5 / 8
05 これで良い
しおりを挟む
「その……言いづらいけど、私たちの婚約は、破棄されることになると思うの。私は正直、彼女をあまり良く思ってなくて……周囲に誤解されることも多くて」
そうなの。ヒロインの彼女に嫌がらせをしようなんて、全く思って居ないんだけど、結果的になんだかそんな風になってしまうのよ……不思議なことに……本当に不思議だけど。
「それは! ティルダ様がご不快になられるお気持ちは、誰しも理解出来ます。将来結婚する婚約者に横恋慕されるのです。苛立つ気持ちは、結婚する相手を好ましく思えばこそ……それも、ティルダ様を二人の幸せのために利用されてしまうなど……絶対に許されることではありません」
ゴートンは優しく誠実で、騎士らしい騎士のようだ。
婚約者アーサーは、本当に驚くほど美形だけど、私に優しくないという時点で恋愛対象にはならなかった。
目の前に居るゴートンは好ましいけど……でも。
「ありがとう。ゴートン様。けれど、良いのよ。二人が幸せであれば良いと思うわ」
これは、本当にそう思って居る。けれど、それは絶対に通じない。
そんな理不尽な世界で三年も過ごして居た私には、言葉を意味通り聞いてくれるというだけで十分だし、無関係の人とは言え、ゴートンがこうして言ってくれることが、すごく有り難かった。
「いけません……陛下に伝えます。ティルダ様の現状と、そして、僕の気持ちを」
ゴートンの気持ち……? こちらを見る彼の目は、熱っぽくて甘い。もしかして、私に好意を感じてくれているという意味かしら?
悪役令嬢ティルダの容姿は乙女ゲームのメインキャラらしく、美しく文句の付けようがない。
気が強く見られそうな猫っぽいつり目だって、鏡を見た私はとても可愛いと思ってる。
ティルダがこういう気の強そうな外見とは裏腹な健気なことを言い出したのなら、そんなギャップを魅力に思ったゴートンだって恋に落ちても仕方ないのかもしれない。
ゴートンは私と結ばれたいと、そう思ってくれた?
「……そうなったら。良いのに」
心で思っていた言葉が思わずするりと口からこぼれて、私は口を押さえた……いけない。私は今アーサーという婚約者も居るのに……彼だって同じことをしているからって、あまり、良くないわよね。
ゲーム進行への強制力は、本当に強すぎて、何度も何度も逆らおうとしても何をしても無駄だった。
だから……ゴートンが陛下に言ってくれても、きっと……。
「え?」
「ごめんなさい。私は大丈夫です……関われば、ゴートン様が罰せられてしまうかもしれないから、それはしないで。お願いします。私と関わると、あまり……良くないかもしれないから……」
これは、そうだと言い切れる。なんとなくふわっとした危機感でもなく、はっきりとした確たる理由があるから。
ゲーム進行強制力が激しすぎる世界で、悪役令嬢の私と一緒に居て良いことが起こるかっていうと、とても難しいと思う。
「私と居ると不幸になるから、近付かない方が良いよ」なんて、本当は近付いて来て欲しい構ってちゃんな女子が強がり言う時以外使い道あるのかなって思ったけど、これは本気なの。
ゲーム世界で、強制力に勝てる存在なんて、何処にも居る訳がないんだから。
とりあえず、私の行く先は牢屋か国外か。そんな時に、将来有望な美形騎士様を、道連れにするなんて出来ない。
「ティルダ様……」
ゴートンは悲しそうで言葉もない様子だったけど、その時に取り巻きたちの声が聞こえ彼女たちが私を探しに来たのが見えたので、丁寧に彼に挨拶をしてここを立ち去ることにした。
これで良い。
ゲーム強制力の強さは私が一番良く知っているし、何の罪もないゴートンまで巻き込むなんて出来るはずもない。
そうなの。ヒロインの彼女に嫌がらせをしようなんて、全く思って居ないんだけど、結果的になんだかそんな風になってしまうのよ……不思議なことに……本当に不思議だけど。
「それは! ティルダ様がご不快になられるお気持ちは、誰しも理解出来ます。将来結婚する婚約者に横恋慕されるのです。苛立つ気持ちは、結婚する相手を好ましく思えばこそ……それも、ティルダ様を二人の幸せのために利用されてしまうなど……絶対に許されることではありません」
ゴートンは優しく誠実で、騎士らしい騎士のようだ。
婚約者アーサーは、本当に驚くほど美形だけど、私に優しくないという時点で恋愛対象にはならなかった。
目の前に居るゴートンは好ましいけど……でも。
「ありがとう。ゴートン様。けれど、良いのよ。二人が幸せであれば良いと思うわ」
これは、本当にそう思って居る。けれど、それは絶対に通じない。
そんな理不尽な世界で三年も過ごして居た私には、言葉を意味通り聞いてくれるというだけで十分だし、無関係の人とは言え、ゴートンがこうして言ってくれることが、すごく有り難かった。
「いけません……陛下に伝えます。ティルダ様の現状と、そして、僕の気持ちを」
ゴートンの気持ち……? こちらを見る彼の目は、熱っぽくて甘い。もしかして、私に好意を感じてくれているという意味かしら?
悪役令嬢ティルダの容姿は乙女ゲームのメインキャラらしく、美しく文句の付けようがない。
気が強く見られそうな猫っぽいつり目だって、鏡を見た私はとても可愛いと思ってる。
ティルダがこういう気の強そうな外見とは裏腹な健気なことを言い出したのなら、そんなギャップを魅力に思ったゴートンだって恋に落ちても仕方ないのかもしれない。
ゴートンは私と結ばれたいと、そう思ってくれた?
「……そうなったら。良いのに」
心で思っていた言葉が思わずするりと口からこぼれて、私は口を押さえた……いけない。私は今アーサーという婚約者も居るのに……彼だって同じことをしているからって、あまり、良くないわよね。
ゲーム進行への強制力は、本当に強すぎて、何度も何度も逆らおうとしても何をしても無駄だった。
だから……ゴートンが陛下に言ってくれても、きっと……。
「え?」
「ごめんなさい。私は大丈夫です……関われば、ゴートン様が罰せられてしまうかもしれないから、それはしないで。お願いします。私と関わると、あまり……良くないかもしれないから……」
これは、そうだと言い切れる。なんとなくふわっとした危機感でもなく、はっきりとした確たる理由があるから。
ゲーム進行強制力が激しすぎる世界で、悪役令嬢の私と一緒に居て良いことが起こるかっていうと、とても難しいと思う。
「私と居ると不幸になるから、近付かない方が良いよ」なんて、本当は近付いて来て欲しい構ってちゃんな女子が強がり言う時以外使い道あるのかなって思ったけど、これは本気なの。
ゲーム世界で、強制力に勝てる存在なんて、何処にも居る訳がないんだから。
とりあえず、私の行く先は牢屋か国外か。そんな時に、将来有望な美形騎士様を、道連れにするなんて出来ない。
「ティルダ様……」
ゴートンは悲しそうで言葉もない様子だったけど、その時に取り巻きたちの声が聞こえ彼女たちが私を探しに来たのが見えたので、丁寧に彼に挨拶をしてここを立ち去ることにした。
これで良い。
ゲーム強制力の強さは私が一番良く知っているし、何の罪もないゴートンまで巻き込むなんて出来るはずもない。
応援ありがとうございます!
282
お気に入りに追加
344
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる