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「銀河宮殿」での夕食

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 「タカさーん、まだですかー!」
 
 亜紀ちゃんが風呂場に呼びに来た。
 フィリピンから戻ってすぐにシャワーを浴びた。
 御堂と会うからだ。

 「すぐだ! もう身体を拭く!」
 「手伝いますよー!」
 「いいよ!」

 俺は急いで脱衣所に用意しておいたスーツを着る。
 
 「あー、ペンハリガンのいい匂いー!」
 「おい、行くぞ! タクシーは来てるな?」
 「はい!」

 玄関で柳が待っている。
 ロボがまだいた。

 「おい、早乙女はどうした!」
 「あれ? おかしいですね?」
 「もう出るんだぞ!」

 早乙女が迎えに来てロボを預かってくれる手はずになっている。

 「いしがみー!」
 
 来た。

 「遅ぇ!」
 「悪い。久留守が俺から離れなくなっちゃって。きっと石神に会いたかったんだな」
 「久留守、おーす!」

 俺は久留守に挨拶し、急いでロボを預けた。
 久留守が俺に手を伸ばすので、握ってブンブンしてやると喜んだ。

 「じゃあ、ロボを頼むな!」
 「ああ、任せてくれ」
 「ロボ、たくさん喰わせてもらえよ!」
 「ニャ!」

 早乙女が笑っていた。
 俺たちは急いでタクシーに乗り込んだ。
 アルファードのプレミアム・タクシーをチャーターしている。

 「「銀河宮殿」、久し振りですね!」
 「そうだな。俺は先月も行ったけどな」
 「ずるいですよー!」
 「御堂と一緒にな!」
 「そこはどうでもいいですけど」
 「なんだとぉー!」

 前のシートに座った柳が笑っている。

 「まあ、高貴も双子もいないからな。今日はチャンスだしなぁ」
 「何のチャンスですか?」
 「お前らが大食いで毎回とんでもねぇ料金を払ってるだろう!」
 「ワハハハハハハハ!」
 「半分以下になったんだ。喜ばしいことだぜ」
 「私たち、頑張りますよ?」
 「だから頑張るんじゃねぇよ!」

 柳が笑い、運転手も笑っていた。

 「シャンとアハルも久しぶりだなー」
 「二人とも大人気ですよね?」

 柳が振り返って言った。

 「ああ、今でもしょっちゅう取材とか入るしな。それに、あいつらSNSとかツイッターを始めたらしいぞ」
 「そうなんですか!」
 
 柳がすぐに検索した。

 「ありました! スゴイ人気じゃないですか!」
 「そうらしいな」
 
 柳が亜紀ちゃんにも見せている。

 「まったく、皇紀たちのせいで遅れそうになったぜ」
 「あれはびっくりしましたよねー」
 「ああ、水晶の何かですね?」

 柳にも話し、亜紀ちゃんが画像も見せていた。

 「タカさん、あれってどうなったんですか?」
 「しらねー」
 「えー! 絶対ウソですよね!」
 「別にいいじゃんか」

 「でも、本当にああいうことがあるなんて驚きました」
 「まあ、俺もな。魔法大学自体も知らなかったけどよ。道間家って世界中のああいう組織と繋がってたんだな」
 
 新宿なので、すぐに着いた。
 
 「ではまたお帰りの際にお迎えに参ります」

 タクシーの運転手が挨拶して去って行った。

 「よし、じゃあ行くかぁ!」
 「「はい!」」
 「だから気合入れんなって」
 「「ワハハハハハハ!」」

 エレベーターで上に上がり、店の入り口で塩野社長が待っていてくれた。

 「石神はん!」
 「わざわざお出迎えなんて」
 「当たり前ですわ! さあ、中へどうぞ。もういらしてますよ」
 「え、そうなんですか!」

 塩野社長は東京支店での売り上げが爆上がりしたせいで、月の3分の1は東京に来ている。
 本社は大阪だが、売り上げ的には東京が上になった。
 個室へ案内された。

 「御堂! 遅くなってすまん!」
 「いや、時間通りだよ。僕たちが早く着き過ぎたんだ」
 「お前はいつも優しいなー!」

 みんなが笑った。
 今日は御堂と大渕さんと木村が来ている。
 ダフニスとクロエは部屋の入り口に立っている。
 全員に挨拶して席に着いた。

 「トラさん、自分なんかまですいません」
 「何言ってんだよ。いらねぇのはこいつらだ」
 「タカさん!」
 「石神さん!」
 「アハハハハハ!」

 すぐに肉が運ばれ、みんなで焼き始めた。
 亜紀ちゃんと柳は二人の領域で焼いて行く。
 まあ、今日は争うこともなく、バクバク喰うだけだった。

 俺は亜紀ちゃんにスマホを借り、今日の「ヘヴンズ・フォール」の映像を見せた。
 
 「おい、石神、なんだこれは!」

 御堂が叫び、大渕さんも木村も驚いている。
 俺は「ヘヴンズ・フォール」について説明した。

 「何でも、神の世界から降って来るということだったけどな。その辺は俺にも何とも分からん。でも、これまでの落下物を調べた限りでは、あり得ない合金だったり、未知の物質もあるらしいぞ」
 「ほんとうか」
 「大体人間が持てるものだけど、最大のものは200キロの水晶の塊が出て来たらしいな」
 「すごいな……」

 三人とも今回の巨大な水晶の塊に見入っていた。
 周囲に人間が写っているので、サイズが分かる。

 「まあ、今回のは20万トンだったけどな」
 「そんなにか!」
 「ガラが水晶としての概算だ。実際にどうなのかは計測していない」
 「そんなもの、どうしたんだ?」
 「俺が触ったら消えた」

 「「「!」」」

 「おい、肉が焦げるぞ」

 驚愕していた三人だったが、何とか平静を取り戻した。
 御堂は、俺が平然としているので、伝わったと思う。
 まだここでは話せないことだという意味だ。

 「相変わらず石神が無茶苦茶だね」
 「俺のせいじゃねぇよ! 大体今回のことだって皇紀と双子がやったことだ。まあ、いつも通りだな」
 
 御堂が笑った。

 「ああ、昨日もよ……」

 皇紀が浮気したフローレスと、夜のマニラでばったり会った話をした。

 「偶然、三人とも変装してたからな。それにフローレスも大分酔っていたようで気付かれなかった」
 
 三人とも大笑いした。

 「それでな、フローレスに子どもが出来たって俺に連絡が来てよ。夕べも亜紀ちゃんと一緒にマニラに飛んだんだよ」
 「えぇ!」
 「まあ、勘違いでな。フローレスの前の旦那との子どもが皇紀にやたらと懐いてたんで、その心配をするなってことだった」

 また三人が大笑いした。

 「亜紀ちゃんが激オコでよ。会うなり皇紀をぶっ飛ばして大変だったぜ」
 「トラさんの子ですね!」
 「木村、意味が分かんねぇよ!」
 「だって、トラさん、中学の頃から女に関しては凄かったじゃないですか」
 「バカヤロウ! 小学生の頃からだぁ!」

 爆笑された。

 「食事中の話題じゃねぇな」
 「まあ、石神だからね」
 「なにを! まあ、でもそっか」
 
 「トラさん、青のこと良かったですね」

 木村が気を遣って話題を変えてくれた。
 花見の時に、木村も御堂と一緒に聞いている。

 「ああ、そうだな。楽しみだぜ」
 「石神さん、僕たちも通いますよ」
 「大渕さんは忙しいでしょう。まあ、でも宜しくお願いします! ああ、密談とかで使ってください!」
 「アハハハハハ!」

 大渕さんが笑った。

 「でもね、本当にあんなに美しい夫婦は観たことがないんですよ」
 「そうですか」





 俺は懐かしく思い出した。
 自然に思い出が口を衝いて出た。
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