319 / 397
【聖者の薔薇園-終幕】
317.おぱんつ盗難事件
しおりを挟む夜中にディラン兄様とのアレなお勉強をした後、まだ早いからとぐーすかすぴーと二度寝した朝のこと。
目覚めるとディラン兄様は既にいなくなっていて、僕は一人広いベッドの上でぐーぐーと大の字で眠っていた。瞼を完全に上げて直ぐ、何だか妙な感覚にきょとんと首を傾げて窓の外を見遣る。
いつも起きた時よりも高い位置にある太陽を見て、まさか……と顔を青褪めた。
ガバッ!と起き上がって目を擦り、もう一度じーっと窓の外の太陽を見つめる。うーむ、やっぱり高い位置にある気がする……。それに、いつも起きた時より圧倒的に視界が明るい。
なんでじゃろ?と半ば答えに気が付いているのに知らんぷりをしてみる。だってだって、こんなの絶対……大寝坊!しちゃったに決まってる。しゅーん。
「あわわ……っ」
ベッドの上に座り込んでぷるぷる。太陽があれだけ高い位置にあるってことは、かなりとってもやばめな寝坊をしてしまったに違いない。
朝ごはんの時間もきっととうに過ぎている。どうして誰も……特にシモン。シモンは起こしてくれなかったのかと八つ当たりぷんすかをしてしまった。寝坊してしまったのは自分のせいでしかないのに。
そんなこんなでしょんぼり項垂れていると、不意に背後から聞き慣れた大好きな声が聞こえた。
「フェリアル様!お目覚めになったのですね!」
目を見開いてぱっと振り返る。箒を持ってぱぁっと笑顔を浮かべている彼……シモンの姿を視認してぱたぱた駆け寄りむぎゅーっと抱き着いた。
「シモン!シモンっ、シモン!」
コアラみたいにむぎゅーと抱き着いて首筋にうりうり攻撃。箒をその場に放り捨てたシモンが、そんな僕をむぎゅむぎゅ抱き締め返してすんすんくんかくんかした。匂い気になるのかな。
「はぁっ今日も赤ちゃんの匂い……ん?んん?こ、これはっ!」
ふにゃあっと蕩けた表情を浮かべたシモンだったけれど、その表情はすぐに愕然としたものに変わった。
何やらとっても驚いている様子のシモンを見てぱちくり。瞬く僕をおっきく丸まった目で見据えると、シモンはかたかた震えながら声を上げた。
「フェリアル様の無垢なお体からッ、いッ、淫靡な匂いが!!」
「なっ、なぬーっ!?」
びよよーんと両腕を万歳みたいに掲げてびっくり仰天。目ん玉まん丸。
いんび……淫靡?いやらしいってことだろうか。それならちょっぴり、いやかなり思い当たる節がある。慌ててシモンの腕の中からんしょんしょ抜け出し、すぽっと床に降りたところで足に履いていた服を下穿きごと全てがばっと下ろしてみた。
「フェッ、フェリアル様ァ!?い、一体何をッ!聖域が丸見えでございますよフェリアル様ァ!!」
「シモン!僕のおぱんつ消えた!」
「おッ、おぱんつが消えたぁ!?」
大変だ。昨日まで……というよりディラン兄様とあれやこれやしていた時に履いていたはずのおぱんつが消えている。そして代わりに新しいおぱんつが履かされている。これは一体どういうことなのか。
あの後眠ってしまったなら、僕はまだ着替えていないということになるからおぱんつはそのままでないとおかしい。それなのに今履いているおぱんつは夜まで履いていたものじゃない。
むむっ!これは怪しいでござる……事件の匂いがぷんぷんでござる……。
「僕のおぱんつ盗難事件!犯人を見つけださねば!」
「フェリアル様のおぱんつを盗んだ不届き者が!?ゆ、許せない……!探し出して極刑に処しましょう!!」
これから長い長い旅が始まる……そう、僕のおぱんつを探す旅が。と、かっこいいプロローグが決まった瞬間、突然お腹がぐーぐーと空腹を訴え出した。
「……その前に腹ごしらえをするでござる」
「昨夜はご飯、何も食べなかったですもんね。まずはご飯にしましょうか」
おぱんつは二の次。まずはごはんごはんっとわくわくしながら席に着こうとしたその時、今度は部屋の扉がガチャッと開かれ誰かが問答無用で入ってきた。
「フェリ、おはよう。フェリの可愛い声が邸中に響いていたぞ」
「ディラン兄様!おはようございます!」
現れたのはディラン兄様。夜以来だからそんなに久々な感覚は無い。ぱたぱたと駆け寄ってシモンにしたみたいにむぎゅーっと抱き着くと、兄様もむぎゅーっと抱き締め返してくれた。ぽかぽか。
それより、む?兄様は今なんと?僕の声が邸中に響いていた……?ということは、僕のおぱんつ騒ぎが邸中の人たちに聞かれてしまったということだろうか。ぬーん恥ずかしい……。
ぽっぽっと顔を赤らめてぷしゅーと湯気を出す僕を床に下ろし、ディラン兄様はよしよしと僕の頭を撫でて衝撃の発言を繰り出した。
「昨夜フェリが身に着けていたクマ柄の下穿きなら、汚れてしまったから兄様が処分しておいたぞ」
「なぬっ!」
「気に入りの物だったか?また新しいクマ柄の下穿きを買ってやるから落ち込むな」
「うぅん……うむ。ありがと兄様」
なんと。例の汚れたおぱんつは兄様がしっかり片付けてくれていたらしい。
僕のおぱんつ盗難事件、これにて一件落着。めでたしめでたし。ちゃんちゃん。
199
お気に入りに追加
13,543
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
悪役令息を引き継いだら、愛が重めの婚約者が付いてきました
ぽんちゃん
BL
双子が忌み嫌われる国で生まれたアデル・グランデは、辺鄙な田舎でひっそりと暮らしていた。
そして、双子の兄――アダムは、格上の公爵子息と婚約中。
この婚約が白紙になれば、公爵家と共同事業を始めたグランデ侯爵家はおしまいである。
だが、アダムは自身のメイドと愛を育んでいた。
そこでアダムから、人生を入れ替えないかと持ちかけられることに。
両親にも会いたいアデルは、アダム・グランデとして生きていくことを決めた。
しかし、約束の日に会ったアダムは、体はバキバキに鍛えており、肌はこんがりと日に焼けていた。
幼少期は瓜二つだったが、ベッドで生活していた色白で病弱なアデルとは、あまり似ていなかったのだ。
そのため、化粧でなんとか誤魔化したアデルは、アダムになりきり、両親のために王都へ向かった。
アダムとして平和に暮らしたいアデルだが、婚約者のヴィンセントは塩対応。
初めてのデート(アデルにとって)では、いきなり店前に置き去りにされてしまい――!?
同性婚が可能な世界です。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
※ 感想欄はネタバレを含みますので、お気をつけください‼︎(><)
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。