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 ……その日のアデルの甘々な対応と、クラスメイトの反応はすごかった。

 授業中もアデルは顔を真横に近づけてくるし、(周りの同級生がざわつき始めたてた)

 実験器具が高いところにあって取れない時に、アデルが後ろから覆い被さるように取ってくれたり(一瞬、近くの女子生徒から軽い悲鳴が聞こえた)

 極め付けはお昼を食堂で食べたときだ。いつも二人ともないから、よっぽど目立っていたのだろう。他学年の生徒まで二度見していた。

 そこでアデルがなんと……俺の口周りについたソースを指ですくって舐めたのだ!!

 「ついてたよ」なんてアデルはにこにこしながら言ってたけど、絶対に周りが注目しているのをわかっててやってる。

 一方で、俺も俺で「ありがとうございます」と普通に返せなくて……

 顔を真っ赤にさせて、俯いてしまったのだ。
 
 だって! なんかアデル優しいし、笑顔が眩しいし……告白してきてから俺にだけ甘いし!

 ただそんな反応をしてしまっては、周りも勘づくわけで……

 「えっ、今の見た!?」
 「見たみた! しかも学友のそれじゃないわよね……?」

 俺は内心で『浮気の噂が広まるのはいいけれど、恥ずかしさで死にそう……!!』と震えていた。



 ◆◇◆◇◆◇




 ただそれも2週間ほどすれば慣れてくる……と言いたいけれど、全然毎回恥ずかしい!

 でもまぁ、手が軽く触れたり距離が近いのには少しだけ慣れた。相変わらず顔は熱いけど。

 それに、アデルが死ぬほど嬉しいそうだからいいかなって思ったり……

 「いやいや、そんな甘い気持ちじゃ家を出るなんて夢のまた夢だ!」

 「セム、急にどうしたの?」

 中庭で昼寝をしようとしていたアデルが起き上がる。もう寝たと思ってたのに。俺は慌てて首をふった。

 「あ、いや! アデルは関係ないよ! ただ、その……あ! 浮気の噂広まってきて、家を出る覚悟を決めてたところ!」

 目が完全に泳いでいたけれど、アデルは納得してくれたようだ。また芝生の上に横になる。

 「たしかに広まってきたよね~」

 「うん……その分刺さる視線も痛いけど」

 アデルの言う通り、噂はだいぶ広まってきた。廊下ですれ違いざまに女子がヒソヒソ話してたり、食堂で視線を感じたり。

 「あの無能令息がたぶらかしてるんじゃ……
 「いや、でもアデル様も相当な遊び人らしい」
 「えっ、そうなの?」

 と言った感じで、俺とアデルの悪名は、しっかりと浸透していった。

 ……でも、気になることが一つあるんだよなぁ……

                                      
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