういうことではなくて・・」
「月1回など・・レイリアはそれでもいいのか?」
「私?」
「レイリアは、それで平気なのか!?」
「私は平気です!・・平気でないのはアマンド様の方です。お仕事にも体にも差し障ります。早くお屋敷へ戻って休息を・・」
レイリアの声が、遠く感じる。
俺だけなのか?
毎日会いたいと願うのは、俺だけなのか?
毎日、何度も何度も、折に触れて君のことを頭に思い浮かべるのは、俺だけなのか?
こんなに恋い焦がれているのは・・
そうか、俺だけがー
レイリアは、俺がいなくても平気なのだ。
そう思ってしまったら、もうだめだった。
これまでのレイリアとのひと幕ひと幕が、黒く塗りつぶされていく。
デビュタントの時、俺がパートナーじゃなくても平気だと言ったあの言葉は、本心だったのか。
俺に遠慮して屋敷に来なくなったのではなくて、来る必要を感じなかったから来なくなったのか。
むしろ俺との茶会を煩わしく思っていて、それでこんなに必死に頻度を減らそうとしているのではないか。
茶会が月に1回に減っても、本当にレイリアは平気そうだった。
「クラブ活動が忙しくて毎日あっという間です」と楽しそうに話す様子は、更に俺の心を抉った。
俺もレイリアと同じように、月1回の逢瀬でも平気ならば良かった。
会いたい思いは増すばかりなのに、茶会の度に、俺無しでも元気に楽しそうに過ごしているレイリアを見て、落胆し憤る。
意地で、茶会を増やしたいとも言い出せず、かと言って、茶会をいっそやめてしまうことも出来ず、俺の態度は益々硬化していった。
会いたくて会いたくて仕方なかったはずなのに、いざ会うと、本人を前にして無愛想な態度を取る。
会話はもちろん続かない。
途中からは、もう何を話せばいいのかもわからなくなり、いつからか、茶会でのレイリアは居心地悪そうに下を向くようになった。
騎士2年目に入り、俺は士官に昇格した。
1年目のあの無茶な呼び出しは全く無くなり、緊急の時でもなければ、毎週1日半は休みが取れる人並みの生活に戻った。
4月最初の休みの日、朝起きて、身支度を済ませて、朝食をとって、そして俺は呆けてしまった。
何をすればいいのか、わからない。
騎士団でのいつもの朝練のように鍛錬することを思いついて、庭で体づくりと剣の鍛錬をひと通り行った。
そして早めの昼食をとって、ひと息ついてこう思った。
1日ってこんなに長かったっけ。
まだまだ時間があるのに、何をすればいいのかわからない。
いくら頭を捻っても、やりたいことなど何も湧いてこなかった。
そうして、俺は認めざるを得なかった。
ただただ騎士団と家の往復をする日々が、俺から如何に、人間的な暮らしを奪っていたのかを。
そう思うのは俺だけではなかったようで、同じく2年目になった同期達も休み明け、「何して過ごせばいいのかわかんなかったよな」と口々に話していた。
そんな定期的な休日に慣れてきて、適度な休息とゆとりが、摩耗していた精神を引き上げてくれたようで、レイリアへの穿った見方は薄れていった。
騎士の仕事に明け暮れていたあの頃は、レイリアの言うように、毎週の茶会など無謀だった。
でも俺だって、レイリアに会えなくなることが不安で、ただ必死だったのだ。
俺の仕事を大事に思ってくれるのはありがたいが、俺の気持ちよりも仕事の方が優先されているようで気に食わない。
このままじゃいけない。
またここから、仕切り直して、レイリアと仲睦まじい関係を築いていきたい。
俺は新しい一歩を踏み出す覚悟で、4月の茶会のため、ディセンシア伯爵家へ向かった。
体を揺すられて、自分が寝てしまっていたことに気づいた。
しまった・・ここは・・そうだ、レイリアとの茶会だ・・
「アマンド様、白状してくださいませ。昨夜はお仕事だったのでしょう?」
「・・・いや」
昨日は王都を騒がせていた強盗団の大捕物があり、徹夜明けだった。
「では昨日は何時に寝たのです?」
いつもならすぐに取り繕えるはずなのに、寝起きの頭ですぐに反応できなかった。
「ほら、すぐに言えないではないですか。やはり寝ていないのでしょう?」
レイリアが、俺に詰め寄る。
「今からお屋敷に戻ってお休みください。折角のお休みが無駄になります」
決然とレイリアが言い切る。
無駄?無駄とはなんだ。俺は君と会うために今日まで頑張ってきてー
「やはり週に1回のお茶会は無茶です。月に1回に変えましょう」
は?月に・・1回!?
「レイリア、待ってくれ。月に1回なんて」
そんなこと、言わないで。
「いいえ、もうこれはアマンド様がどう言おうと・・もう決めました」
いやだ・・いやだ。これ以上、会えなくなるなんて耐えられない。
「なんでそんなこと言うんだ!俺は大丈夫だ!」
「大丈夫って・・今寝てしまうほどお疲れではないですか!」
「今は少し気を抜いただけだ!次からは気をつける」
「そういうことではなくて・・」
「月1回など・・レイリアはそれでもいいのか?」
「私?」
「レイリアは、それで平気なのか!?」
「私は平気です!・・平気でないのはアマンド様の方です。お仕事にも体にも差し障ります。早くお屋敷へ戻って休息を・・」
レイリアの声が、遠く感じる。
俺だけなのか?
毎日会いたいと願うのは、俺だけなのか?
毎日、何度も何度も、折に触れて君のことを頭に思い浮かべるのは、俺だけなのか?
こんなに恋い焦がれているのは・・
そうか、俺だけがー
レイリアは、俺がいなくても平気なのだ。
そう思ってしまったら、もうだめだった。
これまでのレイリアとのひと幕ひと幕が、黒く塗りつぶされていく。
デビュタントの時、俺がパートナーじゃなくても平気だと言ったあの言葉は、本心だったのか。
俺に遠慮して屋敷に来なくなったのではなくて、来る必要を感じなかったから来なくなったのか。
むしろ俺との茶会を煩わしく思っていて、それでこんなに必死に頻度を減らそうとしているのではないか。
茶会が月に1回に減っても、本当にレイリアは平気そうだった。
「クラブ活動が忙しくて毎日あっという間です」と楽しそうに話す様子は、更に俺の心を抉った。
俺もレイリアと同じように、月1回の逢瀬でも平気ならば良かった。
会いたい思いは増すばかりなのに、茶会の度に、俺無しでも元気に楽しそうに過ごしているレイリアを見て、落胆し憤る。
意地で、茶会を増やしたいとも言い出せず、かと言って、茶会をいっそやめてしまうことも出来ず、俺の態度は益々硬化していった。
会いたくて会いたくて仕方なかったはずなのに、いざ会うと、本人を前にして無愛想な態度を取る。
会話はもちろん続かない。
途中からは、もう何を話せばいいのかもわからなくなり、いつからか、茶会でのレイリアは居心地悪そうに下を向くようになった。
騎士2年目に入り、俺は士官に昇格した。
1年目のあの無茶な呼び出しは全く無くなり、緊急の時でもなければ、毎週1日半は休みが取れる人並みの生活に戻った。
4月最初の休みの日、朝起きて、身支度を済ませて、朝食をとって、そして俺は呆けてしまった。
何をすればいいのか、わからない。
騎士団でのいつもの朝練のように鍛錬することを思いついて、庭で体づくりと剣の鍛錬をひと通り行った。
そして早めの昼食をとって、ひと息ついてこう思った。
1日ってこんなに長かったっけ。
まだまだ時間があるのに、何をすればいいのかわからない。
いくら頭を捻っても、やりたいことなど何も湧いてこなかった。
そうして、俺は認めざるを得なかった。
ただただ騎士団と家の往復をする日々が、俺から如何に、人間的な暮らしを奪っていたのかを。
そう思うのは俺だけではなかったようで、同じく2年目になった同期達も休み明け、「何して過ごせばいいのかわかんなかったよな」と口々に話していた。
そんな定期的な休日に慣れてきて、適度な休息とゆとりが、摩耗していた精神を引き上げてくれたようで、レイリアへの穿った見方は薄れていった。
騎士の仕事に明け暮れていたあの頃は、レイリアの言うように、毎週の茶会など無謀だった。
でも俺だって、レイリアに会えなくなることが不安で、ただ必死だったのだ。
俺の仕事を大事に思ってくれるのはありがたいが、俺の気持ちよりも仕事の方が優先されているようで気に食わない。
このままじゃいけない。
またここから、仕切り直して、レイリアと仲睦まじい関係を築いていきたい。
俺は新しい一歩を踏み出す覚悟で、4月の茶会のため、ディセンシア伯爵家へ向かった。
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