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 「……ソフィーとルーカスは気づいてるかな……?」
 「うーん、気づいてはいると思うよ。特に彼女は」

 アデルがそう言って、校舎の窓の方を見る。この中庭からはあまり校舎が見えないが、廊下と魔法薬学第二準備室の窓は見えた。

 「……そういえばね、魔法薬草の研究は……」

 あんまり芳しくない結果を言おうとしたとき、アデルが先に「ああ、別にいいよ」と答えた。

 「いや、よくないよ。アデルの病気を治すのが目的なんだし……」

 と言いつつも、魔法薬草の研究はあまり進んでいない。
 アデルが言っていたように、あの葉っぱは熱を吸うだけで魔力を吸うわけでは無いようだ。

 けれどあの葉っぱを乗せたときにアデルの体調はよくなったわけで……

 何かしらの因果関係があるはずなのに、それが掴めない。

 「僕は大丈夫だよ。それにきっと……」

 「きっと?」

 アデルがふっとこちらを見て、俺の手に視線を落とす。

 「……僕が暴走しなければいいんだし。大丈夫、大丈夫」

 「そうは言っても……」

 これでまたアデルが暴走したら、一番傷つくのはアデル本人だ。だから治したいのに……

 うーん、うーんと悩み始めてしまった俺をみかねて、アデルが起き上がる。

 「そんなことよりさ……そうだな、セムはどこまでが嫌じゃない?」

 「え?」

 何の話……と言おうとして、アデルが急に距離をつめてくる。

 「僕はさ、セムに触れたいと思うんだけど……」

 「えっ、うわっ」

 アデルがジャケットの中に手を入れてくる。近くなる匂いに、心臓が馬鹿みたいに跳ねた。

 「もしセムはそういうこと好きじゃ無いなら、考えないとなぁーって」

 「ちょっ、ちょっとアデル……!!」

 ニットを少し捲られ、シャツの上からお腹を撫でられる。今まで手を握るとか、頭を撫でるとかだったのに。初めて変なところに触れられ、頭がパニックになる。

 「……本当はシャツの上なんかじゃなくて、僕は生身の肌に触れたいよ」

 「!? あっ」

 アデルが耳元で囁いたと思ったら、軽く舐められた。思わずビクッと体が反応して、慌てて手で口元を抑える。

 「ア、アデル……ひっ」

 腹に置いていた手は背中に周り、いやらしく動く。もぞもぞとする感覚に、手が震えた。

 「セム……もし嫌なら、もっと抵抗して」

 「うっ、あっ」

 耳を甘噛みされ、心臓が爆ぜそうになる。アデルの手は胸の方にまで伸びていて、小さな突起をぐにっと押された。

 抵抗しようと腰を動かす。けれどアデルの甘い匂いと囁く声に、うまく争えない。

 「……ア、アデル、待って」

 「なら僕を突き飛ばして」

 そうしないといけないのはわかっているのに、心のどこかで嫌じゃない自分がいて……

 ど、どうしよう! やばい、思考がちゃんとまとまらな——

 「あ! おい、セム! お前そこにいたのか!!」

 ……まとまらないと思っていたけれど、校舎から聞こえた馬鹿でかいルーカスの声に、俺はちゃんとアデルを突き飛ばした。

                                      
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