大好きな彼の婚約者の座を譲るため、ワガママを言って嫌われようと思います。

airria

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キーラとのお出かけ①

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水曜日。

キーラは朝からキビキビと仕事に取り掛かり、何も言わなくても私の髪を綺麗に結い上げてくれる。

編み込みを頭にぐるっと回してカチューシャのようにするオールアップだ。

「お嬢様、今日は、朝のお稽古事が終わりましたら、キーラに時間をください。」

「いいわ。私も屋敷でゆっくりするつもりだし。私のことは気にしないで、楽しんできてね。」

仕事一筋のキーラが休みを申し出るなんて、珍しいこともあるものだ。

朝食のパンケーキをモグモグしていると、キーラがチッチッチと人差し指を立てて横に振る。

「私じゃありません。お嬢様の時間を私にください、という意味です。お稽古が終わったら、付き合っていただきますよ」

「え・・・どこに?」

「お楽しみです」

にっこり笑うキーラ。

「まぁ、いいけど」

「ではそのつもりで。あ、街に行くので、出かける前にはワンピースにお着替えくださいね。」

「はいはい」



その後、ピアノのレッスンが終わると、キーラに急かされながらお気に入りのピンクのワンピースに着替える。

ブラウンの編上げブーツに履き替えて、あれよあれよという間に馬車に乗りこんだ。

「11時前に出れましたね!」

馬車に揺られ、ニコニコするキーラは、メイド服からブルーグレーの大人っぽいワンピースに着替えている。

「時間が関係あるの?」

「いえ、たくさん見て回りたいので、とにかく早く行きたくて。お昼はその後、行きましょうね」



馬車は街の大通りを通り抜けていく。

着いた先は、街の中心部から少し外れた問屋街にある、煉瓦造りの大きな倉庫のような建物だった。

「ここです!」

キーラに連れられていくと、赤レンガの倉庫の入り口に営業中の札がかかっていた。

中に入ると、広い倉庫の中に、見回す限りの服、服、服ー

色の分別も何もなく、雑多に服が並べられている。

中にはカゴの中に山盛りに積まれている服もあるようだ。

「ここ、最近話題の古服屋なんですよ!」

嬉しそうにキーラが言う。

「古服?これは、売り物なの?」

「そうですよ。私たち平民は、気に入ってもぽんぽん服を買えないので、古服屋で探すことも多いんです。あ、このワンピースもここで買ったんですよ?」

「え!そのワンピースが?」

キーラが素敵に着こなしているそのワンピースが、まさかここのご出身だったとは!

「お嬢様はここでお買いになる必要はありませんが、ここ、好きなだけ試着できるんです。だから、ここで色々試着して、ご自分に似合う色や形を試したらどうかと思って。私はお嬢様にお洒落を知って頂きたいんです!」

つまり私はお洒落ではない、と。

私も自覚があるから、敢えて指摘はしないけれども。

「でも、人が着古した服なんて気持ち悪い、とかお思いでしたら次へ行きますが・・」

「そんなことないわ!楽しそう!」

キーラのワンピースの話を聞いてからは、尚更ワクワクしてしまい、むしろ前のめりだ。

「ですよね!お嬢様はそんな繊細なことは言わないだろうと思っていました!」

キーラはいつも、ひと言多い。




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