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物語の欠片
ピュアホワイトの純心・後篇(ブラ約)
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「これあげる」
「私がもらっていいんですか…?」
「勿論。そのために用意したのだから」
嬉しそうに包みを開ける陽和を見つめながら、リーゼはただ願った。
このまま長く平穏が続きますようにと。
「本と花の種、あと…小箱ですか?」
「それはオルゴール。箱の底の裏側のネジを回してみて」
言われたとおりにすると、きらきらした音楽が流れ出した。
「ありがとうございます。とっても綺麗な音がするんですね」
「気に入ってもらえたならよかった」
「あ、あの…私のも、受け取ってもらえますか?」
「用意してくれていたの?」
「はい。リリーさんに教えてもらったんです」
リースだけでなく、マフラーまで編んでくれているとは思っていなかった。
わくわくした様子の陽和にリーゼは微笑む。
「ありがとう。大切にする」
「喜んでもらえてよかったです」
「汚してしまってはいけないから、先にしまってくる」
「私もそうします」
部屋に戻ったところで、森に何者かが侵入した気配を感じとった。
リーゼは臨戦態勢で様子を見に行こうとしたが、玄関の方でばちばちと音がする。
「……緑の贄の力?」
元々生贄として育てられた陽和の力は膨大で、魔除けの意味を持つリースにも無意識のうちに植物の生命の息吹が活性化されていたらしい。
うっすら結界のようなものが視えたリーゼは静かに持っていた武器を下ろす。
そもそもこんな奥まで辿り着けるのは道を知っているリリーだけだ。
森に入った程度なら無傷で出ていっただろう。
「…私が護らなくては」
陽和は無邪気にクロウとじゃれあっている。
握りしめていたブローチをポケットに入れ、リーゼは部屋を後にした。
「おまたせ」
「あ、いえ…」
「どうかした?」
迷っている様子だった陽和は顔をあげ、リーゼに問いかける。
「あ、あの…今日、楽しかったですか?」
「勿論」
「私に、気を遣っていませんか…?」
陽和が申し訳なさそうにしているのを見て、リーゼはそっと頬に触れる。
「あなたがいてくれたから今年は楽しかった」
「本当ですか?」
「いつもはクロウとふたりだったから、こんなふうに豪華な食事を楽しんだこともなかった。
でも、今年はあなたが頑張ってくれたからいい時間を過ごせた。ありがとう」
陽和の表情がぱっと明るくなり、今夜1番の笑顔で答える。
「私も楽しかったです。初めてのクリスマスでしたが、こんなに楽しいものだなんて知りませんでした。心がほかほかになりました」
「そう。ならよかった」
「来年も一緒にいられますか?」
「あなたが私と一緒にいたいと願うなら」
「ありがとうございます」
まだ自らの正体を何ひとつ明かせていない。
それでも、この場での笑顔に嘘はなかった。
事件を解決して、陽和を護りながら暮らしていきたい。
もしも本当にサンタクロースという存在がいるならと、雪降る空を眺めながら星に願った。
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クリスマスまでにあげるつもりが、間に合いませんでした…。申し訳ありません。
「私がもらっていいんですか…?」
「勿論。そのために用意したのだから」
嬉しそうに包みを開ける陽和を見つめながら、リーゼはただ願った。
このまま長く平穏が続きますようにと。
「本と花の種、あと…小箱ですか?」
「それはオルゴール。箱の底の裏側のネジを回してみて」
言われたとおりにすると、きらきらした音楽が流れ出した。
「ありがとうございます。とっても綺麗な音がするんですね」
「気に入ってもらえたならよかった」
「あ、あの…私のも、受け取ってもらえますか?」
「用意してくれていたの?」
「はい。リリーさんに教えてもらったんです」
リースだけでなく、マフラーまで編んでくれているとは思っていなかった。
わくわくした様子の陽和にリーゼは微笑む。
「ありがとう。大切にする」
「喜んでもらえてよかったです」
「汚してしまってはいけないから、先にしまってくる」
「私もそうします」
部屋に戻ったところで、森に何者かが侵入した気配を感じとった。
リーゼは臨戦態勢で様子を見に行こうとしたが、玄関の方でばちばちと音がする。
「……緑の贄の力?」
元々生贄として育てられた陽和の力は膨大で、魔除けの意味を持つリースにも無意識のうちに植物の生命の息吹が活性化されていたらしい。
うっすら結界のようなものが視えたリーゼは静かに持っていた武器を下ろす。
そもそもこんな奥まで辿り着けるのは道を知っているリリーだけだ。
森に入った程度なら無傷で出ていっただろう。
「…私が護らなくては」
陽和は無邪気にクロウとじゃれあっている。
握りしめていたブローチをポケットに入れ、リーゼは部屋を後にした。
「おまたせ」
「あ、いえ…」
「どうかした?」
迷っている様子だった陽和は顔をあげ、リーゼに問いかける。
「あ、あの…今日、楽しかったですか?」
「勿論」
「私に、気を遣っていませんか…?」
陽和が申し訳なさそうにしているのを見て、リーゼはそっと頬に触れる。
「あなたがいてくれたから今年は楽しかった」
「本当ですか?」
「いつもはクロウとふたりだったから、こんなふうに豪華な食事を楽しんだこともなかった。
でも、今年はあなたが頑張ってくれたからいい時間を過ごせた。ありがとう」
陽和の表情がぱっと明るくなり、今夜1番の笑顔で答える。
「私も楽しかったです。初めてのクリスマスでしたが、こんなに楽しいものだなんて知りませんでした。心がほかほかになりました」
「そう。ならよかった」
「来年も一緒にいられますか?」
「あなたが私と一緒にいたいと願うなら」
「ありがとうございます」
まだ自らの正体を何ひとつ明かせていない。
それでも、この場での笑顔に嘘はなかった。
事件を解決して、陽和を護りながら暮らしていきたい。
もしも本当にサンタクロースという存在がいるならと、雪降る空を眺めながら星に願った。
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クリスマスまでにあげるつもりが、間に合いませんでした…。申し訳ありません。
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