物置小屋

１人向け・other

護りたい世界(古書の悪魔)

こんばんは。僕を呼び出すなんて、珍しい人間もいたものだ。
…それで、君の願いは？
僕が君に与えられるのは死のみ。
呼び出した人間の願いをひとつ叶えるのが僕の仕事だ。
寿命の譲渡？できなくはないけど、それに何か意味があるの？
君の命を懸けてまでやること？
よく分からないな、人間というのは。
自分さえよければいいという者が圧倒的なはずなのに、君みたいな存在が混ざっている。
…病院にでも行くの？すぐに眠らせたりしないから、願いを叶えに行こう。


…あの子どもにあげるの？どうして？
君が何か利を得られるわけでもないのに、本当にこれでいいの？
…たまたま仲良くしていた相手に寿命をあげようと思ってるの？あの子どもは成長すれば君のことさえ忘れるかもしれないのに？
…成程。生きたい人にあげるべき、か。
君は生きたくなかったってこと？…そう。
もうひとつ理由があるの？…成程。ならこれで契約成立だ。
目を閉じて。君は痛みすら感じない。あの子どもも体に特に変化はない。
強いて言うなら、病状がよくなるだけだ。
そのまま君の体から力が抜けていくのを感じて…もう目を開けていいよ。
あの子どもが目を覚ます頃には、病はすっかり治っているだろう。
それでは、これから君に死を与える。
…感謝されるようなことはしてないはずだけど。
それでは、さようなら。

あの子は自分を必要としてくれたから、か。
……よく分からないけど、彼女にとっていい選択だったならそれでいい。
あの子どもが健康の大切さを覚えておいてくれるといいけど、そんなの誰にも分からないか。
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古書の悪魔シリーズの話にしてみました。