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帝国歴52年
海獣
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現代日本では普通の女子高生だった私、市綱エリカは、目覚めたらゲーム世界の蒸騎、主人公機ロボのAIへ転生していた。
さて帝都はその一部を海に接しており帝国一の港、それは商業だけでなく数隻の軍艦の停泊する軍港を持つ。
「高圧蒸気砲浜防風、全門開放準備!」
帝都を守る砲門兵長の合図で、機械を駆動する歯車と蒸気の音が消魂しく鳴り響く。
グレーニアは海水を吸い上げ、高温高圧になった蒸気をそのまま撃ち出す兵器。
大砲の主力である鉄球砲や火炎砲に比べれば若干威力は落ちるが船舶の甲板を容易に打ち抜く程の威力を持ち、沸騰したお湯をぶっ掛けるようなもので対生物には絶大な威力を誇る。
海水を撃ち出すため弾切れになる心配もなく(動力の魔石炭の補充は必要だが)、また火器系の武器を湿らせる事で、相手を無効化する副次効果もある。今回は火炎を吐く魔物はいないようなので意味がないが。
さてその魔物、港に近づいていた巨大な蛸は矢継ぎ早に打ち出される高圧の蒸気弾の前に、次々に茹で蛸になりその数を減らしていく。
しかし魔物か……これ多分人為的な発生なんだろうな。
魔物を倒せば魔石になり、これはゴーレムや帝国に出回っている魔石器具の動力源となる。現代日本でいうところの乾電池のような代物だ。
そして普通の野生動物が何らかの魔力を浴びて魔物になったという説は古くから言われていたが、帝国で実験した者はいない、というか出来ない。
まず禁忌として宗教的に禁じられており、また法律的にも危険が多すぎるからと実験しようとするだけで処罰される程だ。
ゆえに今回もし作為的な魔物の発生だとするなら、それは海向こうの諸国、あるいは帝国の法律破りも厭わない国内の反勢力である可能性が高い。という事で旧共和国の嫌疑がまた一つ増えた。
そうして巨大蛸が帝国側の攻撃でその数を次々減らして数える程になった頃、それがやって来た。
このゲーム開始当初にも登場する、チュートリアルとも言える最初の敵、巨大亀べヘイモス。
ただ、あんなに大きかったかなあと思うしゲーム開始時より登場が早い。
おまけに表皮を硬い殻に覆われて、グレーニアの攻撃が効いている様子はない。
なら俺たちの出番だな、とばかりに複数体の蒸騎が出撃する。
足の下にはサーフボードの様な板を着用、海上を滑るように進んでいく。
ゲームでも見た後継だが、実物を目にすると数段カッコ良く心が躍る。
ところが、蒸騎が手にした剣や銃器はべへイモスに効き目がなく、取り囲んだ数機の蒸騎は、その場で回転したべヘイモスにまとめて薙ぎ倒される。
前言撤回、正直やられに来たモブかよ蒸騎カッコ悪い。
ーーいや待て。
そもそもゲーム内でコレどうやって倒してたっけ?確かまだ主人公トールが蒸騎貰う前だった筈だが。
逆によく倒せたなべヘイモス。
ひょっとしてゲームより強くなってたり、だったら無理ゲーじゃね?
などと思っていると。
「イァッハァ!
海の荒事ならアタシに任せなァ」
と言うハイテンションな声と共に会場から現れた数隻の海賊船。
通常の軍艦より大きなサイズだが、それでも全部の大きさを合わせてちょうどべヘイモスと同じくらい。
如何にこの海の魔物が大きいかという事である。
「あれは海賊伯のグレートマリーズ艦隊!」
兵士の一人がそんな声をあげる。
ああ、あれが選帝侯の一人の。
そして女性伯爵である事からか船の側面にピンクのハートが描かれていたりとどこか可愛いイメージを醸し出していた。
「拘束網、一斉に放てッ!」
おそらくは海賊伯と思われる女性の掛け声で、船から網が投擲される。
それはべヘイモスの体に絡みついて動きを封じ、攻撃も逃亡も許さない。
さすがは海賊伯、海の戦いに長けている。そして更にダメ押しで。
「トール、ジーン、撃って出るから支度しな」
と二人の若者にハッパをかける。
ええとトールは主人公で、確かジーンは選帝侯ジュニアで海賊伯の息子。
お、と言う事はもしかして三人乗りの蒸騎で出撃かな?
とカマをかけて私は軍港から、先程のべヘイモスの攻撃で海に飛び散った蒸騎経由で海賊船に介入を試みる。
果たして、そこには蒼い輝きを放つ人型蒸騎があり、私はその機体制御の魔石部分に「介入」する。
「蒸気及び駆動系全安定!」
と制御担当のトールが告げる。
「騎士系武装準備完了、いつでもいけるぜ、おふくろ!」
海賊伯の息子のジーンが同じく宣言する。
「よっしゃ行くぜェ!
蒸騎ヤシロマル、射手!!」
海賊伯がそう言い、海賊船の船首からべヘイモスに向けて一体の蒸騎が発射されたのだった。
三人乗り
ヤシロマル
ブロック・エイトリ兄弟
ビーム
さて帝都はその一部を海に接しており帝国一の港、それは商業だけでなく数隻の軍艦の停泊する軍港を持つ。
「高圧蒸気砲浜防風、全門開放準備!」
帝都を守る砲門兵長の合図で、機械を駆動する歯車と蒸気の音が消魂しく鳴り響く。
グレーニアは海水を吸い上げ、高温高圧になった蒸気をそのまま撃ち出す兵器。
大砲の主力である鉄球砲や火炎砲に比べれば若干威力は落ちるが船舶の甲板を容易に打ち抜く程の威力を持ち、沸騰したお湯をぶっ掛けるようなもので対生物には絶大な威力を誇る。
海水を撃ち出すため弾切れになる心配もなく(動力の魔石炭の補充は必要だが)、また火器系の武器を湿らせる事で、相手を無効化する副次効果もある。今回は火炎を吐く魔物はいないようなので意味がないが。
さてその魔物、港に近づいていた巨大な蛸は矢継ぎ早に打ち出される高圧の蒸気弾の前に、次々に茹で蛸になりその数を減らしていく。
しかし魔物か……これ多分人為的な発生なんだろうな。
魔物を倒せば魔石になり、これはゴーレムや帝国に出回っている魔石器具の動力源となる。現代日本でいうところの乾電池のような代物だ。
そして普通の野生動物が何らかの魔力を浴びて魔物になったという説は古くから言われていたが、帝国で実験した者はいない、というか出来ない。
まず禁忌として宗教的に禁じられており、また法律的にも危険が多すぎるからと実験しようとするだけで処罰される程だ。
ゆえに今回もし作為的な魔物の発生だとするなら、それは海向こうの諸国、あるいは帝国の法律破りも厭わない国内の反勢力である可能性が高い。という事で旧共和国の嫌疑がまた一つ増えた。
そうして巨大蛸が帝国側の攻撃でその数を次々減らして数える程になった頃、それがやって来た。
このゲーム開始当初にも登場する、チュートリアルとも言える最初の敵、巨大亀べヘイモス。
ただ、あんなに大きかったかなあと思うしゲーム開始時より登場が早い。
おまけに表皮を硬い殻に覆われて、グレーニアの攻撃が効いている様子はない。
なら俺たちの出番だな、とばかりに複数体の蒸騎が出撃する。
足の下にはサーフボードの様な板を着用、海上を滑るように進んでいく。
ゲームでも見た後継だが、実物を目にすると数段カッコ良く心が躍る。
ところが、蒸騎が手にした剣や銃器はべへイモスに効き目がなく、取り囲んだ数機の蒸騎は、その場で回転したべヘイモスにまとめて薙ぎ倒される。
前言撤回、正直やられに来たモブかよ蒸騎カッコ悪い。
ーーいや待て。
そもそもゲーム内でコレどうやって倒してたっけ?確かまだ主人公トールが蒸騎貰う前だった筈だが。
逆によく倒せたなべヘイモス。
ひょっとしてゲームより強くなってたり、だったら無理ゲーじゃね?
などと思っていると。
「イァッハァ!
海の荒事ならアタシに任せなァ」
と言うハイテンションな声と共に会場から現れた数隻の海賊船。
通常の軍艦より大きなサイズだが、それでも全部の大きさを合わせてちょうどべヘイモスと同じくらい。
如何にこの海の魔物が大きいかという事である。
「あれは海賊伯のグレートマリーズ艦隊!」
兵士の一人がそんな声をあげる。
ああ、あれが選帝侯の一人の。
そして女性伯爵である事からか船の側面にピンクのハートが描かれていたりとどこか可愛いイメージを醸し出していた。
「拘束網、一斉に放てッ!」
おそらくは海賊伯と思われる女性の掛け声で、船から網が投擲される。
それはべヘイモスの体に絡みついて動きを封じ、攻撃も逃亡も許さない。
さすがは海賊伯、海の戦いに長けている。そして更にダメ押しで。
「トール、ジーン、撃って出るから支度しな」
と二人の若者にハッパをかける。
ええとトールは主人公で、確かジーンは選帝侯ジュニアで海賊伯の息子。
お、と言う事はもしかして三人乗りの蒸騎で出撃かな?
とカマをかけて私は軍港から、先程のべヘイモスの攻撃で海に飛び散った蒸騎経由で海賊船に介入を試みる。
果たして、そこには蒼い輝きを放つ人型蒸騎があり、私はその機体制御の魔石部分に「介入」する。
「蒸気及び駆動系全安定!」
と制御担当のトールが告げる。
「騎士系武装準備完了、いつでもいけるぜ、おふくろ!」
海賊伯の息子のジーンが同じく宣言する。
「よっしゃ行くぜェ!
蒸騎ヤシロマル、射手!!」
海賊伯がそう言い、海賊船の船首からべヘイモスに向けて一体の蒸騎が発射されたのだった。
三人乗り
ヤシロマル
ブロック・エイトリ兄弟
ビーム
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