泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子

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01 落ちてきた

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ーーーーーパシャン!!

 ふわふわもこもこの濃密泡風呂を楽しんでいたら、いきなり顔に水飛沫が当たって私は呆然とした。

「えっ! まじでびっくりした」

 それはこっちの台詞などと言う言葉は、咄嗟には出て来なかった。

 皆、知ってる? 人って驚いた時には一旦思考と動作が一時停止(フリーズ)してしまうものらしい。

 思いもしなかった危機に直面して、余計な動きをしないため? その辺は私も詳しくないから、わからない!

 そうそう。私がなぜ一人で泡風呂を楽しんでいるかという状況をまず、説明しよう!

 社会人で働き始めて、今年で三年目の夏。

 天涯孤独の身で少しでも稼ぎの良い仕事に就職するために上京して来た私に東京という、大都会は冷たい。田舎者のために空気もなかなか読めない。

 スマートなエリートが集う職場にもあまり馴染めず、それでも生きていくためには仕方ないと割り切ってこれまで必死に働いて来た。

 だけど、何かを頑張ったのなら、ご褒美が欲しい。それは、自分から自分にでも良いと思う。この世の全ての存在が、伴侶が出来ると思ったら大間違いである。

 年に二回のボーナス時には、私の憧れの高級ホテルは『おひとり様プラン』なるものを売り出している。

 今の時代には、若年層で独身主義の人はとても多い。こういった独り者用にと、向こうも手を変え品を変え色々と考えている訳だ。本当にありがとうございます。

 そして、私は半年に一度、恒例行事として一人で高級ホテルで過ごすということを何回か続けてきた。なかなか旅行には行きづらいけど、たとえ一晩でも非日常の中にいると、割と切り替えられると言うものである。

 そして、こういった高級ホテルにはお決まりのようにジャグジーがあり、泡風呂も楽しめる。

 だから、私は一人で泡風呂を贅沢に楽しんでいた……はずだ。

「ななななななななな……ななな」

 別に「な」しか発音出来ない訳でなく、人は驚き過ぎてしまうとこんな風になってしまうらしい。

 いきなり空中から現れた若い男性は、黒い指なし手袋をした手をばっと私の顔の前に出して、慌てたようにして言った。

「わかった。そっちも驚いたのは、わかった!! 俺! 異世界から来たから! 今ここで、騒がれるとそっちも絶対困るから!! どうか、落ち着いてくれ」

 異世界?

 私はここで身体の大きな彼の、泡からはみ出た部分をまじまじと見た。

 確かにファンタジーものに良くあるような、軽装の皮の鎧に背中には剣? コスプレ……では、ないか。

 お兄さんの髪も目も、自然な薄紫。どう考えても、この世界の人ではなさそう。

 というか、彼が空中からいきなり現れ出たのは、私がこの目で目撃している訳だし……そうよ。まるでテレポートしたかのように、彼は現れた。

「いっ……いせかい?」
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