【中間選考残作品】医大生が聖女として異世界に召喚されましたが、魔力はからっきしなので現代医術の力で治癒魔法を偽装します!【3章終】

みやこ。@他コン2作通過

文字の大きさ
11 / 43
異世界転移編

魔法のアプリ②

しおりを挟む


 何時迄も現実から目を逸らす訳にはいかないと、小夜は再びスマートフォンに向き直る。


「⋯⋯注文?」

 小夜はホーム画面に堂々と鎮座するアイコン——白い背景に青い鳥が描かれ今にも飛び立とうとしている躍動感あふれるそれをタップした。

 ローディング後、画面一杯にデカデカと表示される『アナタの異世界生活をちょっとだけ豊かに! 安心安全、即時配達のアオイトリ』の文字。如何にも胡散臭い。

 第一印象は初心者が趣味で作ったと思しき安っぽいアプリケーションだった。
 しかし、その印象は間も無く覆される事になる。


「な、何なのよ⋯⋯此れは——」

 小夜は思わずそう呟いた。
 その視線の先にはシンプルながらも利便性に特化した通販仕様の画面。医薬品と医療機器にカテゴライズされたそれに恐る恐る触れてみる。

 試しに『医薬品』のタブをクリックすると、ご丁寧にも五十音順に並べられていた。その上には検索ボックスも完備され、随分と親切設計のようだ。

「アカルボース⋯⋯ αグルコシダーゼ阻害薬のことよね?」

 一番上、小夜が聴き馴染みのある薬品名のリンクをクリックすると、写真と共に薬品の解説が表示された。

「食後の血糖上昇を抑制。主に糖尿病患者に処方される⋯⋯やっぱり、私が知っているものだわ」

 商品説明の下には数量選択のキーと『注文』のボタンがあった。如何やら此処からオーダー出来るらしい。


「あの男の言っていた私が使える魔法って此れのこと⋯⋯?」

 一番下までスクロールして行くと、気になる文言を見つけた。

『注意! 1日に何度も多用すると配達員が疲れてしまいます。その時は労ってあげてね♪』

 あの男の言葉だろうか。小夜の脳内では人を小馬鹿にしたような甘ったるい男の声で再生され、先ほど収まった怒りがぶり返しそうになる。

(落ち着け⋯⋯落ち着くのよ、黒宮小夜!)

 怒りとは存外、エネルギーを使うものである。
 それに、異世界に一人残された小夜に既にこの場に居ないあの男の事を何時迄も考えている余裕など無い。
 時間の無駄でもあり、あの男に関する事で限りある海馬の容量を埋め尽くされるのは非常に、それはもう筆舌に尽くし難いほどにシャクである。
 ましてや、大脳皮質に奴の情報が送られ記憶に焼き付くなど以っての外だ。

「⋯⋯⋯⋯」

 フッと諦観の笑みを浮かべた小夜はそっとスマートフォンの電源を落とした。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

花嫁召喚 〜異世界で始まる一妻多夫の婚活記〜

文月・F・アキオ
恋愛
婚活に行き詰まっていた桜井美琴(23)は、ある日突然異世界へ召喚される。そこは女性が複数の夫を迎える“一妻多夫制”の国。 花嫁として召喚された美琴は、生きるために結婚しなければならなかった。 堅実な兵士、まとめ上手な書記官、温和な医師、おしゃべりな商人、寡黙な狩人、心優しい吟遊詩人、几帳面な官僚――多彩な男性たちとの出会いが、美琴の未来を大きく動かしていく。 帰れない現実と新たな絆の狭間で、彼女が選ぶ道とは? 異世界婚活ファンタジー、開幕。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

残念女子高生、実は伝説の白猫族でした。

具なっしー
恋愛
高校2年生!葉山空が一妻多夫制の男女比が20:1の世界に召喚される話。そしてなんやかんやあって自分が伝説の存在だったことが判明して…て!そんなことしるかぁ!残念女子高生がイケメンに甘やかされながらマイペースにだらだら生きてついでに世界を救っちゃう話。シリアス嫌いです。 ※表紙はAI画像です

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

処理中です...