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 それから昼休みの時間まで、生きた心地がしなかった。

 周りの視線は痛いほど刺さってくるし、ことあるごとにアデルはベタベタしてくるし。

 だからお昼休みのチャイムが鳴ってすぐに、俺はアデルを連れて教室を出た。

 「セム、そんなに急いでどうしたの? あ! もしかして学内を案内してくれる感じ?」
 「あはは……そんな感じですかね」

 んなわけないだろ。

 額に汗を浮かべながら、階段を登ったり降りたりする。

 ちらっと振り向くと、数人の学生がついてきていた。くっそ! めんどくさすぎる! 

 俺は二人きりで話がしたいのに!

 「ああ……どうしよう。あそこを登れば……でもそれだと……」
 「……もしかしてセム、あの子達を巻きたいの?」

 俺が口元に手を当てて思案していると、アデルが覗き込んでくる。

 ていうか、顔ちかすぎっ! なんなんだよこの人!! ライヒ帝国にパーソナルスペースはないのか!!

 「……ええ、そうですね。ちょっと、二人きりで大事な話が」
 「ふふっ、セムって意外と積極的なんだね」

 帝国の皇子だというのを忘れて、ギロっと睨む。するとアデルは「ごめん、からいすぎた」と素直に謝って、俺の手を握った。

 「ちょ、ちょっと!」
 「僕らが初めて会った準備室って、今誰かいるかな?」
 「は、はぁ? 今はいないと……」
 「わかった」

 なにがどうわかったのか理解できないまま、アデルに引っ張られ、廊下を右に曲がる。
 瞬間ふわっと体が浮いて、瞬きする間に魔法薬草準備室の室内が目の前に現れた。
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