物置小屋

１人向け・other

一夜の夢(優しい死神)

こんばんは。突然だけど、君はあと1時間で寿命が尽きます。
もし何かやり残したことがあるなら…なんて、こんな話をされても困るよね。
泣いているのかと思ったら…君みたいに笑顔でいる人間は珍しい。
それで、やり残したことは？かぐや姫？
…十五夜、だっけ。何をすればいい？
服って、十二単のこと？それはやめておいた方がいい。とにかく重くて動きづらいらしいから。
月へ帰る…それなら、これに着替えさせてもいい？
嫌がることはしないから。

…できた。着物なら持っていたから、それっぽくしてみたんだ。
これならきっと月からの使者もちゃんと来てくれるはずだよ。
…どうして驚いた顔をしているの？馬鹿にするはずない。
それがどんな思いであれ、踏みにじっていい理由にはならないんだ。
君がどんな扱いを受けてきたのか見てきた。
記録だけど…かなりひどいものだったように思う。
ある日突然、誰も帰ってこなくなる家。
そこに閉じこめられたまま…きっと僕が考えているより辛かっただろうね。
今日までお疲れ様でした。…君は沢山頑張って、今日という日を迎えている。
これから行く場所できっと君の本当の願いは叶うよ。
…そろそろ時間だ。行こう。

一瞬でもお姫様になってみたかった、か。
…素敵な願いだと思うけど、人間は違うのか。
まだまだ僕が知らないことも多いんだろう。…これから知っていくことになるだろうな。
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優しい死神シリーズにしました。