婚約者が義弟と不貞を働いていたので、俺も隣国の皇子と浮気します

栄円ろく

文字の大きさ
43 / 64

43

しおりを挟む
 「ちょ、声が大きいって!!」

 俺は慌ててアデルの口をふさいだ。本棚の隙間から周りを見渡したけど、幸いにも周りに誰もいない。

 「ご、ごめん……でも、家を出るって……」

 「前までは家を出たら生きていけないと思ってたけど……何かいい方法がないか、調べてみるだけ調べてみようかなって」

 魔法球技の試合でアデルから家を出ようとしていた話を聞いてから、ずっとそればかりを考えていた。

 もし家に頼らず生きていけたら。自分から堂々と婚約破棄を言い渡せたら。

 それってすごい、俺にとって生きやすいんじゃないかって。

 「だってさ、考えれば考えるほど、家を出た方が利点が多いんだよ! アデルとの浮気が広まって、俺が婚約破棄をすれば、ソフィーとルーカスは結婚できるでしょ? しかも俺は実家で肩身の狭い思いをしなくて済むし……」

 それにやっぱり、アデルの言っていた通りずっと奪われる人生は嫌だ。
 足掻いてみるだけ足掻いてみて、それでもダメだったら諦めるけど……
 まだなにもやっていないのに、諦めるのは早い気がした。

 「セム……」

 「でも、俺が家を出て生きていける術が思いつかないんだよ……魔法も使えないし、勘当って印象最悪すぎるし……ねぇ、アデル何かいい方法ない?」

 「えっ」

 突然の問いにアデルは困ったようだ。目を見開いて固まっている。

 「アデル頭良いから、何かいい案あるかなって思って……ごめん、変なこと聞いて」

 困らせたかったわけじゃないから、俺はしゅんとなる。

 でもアデルのせいで社会的破滅を迎えるとなったら、少しは助言をくれてもよくないか?

 ふとそんな考えが降ってきたとき、アデルが俺の両肩を掴んだ。

 「セムは……家を出て生きていける術が見つかったら、本気でマイヤー家を離れるつもりなの?」

 「えっ、あ、うん……でもやっぱり無謀かな……やめておいたほうがいいと思う?」

 「いやまったく。僕は断然離れるべきだと思う。セムに、その意思があるなら」

 アデルは真剣な瞳を俺に向けたあと、ゆっくりと瞬きをした。

 「……セム、今度の春休み予定ある?」

 「えっ、春休み?」

 「そう。セムに見せたいものがあるんだ」

 見せたいもの……なんだろう、それは。

 詳細を言わないアデルを不思議に思いつつも、俺は「予定はないよ」と答えた。

                                      
しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【本編完結】処刑台の元婚約者は無実でした~聖女に騙された元王太子が幸せになるまで~

TOY
BL
【本編完結・後日譚更新中】 公開処刑のその日、王太子メルドは元婚約者で“稀代の悪女”とされたレイチェルの最期を見届けようとしていた。 しかし「最後のお別れの挨拶」で現婚約者候補の“聖女”アリアの裏の顔を、偶然にも暴いてしまい……!? 王位継承権、婚約、信頼、すべてを失った王子のもとに残ったのは、幼馴染であり護衛騎士のケイ。 これは、聖女に騙され全てを失った王子と、その護衛騎士のちょっとズレた恋の物語。 ※別で投稿している作品、 『物語によくいる「ざまぁされる王子」に転生したら』の全年齢版です。 設定と後半の展開が少し変わっています。 ※後日譚を追加しました。 後日譚① レイチェル視点→メルド視点 後日譚② 王弟→王→ケイ視点 後日譚③ メルド視点

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。

伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。 子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。 ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。 ――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか? 失望と涙の中で、千尋は気づく。 「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」 針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。 やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。 そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。 涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。 ※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。 ※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

処理中です...