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「ちょ、声が大きいって!!」
俺は慌ててアデルの口をふさいだ。本棚の隙間から周りを見渡したけど、幸いにも周りに誰もいない。
「ご、ごめん……でも、家を出るって……」
「前までは家を出たら生きていけないと思ってたけど……何かいい方法がないか、調べてみるだけ調べてみようかなって」
魔法球技の試合でアデルから家を出ようとしていた話を聞いてから、ずっとそればかりを考えていた。
もし家に頼らず生きていけたら。自分から堂々と婚約破棄を言い渡せたら。
それってすごい、俺にとって生きやすいんじゃないかって。
「だってさ、考えれば考えるほど、家を出た方が利点が多いんだよ! アデルとの浮気が広まって、俺が婚約破棄をすれば、ソフィーとルーカスは結婚できるでしょ? しかも俺は実家で肩身の狭い思いをしなくて済むし……」
それにやっぱり、アデルの言っていた通りずっと奪われる人生は嫌だ。
足掻いてみるだけ足掻いてみて、それでもダメだったら諦めるけど……
まだなにもやっていないのに、諦めるのは早い気がした。
「セム……」
「でも、俺が家を出て生きていける術が思いつかないんだよ……魔法も使えないし、勘当って印象最悪すぎるし……ねぇ、アデル何かいい方法ない?」
「えっ」
突然の問いにアデルは困ったようだ。目を見開いて固まっている。
「アデル頭良いから、何かいい案あるかなって思って……ごめん、変なこと聞いて」
困らせたかったわけじゃないから、俺はしゅんとなる。
でもアデルのせいで社会的破滅を迎えるとなったら、少しは助言をくれてもよくないか?
ふとそんな考えが降ってきたとき、アデルが俺の両肩を掴んだ。
「セムは……家を出て生きていける術が見つかったら、本気でマイヤー家を離れるつもりなの?」
「えっ、あ、うん……でもやっぱり無謀かな……やめておいたほうがいいと思う?」
「いやまったく。僕は断然離れるべきだと思う。セムに、その意思があるなら」
アデルは真剣な瞳を俺に向けたあと、ゆっくりと瞬きをした。
「……セム、今度の春休み予定ある?」
「えっ、春休み?」
「そう。セムに見せたいものがあるんだ」
見せたいもの……なんだろう、それは。
詳細を言わないアデルを不思議に思いつつも、俺は「予定はないよ」と答えた。
俺は慌ててアデルの口をふさいだ。本棚の隙間から周りを見渡したけど、幸いにも周りに誰もいない。
「ご、ごめん……でも、家を出るって……」
「前までは家を出たら生きていけないと思ってたけど……何かいい方法がないか、調べてみるだけ調べてみようかなって」
魔法球技の試合でアデルから家を出ようとしていた話を聞いてから、ずっとそればかりを考えていた。
もし家に頼らず生きていけたら。自分から堂々と婚約破棄を言い渡せたら。
それってすごい、俺にとって生きやすいんじゃないかって。
「だってさ、考えれば考えるほど、家を出た方が利点が多いんだよ! アデルとの浮気が広まって、俺が婚約破棄をすれば、ソフィーとルーカスは結婚できるでしょ? しかも俺は実家で肩身の狭い思いをしなくて済むし……」
それにやっぱり、アデルの言っていた通りずっと奪われる人生は嫌だ。
足掻いてみるだけ足掻いてみて、それでもダメだったら諦めるけど……
まだなにもやっていないのに、諦めるのは早い気がした。
「セム……」
「でも、俺が家を出て生きていける術が思いつかないんだよ……魔法も使えないし、勘当って印象最悪すぎるし……ねぇ、アデル何かいい方法ない?」
「えっ」
突然の問いにアデルは困ったようだ。目を見開いて固まっている。
「アデル頭良いから、何かいい案あるかなって思って……ごめん、変なこと聞いて」
困らせたかったわけじゃないから、俺はしゅんとなる。
でもアデルのせいで社会的破滅を迎えるとなったら、少しは助言をくれてもよくないか?
ふとそんな考えが降ってきたとき、アデルが俺の両肩を掴んだ。
「セムは……家を出て生きていける術が見つかったら、本気でマイヤー家を離れるつもりなの?」
「えっ、あ、うん……でもやっぱり無謀かな……やめておいたほうがいいと思う?」
「いやまったく。僕は断然離れるべきだと思う。セムに、その意思があるなら」
アデルは真剣な瞳を俺に向けたあと、ゆっくりと瞬きをした。
「……セム、今度の春休み予定ある?」
「えっ、春休み?」
「そう。セムに見せたいものがあるんだ」
見せたいもの……なんだろう、それは。
詳細を言わないアデルを不思議に思いつつも、俺は「予定はないよ」と答えた。
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