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72 贈り物②
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「……そうですよね。だから、そういう意味で、オフィーリアが一番の功労者ですね」
……あ。そうだった! ジョサイアにも、私が彼女にとてもお世話になっていることを、伝えなければ。
「ねえ。ジョサイア。私が売りだそうとしている精油なんだけど、サンプルをお送りした時にオフィーリア様が出してくれた案で、お店でお客様に香油を混ぜてもらうことにしたの……そうしたら、お客様それぞれで、自分の好きな香りになるでしょう?」
果実の花から作られる精油は、そのまま使うと香りが強すぎる。私は何種類か作ってそれを売り出す予定だったんだけど、彼女からの提案で、定番品の他にもオーダーメイド出来るならもっと良いと提案された。
だから、お客様ご本人の好みで他の香油と混ぜて化粧水にしてもらったりと、独自のレシピで売り出すことにしたのだ。
「ああ……それは良い案だね。レニエラの事業も、彼女のおかげで上手く行きそうだし……オフィーリアに、何か特別にお礼でもしようか」
思案している様子で言ったジョサイアに船団を持つ豪商の恋人の居る彼女には、これが一番良いだろうと提案した。
「そうですね……それでは、船でも差し上げます?」
「良いね。大型帆船に、リボンでも付けようか」
また、私を甘やかして! と、怒りそうなオフィーリア様が、容易に想像出来て、私たち二人は同時に微笑み合った。
「……オフィーリア様はもうすぐ外国に出てしまうそうなので、何かお礼をするのなら、早めに差し上げなくては」
私が思うところ、オフィーリア様は彼女を想って贈り物をすれば、きっと喜んでくれる女性だ。彼女ははっきりした性格だけれど、はっきりしない元婚約者のジョサイアに対し、あれだけのことをしてくれた優しい人だから。
「ああ……何が良いかな。君が選んだ方が、喜ぶだろう。何でも好きに買ってくれ」
ジョサイアは本当に、自分の持つお金に対し頓着がないようだ。
それは別に無限にお金の成る木を森ほどに保有しているようなモーベット侯爵家の財力のせいでも、なんでもなくて、仕事熱心で真面目だから、使う方法を知らないらしい。
私はそんな夫と、今の話題にぴったりな解決方法を思いつき提案した。
「ねえ。ジョサイア。私たちがたくさん贈り物を持って、彼女の引っ越し先に黙って遊びに行くというのはどうですか? ……道中で、彼女の好きそうなお土産を買うのも良いですし……きっと、喜んでくれるはずです!」
異国の地で住むのだから、旧知の仲の顔は格別な贈り物になるはずだと私が言えば、ジョサイアは驚きつつも笑ってくれた。
「オフィーリアはそういう驚かせ方を、自分がよく人にするから、きっと喜んでくれるはずだ」
「手紙を書くと言ったら、住所も教えてもらっているんです。そうしましょう? ……ジョサイアだって、これまで本当に大変で働き詰めだったんだから、長いお休みも取っても良いでしょう?」
とは言え、それはオフィーリア様の優柔不断な婚約者に対する、ほんの仕返しだと知って、本当に強い女性とはかくもあらんと私は思った。
「良いね……僕の休みは溜まっているよ。新婚旅行と言えば、アルベルトだって許してくれるだろう」
宰相補佐で王の側近だけど、過重労働過ぎるわ。人はお休みを取らないと、死んでしまう。
「今日は陛下が温泉のある例の離宮に行った話をするから、その時にお休みについて話を詰めましょう?」
「策士だね。レニエラ。それを先に話されると、休みを取りたいと言えば断れないだろうね」
ジョサイアは苦笑したので、私もそれに頷いた。
そして、登城するために私は彼の腕を取って、表で待つ馬車へと歩き出した。
「楽しみね。私たちの船を借り切っても良いわね」
「……それこそ、船を買っても良いよ。使った後は、どこかの商会に使わせれば良い」
その時の私の頭の中では、視界いっぱいに青い空と青い海の広がる水平線が見えた。
前に旅をした時とは、まったく違う喜びを味わえそう!
「楽しみね……! きっと、楽しい旅になるわ」
「そうだね。君がいれば、僕はそれだけで、いつでも楽しいけどね」
微笑んだジョサイアは、さらりとなにげなくそう言ったので私は彼がお世辞でもなく嘘偽りのない気持ちを伝えてくれる良い夫と結婚出来たことを、神様と他ならないオフィーリア様に深く感謝した。
Fin
※次話から他視点です。
……あ。そうだった! ジョサイアにも、私が彼女にとてもお世話になっていることを、伝えなければ。
「ねえ。ジョサイア。私が売りだそうとしている精油なんだけど、サンプルをお送りした時にオフィーリア様が出してくれた案で、お店でお客様に香油を混ぜてもらうことにしたの……そうしたら、お客様それぞれで、自分の好きな香りになるでしょう?」
果実の花から作られる精油は、そのまま使うと香りが強すぎる。私は何種類か作ってそれを売り出す予定だったんだけど、彼女からの提案で、定番品の他にもオーダーメイド出来るならもっと良いと提案された。
だから、お客様ご本人の好みで他の香油と混ぜて化粧水にしてもらったりと、独自のレシピで売り出すことにしたのだ。
「ああ……それは良い案だね。レニエラの事業も、彼女のおかげで上手く行きそうだし……オフィーリアに、何か特別にお礼でもしようか」
思案している様子で言ったジョサイアに船団を持つ豪商の恋人の居る彼女には、これが一番良いだろうと提案した。
「そうですね……それでは、船でも差し上げます?」
「良いね。大型帆船に、リボンでも付けようか」
また、私を甘やかして! と、怒りそうなオフィーリア様が、容易に想像出来て、私たち二人は同時に微笑み合った。
「……オフィーリア様はもうすぐ外国に出てしまうそうなので、何かお礼をするのなら、早めに差し上げなくては」
私が思うところ、オフィーリア様は彼女を想って贈り物をすれば、きっと喜んでくれる女性だ。彼女ははっきりした性格だけれど、はっきりしない元婚約者のジョサイアに対し、あれだけのことをしてくれた優しい人だから。
「ああ……何が良いかな。君が選んだ方が、喜ぶだろう。何でも好きに買ってくれ」
ジョサイアは本当に、自分の持つお金に対し頓着がないようだ。
それは別に無限にお金の成る木を森ほどに保有しているようなモーベット侯爵家の財力のせいでも、なんでもなくて、仕事熱心で真面目だから、使う方法を知らないらしい。
私はそんな夫と、今の話題にぴったりな解決方法を思いつき提案した。
「ねえ。ジョサイア。私たちがたくさん贈り物を持って、彼女の引っ越し先に黙って遊びに行くというのはどうですか? ……道中で、彼女の好きそうなお土産を買うのも良いですし……きっと、喜んでくれるはずです!」
異国の地で住むのだから、旧知の仲の顔は格別な贈り物になるはずだと私が言えば、ジョサイアは驚きつつも笑ってくれた。
「オフィーリアはそういう驚かせ方を、自分がよく人にするから、きっと喜んでくれるはずだ」
「手紙を書くと言ったら、住所も教えてもらっているんです。そうしましょう? ……ジョサイアだって、これまで本当に大変で働き詰めだったんだから、長いお休みも取っても良いでしょう?」
とは言え、それはオフィーリア様の優柔不断な婚約者に対する、ほんの仕返しだと知って、本当に強い女性とはかくもあらんと私は思った。
「良いね……僕の休みは溜まっているよ。新婚旅行と言えば、アルベルトだって許してくれるだろう」
宰相補佐で王の側近だけど、過重労働過ぎるわ。人はお休みを取らないと、死んでしまう。
「今日は陛下が温泉のある例の離宮に行った話をするから、その時にお休みについて話を詰めましょう?」
「策士だね。レニエラ。それを先に話されると、休みを取りたいと言えば断れないだろうね」
ジョサイアは苦笑したので、私もそれに頷いた。
そして、登城するために私は彼の腕を取って、表で待つ馬車へと歩き出した。
「楽しみね。私たちの船を借り切っても良いわね」
「……それこそ、船を買っても良いよ。使った後は、どこかの商会に使わせれば良い」
その時の私の頭の中では、視界いっぱいに青い空と青い海の広がる水平線が見えた。
前に旅をした時とは、まったく違う喜びを味わえそう!
「楽しみね……! きっと、楽しい旅になるわ」
「そうだね。君がいれば、僕はそれだけで、いつでも楽しいけどね」
微笑んだジョサイアは、さらりとなにげなくそう言ったので私は彼がお世辞でもなく嘘偽りのない気持ちを伝えてくれる良い夫と結婚出来たことを、神様と他ならないオフィーリア様に深く感謝した。
Fin
※次話から他視点です。
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