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02 ゲーム強制力

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 取り巻き令嬢たちは、まだここでは気が付かず追って来ない。私が本来と違う行動を取ると、ゲーム進行上、どうしてもタイムラグが生じてしまうようなのだ。

 いつもあんな風に強制的にゲームは進行されてしまい、私の意志などは全く周囲には通じない。虐めてもいないし虐めようとしていないのに、あんな風に虐めたことになる、もうどうしようもない。

 だからと言って、トリエステ公爵令嬢ティルダが悪役令嬢の役目を放棄されることも許されない。お金を貯めて旅に出ようとすると、どんなに周到に準備しようが、絶対に誰かに見つかってしまうし、幾度も試みた脱走は成功しない。

 ええ……詰んだ。いわゆる、これが詰みゲー。何をどうしても、私にはバッドエンドしか待っていない。

 このまま悪役令嬢として、断罪されてしまうことは避けられない。

 生まれ変わったこの乙女ゲーム世界に関して、プレイしたことは確かだけど、あまり好きだった記憶はない。

 ゲーム攻略はすんなりで簡単だったし、全員ヒーロー一周して次のゲームに移った気がする……つまり、何が言いたいかというと、メインヒーローの婚約者、悪役令嬢ティルダ・トリエステの断罪後がどうだったか覚えていない。

 牢屋に入るか、娼館に売られるか、国外追放なのか……それすらも、わからない。

 つまり、断罪後の備えも出来なくて、私は今究極の詰みゲーを経験しているということになる。

 嫌だ……私だって、恋したいし、なんなら、素敵なヒーローと結婚したいよー!

 ひと気のないバルコニーに出た私は、やたらと綺麗に見える空に浮かぶ月に、なんとなく感傷的になっていた。

 ……何なの。乙女ゲーム転生って、もっとやるべき事が明確にあって、それに向かって努力するとかあったはずなのに……私には何も見つからない。詰んでいる。転生した意味ある?

「私だって……恋したいー!!」

 涙目になった私は大きな声を出して、月に向かって吠えた。遠吠えする狼の気持ちがわかる。なんだか、鬱屈した気持ちが晴れてスッキリする。

 別に誰かにこれを、聞かれていたって構わない。

 どうせ、悪役令嬢っぽい解釈されて、私の意志とは関係なく、乙女ゲームに都合の良い発言に置き換えられる。

 わかってます。私はいずれ断罪される悪役令嬢。はーっと大きくため息をついた。

「……あの」

 私は階下から聞こえた、躊躇いがちの言葉に驚いた……あら。この人知っている。
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