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顕さんと冬の別荘
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12月27日朝7時。
別荘への荷物を積み、朝食を積み、顕さんとモニカを迎えに行く。
本当は響子も連れて行きたかったが、30日からアラスカとニューヨークへ行くので、それまでは病院にいさせる。
ロボは響子ベッドに入っている。
ロボだけは既に食事を終えており、子どもたちは出発と同時におにぎりとサンドイッチを漁っている。
「顕さんたちが乗るんだから、車の中を汚すなよ!」
「「「「「はーい!」」」」」
バキバキと音が聞こえる。
ローストビーフサンドや鯛飯おにぎりなどの「良い」ものを争って奪い合っているのだ。
15分もすると全員食事を終え、大人しくなった。
「終わったか。亜紀ちゃん! 運転を替わってくれ」
「はーい!」
まだ一般道なので、路肩に停めて運転を交代した。
俺も朝食を食べていない。
柳が助手席に乗る。
俺は後ろのシートに座った。
「おい、何が残ってんだよ」
こいつら、一度も俺の喰いたいものを聞かなかった。
「「「「「!」」」」」
「?」
ハーが震えながらバットを見せた。
別荘でも使うために、朝食はバットに入れて運んでいた。
「何だよ、カラッポじゃねぇか」
「う、うん」
「残ってるものを出せよ」
ルーが震えながら、別なバットを見せた。
2つのバットに入れたはずだ。
「何だよ、カラッポじゃねぇか」
「う、うん」
前を見ると、ハンドルを握る亜紀ちゃんの手が震えている。
柳が青い顔をして後ろを振り向いている。
皇紀は既に土下座している。
「亜紀ちゃん!」
「は、はい!」
「車を家に戻せ! 別荘は中止だ」
「ヒィ!」
亜紀ちゃんが車を路肩に停め、外へ飛び出して土下座した。
他の子どもたちも同様にする。
「ふざけんなぁ! 俺は家長だぞ! てめぇら、誰のお陰……」
俺は途中で言葉を止めた。
俺が一番言いたくない台詞だった。
思ってもいないことを、激高して叫んでしまった。
「もういい! 早く車に乗れ!」
「「「「「すみませんでした!」」」」」
まったく、出発早々に嫌な雰囲気になりやがった。
8時過ぎに顕さんの家に近くなり、柳に電話させた。
家に着くと、顕さんとモニカが荷物を持って待っていた。
子どもたちが一斉に降りて荷物を後ろに積む。
大きな風呂敷の包みは、顕さんが手に持ったままだった。
「中で待っててもらいたかったのに。寒かったでしょう? ああ、電話なんかしなきゃ良かった」
「大丈夫だよ!」
「だって、モニカさんは温かい国の人でしょう。寒い思いをさせてすいません」
「石神さん、大丈夫ですって」
俺は暖房の風を強めた。
俺のすぐ後ろに座って頂く。
助手席には誰も座ろうとしなかった。
「石神くん、ちょっとここで食事をしてもいいかな?」
「もちろんです! 朝早くにすいませんでした。あっちで昼食を摂ろうと思いまして。顕さんはサービスエリアなんかじゃ喰えないでしょう?」
「そんなことはないよ。それでも良かったのに」
「いいえ! 顕さんとモニカさんに、半端なものを食べさせるわけには!」
「アハハハハハ!」
顕さんが持っていた風呂敷が朝食だったようだ。
「ちょっと多く作っちゃってね。モニカがおにぎりを気に入ったんで、いろんな具材を入れてたら、とても食べきれないんだ」
「そうなんですか」
「良かったら、みんなもどうかな」
「「「「「顕さーん!」」」」」
子どもたちが涙声で叫ぶ。
「タカさん! 運転替わります」
俺は笑って、亜紀ちゃんと替わった。
「顕さん! 今お茶を淹れますね! あ! もちろんタカさんの分も!」
ハーが言う。
「顕さん! 肩を揉みましょうか?」
ルー。
「顕さん! 食後にモニカさんとポッキーを!」
皇紀。
「顕さん! 別荘でお背中流しますね!」
「え、いいよ」
空気が読めない柳。
「にゃー」
付き合いのいい奴。
「石神くん! 何かあったのかい?」
俺は顕さんにおにぎりを頂きながら、さっきこいつらが俺の分の朝食まで食べてしまったのだと話した。
顕さんとモニカが大笑いしていた。
「それでか! まったく石神くんの家族は楽しいね!」
「いえ、帰ったらもう別れますから」
「「「「「すみませんでした!」」」」」
「お前ら、顕さんに感謝しろよ!」
「「「「「はい! ありがとうございました!」」」」」
「いいよ。本当に作り過ぎただけなんだから」
俺は顕さんのおにぎりをもらい、本当に美味しいと言いながら食べた。
ハーが「電子レンジ」で温めたペットボトルのお茶を顕さんとモニカに渡した。
「アチ!」
ハーが俺に頭を差し出したのでぶん殴った。
亜紀ちゃんにそのまま運転を任せ、顕さんたちと話した。
「お二人で出掛けたりしました?」
「うん。あまり遠くまでは行かなかったけどね。銀座や浅草とかだよ。あとは家でのんびりしていた」
「顕さん、銀座とかの美味しいお店を知ってますもんね」
「そうなんです。スペイン料理や、あとはヤキトリ! 私、大好きになりました」
「そうですか」
多分、俺と奈津江と一緒に行った店だろう。
「焼き鳥って、あの地下のお店ですか?」
「そうだよ。僕はそんなに美味しいお店を知らないよ」
「そんな! あそこはよく響子とも行くんですよ」
「ああ、前に聞いたね。何だか僕も嬉しいよ」
「俺は全部顕さんのお陰で生きてますからね!」
「アハハハハ!」
高速に乗る前に亜紀ちゃんと運転を替わった。
「タカさん、私が運転しますから、ゆっくり休んで下さい」
「ばかやろう! 顕さんたちには最高の運転で別荘まで行って頂くんだ!」
亜紀ちゃんは笑って後ろに移動した。
俺は助手席の柳を睨む。
「じゃあ、柳。宜しくな!」
「は、はい」
「じゃあ、モニカさんを歓迎してフィリピンの歌謡曲を歌え!」
「え! すいません、知りません!」
「てめぇは!」
♪ Bakit ngayon ka lang? Bakit ngayon kung kailan ang aking puso'y Mayro'n nang laman? ♪
モニカが驚いた。
Ogie Alcasidの『Bakit Ngayon Ka Lang』だ。
フィリピンの人で知らない人はいないだろう。
「石神さん! よく知ってますね!」
「そりゃ、モニカさんが来るんだから勉強しましたよ」
「ほんとですか!」
「石神くんだねぇ」
子どもたちが一斉に俺を褒めて来る。
「うるせぇ! 顕さんとモニカさんを褒め称えて歓迎しろ!」
柳が急いで検索し、『マイ・ウェイ』を歌い始めた。
フィリピンのカラオケでの人気曲だ。
「おっさんかよ」
「えぇー!」
みんなで笑った。
「でも、私大好きです!」
「モニカさんは優しいなー」
双子も検索し、筋肉少女帯の曲をアレンジして『日本フィリピン化計画』を歌った。
♪ 日本をフィリピンにしてしまえ! オレに「レチョン」を食わせろ オレはいつでも辛さにこだわるぜ ♪
顕さんとモニカが大爆笑した。
「ターバン」はテルノに。
「ガンヂス川」はカガヤン川に。
即興にしてはいい。
楽しくドライブした。
別荘への荷物を積み、朝食を積み、顕さんとモニカを迎えに行く。
本当は響子も連れて行きたかったが、30日からアラスカとニューヨークへ行くので、それまでは病院にいさせる。
ロボは響子ベッドに入っている。
ロボだけは既に食事を終えており、子どもたちは出発と同時におにぎりとサンドイッチを漁っている。
「顕さんたちが乗るんだから、車の中を汚すなよ!」
「「「「「はーい!」」」」」
バキバキと音が聞こえる。
ローストビーフサンドや鯛飯おにぎりなどの「良い」ものを争って奪い合っているのだ。
15分もすると全員食事を終え、大人しくなった。
「終わったか。亜紀ちゃん! 運転を替わってくれ」
「はーい!」
まだ一般道なので、路肩に停めて運転を交代した。
俺も朝食を食べていない。
柳が助手席に乗る。
俺は後ろのシートに座った。
「おい、何が残ってんだよ」
こいつら、一度も俺の喰いたいものを聞かなかった。
「「「「「!」」」」」
「?」
ハーが震えながらバットを見せた。
別荘でも使うために、朝食はバットに入れて運んでいた。
「何だよ、カラッポじゃねぇか」
「う、うん」
「残ってるものを出せよ」
ルーが震えながら、別なバットを見せた。
2つのバットに入れたはずだ。
「何だよ、カラッポじゃねぇか」
「う、うん」
前を見ると、ハンドルを握る亜紀ちゃんの手が震えている。
柳が青い顔をして後ろを振り向いている。
皇紀は既に土下座している。
「亜紀ちゃん!」
「は、はい!」
「車を家に戻せ! 別荘は中止だ」
「ヒィ!」
亜紀ちゃんが車を路肩に停め、外へ飛び出して土下座した。
他の子どもたちも同様にする。
「ふざけんなぁ! 俺は家長だぞ! てめぇら、誰のお陰……」
俺は途中で言葉を止めた。
俺が一番言いたくない台詞だった。
思ってもいないことを、激高して叫んでしまった。
「もういい! 早く車に乗れ!」
「「「「「すみませんでした!」」」」」
まったく、出発早々に嫌な雰囲気になりやがった。
8時過ぎに顕さんの家に近くなり、柳に電話させた。
家に着くと、顕さんとモニカが荷物を持って待っていた。
子どもたちが一斉に降りて荷物を後ろに積む。
大きな風呂敷の包みは、顕さんが手に持ったままだった。
「中で待っててもらいたかったのに。寒かったでしょう? ああ、電話なんかしなきゃ良かった」
「大丈夫だよ!」
「だって、モニカさんは温かい国の人でしょう。寒い思いをさせてすいません」
「石神さん、大丈夫ですって」
俺は暖房の風を強めた。
俺のすぐ後ろに座って頂く。
助手席には誰も座ろうとしなかった。
「石神くん、ちょっとここで食事をしてもいいかな?」
「もちろんです! 朝早くにすいませんでした。あっちで昼食を摂ろうと思いまして。顕さんはサービスエリアなんかじゃ喰えないでしょう?」
「そんなことはないよ。それでも良かったのに」
「いいえ! 顕さんとモニカさんに、半端なものを食べさせるわけには!」
「アハハハハハ!」
顕さんが持っていた風呂敷が朝食だったようだ。
「ちょっと多く作っちゃってね。モニカがおにぎりを気に入ったんで、いろんな具材を入れてたら、とても食べきれないんだ」
「そうなんですか」
「良かったら、みんなもどうかな」
「「「「「顕さーん!」」」」」
子どもたちが涙声で叫ぶ。
「タカさん! 運転替わります」
俺は笑って、亜紀ちゃんと替わった。
「顕さん! 今お茶を淹れますね! あ! もちろんタカさんの分も!」
ハーが言う。
「顕さん! 肩を揉みましょうか?」
ルー。
「顕さん! 食後にモニカさんとポッキーを!」
皇紀。
「顕さん! 別荘でお背中流しますね!」
「え、いいよ」
空気が読めない柳。
「にゃー」
付き合いのいい奴。
「石神くん! 何かあったのかい?」
俺は顕さんにおにぎりを頂きながら、さっきこいつらが俺の分の朝食まで食べてしまったのだと話した。
顕さんとモニカが大笑いしていた。
「それでか! まったく石神くんの家族は楽しいね!」
「いえ、帰ったらもう別れますから」
「「「「「すみませんでした!」」」」」
「お前ら、顕さんに感謝しろよ!」
「「「「「はい! ありがとうございました!」」」」」
「いいよ。本当に作り過ぎただけなんだから」
俺は顕さんのおにぎりをもらい、本当に美味しいと言いながら食べた。
ハーが「電子レンジ」で温めたペットボトルのお茶を顕さんとモニカに渡した。
「アチ!」
ハーが俺に頭を差し出したのでぶん殴った。
亜紀ちゃんにそのまま運転を任せ、顕さんたちと話した。
「お二人で出掛けたりしました?」
「うん。あまり遠くまでは行かなかったけどね。銀座や浅草とかだよ。あとは家でのんびりしていた」
「顕さん、銀座とかの美味しいお店を知ってますもんね」
「そうなんです。スペイン料理や、あとはヤキトリ! 私、大好きになりました」
「そうですか」
多分、俺と奈津江と一緒に行った店だろう。
「焼き鳥って、あの地下のお店ですか?」
「そうだよ。僕はそんなに美味しいお店を知らないよ」
「そんな! あそこはよく響子とも行くんですよ」
「ああ、前に聞いたね。何だか僕も嬉しいよ」
「俺は全部顕さんのお陰で生きてますからね!」
「アハハハハ!」
高速に乗る前に亜紀ちゃんと運転を替わった。
「タカさん、私が運転しますから、ゆっくり休んで下さい」
「ばかやろう! 顕さんたちには最高の運転で別荘まで行って頂くんだ!」
亜紀ちゃんは笑って後ろに移動した。
俺は助手席の柳を睨む。
「じゃあ、柳。宜しくな!」
「は、はい」
「じゃあ、モニカさんを歓迎してフィリピンの歌謡曲を歌え!」
「え! すいません、知りません!」
「てめぇは!」
♪ Bakit ngayon ka lang? Bakit ngayon kung kailan ang aking puso'y Mayro'n nang laman? ♪
モニカが驚いた。
Ogie Alcasidの『Bakit Ngayon Ka Lang』だ。
フィリピンの人で知らない人はいないだろう。
「石神さん! よく知ってますね!」
「そりゃ、モニカさんが来るんだから勉強しましたよ」
「ほんとですか!」
「石神くんだねぇ」
子どもたちが一斉に俺を褒めて来る。
「うるせぇ! 顕さんとモニカさんを褒め称えて歓迎しろ!」
柳が急いで検索し、『マイ・ウェイ』を歌い始めた。
フィリピンのカラオケでの人気曲だ。
「おっさんかよ」
「えぇー!」
みんなで笑った。
「でも、私大好きです!」
「モニカさんは優しいなー」
双子も検索し、筋肉少女帯の曲をアレンジして『日本フィリピン化計画』を歌った。
♪ 日本をフィリピンにしてしまえ! オレに「レチョン」を食わせろ オレはいつでも辛さにこだわるぜ ♪
顕さんとモニカが大爆笑した。
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