1,859 / 1,909
物語の欠片
聖夜とストロベリー(バニスト)※GL注意
しおりを挟む
「朝倉さん、25日って何か予定ある?」
唐突にクラスメイトに声をかけられた奏は困惑した。
何故かいつも同じクラスメイトの男子に話しかけられ、やたらくっついてこられるのだ。
イケメンでモテているらしい彼が近づいてくる理由は何なのかさっぱり分からない。
「ごめん。僕、その日はもう約束があるんだ」
「それなら近くで空いている日は?今日とか」
「ないかな。ごめんね」
女子生徒たちのギラギラした視線を感じ取り、急いでその場を離れようとする。
それでも腕を掴まれそうになったので、奏は思いきり振り払ってしまった。
「ごめん。いきなり人に触られるの苦手なんだ」
「俺の方こそごめんね」
「僕、これから用事があるからもう行くね」
男子生徒の方を振り返らず、奏は小走りでその場を後にした。
女子生徒たちがひそひそ話していることなんて気にならない。
そんなことより早くその場を去りたかった。
「部長、みんな集まりました」
「遅くなってごめんね。それじゃあ、これから部会をはじめます」
放送部部長としての務めを果たし、そのまま靴箱まで向かう。
奏の靴箱には手紙が2通入っていた。
そのうち、差出人が書かれていない方から開けてみる。
「痛っ……」
鋭い針が指に突き刺さり、中の手紙には『私たちの王子に近づくな』と書かれている。
「……僕から近づいたことなんて1度もないよ」
灰暗い気持ちを抱えたまま、奏はもう1通の手紙の封を切る。
そこには待ち望んでいた内容が書かれていた。
『今日は先に帰れそうだから、料理を作って待ってるね』
「今から帰るよ」
その手紙に口づけて真っ直ぐ家に帰…ろうとして少しだけ寄り道する。
それから少し歩いて扉を開けた瞬間、ふわりと美味しそうなにおいが漂ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
清香は合鍵を渡されてからというもの、ほとんど毎日顔を出すようになっていた。
今夜はふたりきりでイブを過ごそうと前々から約束していたが、突然部会になり帰りが遅くなってしまったのだ。
「…ねえ奏」
「どうかした?」
「何かあったの?」
奏の変化に気づかない清香ではない。
酷く疲れた顔をしているのを見逃さなかった。
「特に何もないよ」
「そう。それなら…」
清香は考えた末、エプロン姿のまま奏に満面の笑みを向けた。
「ご飯にする?お風呂にする?それとも、私?」
「え……」
「こういう事を言うんじゃないの?」
あまりに唐突な言葉に奏は笑ってしまった。
そんな様子を見た清香は少し安堵する。
「漫画の世界だけだと思ってたけど、言われるとちょっとどきどきする。
僕が選ぶのはひとつしかないんだけどね」
奏は清香の手を引いてソファーに倒れこむ。
清香が立ちあがろうとしたのを引き止め、奏はそのまま膝の上に頭をのせた。
「…やっぱり疲れてるでしょ」
「ごめん。流石にちょっと疲れた。もうちょっとだけこのままでいさせて」
奏の頭を撫でながら、清香はもう一方の手で絆創膏が巻かれた指を撫でる。
「これが理由?」
「うん。詳しいことはあんまり言いたくないんだけど、それが1番疲れた理由」
「お疲れ様」
恋人が滅多に見せない姿にときめきながら、言われたとおりしばらくそのままの体勢でいる。
少し時間が流れたところで奏が体を起こした。
「ありがとう。すごく元気が出たよ。お礼はちゃんと用意してる」
「これ、ケーキ?駅前の、行列ができてるお店の?」
「予約しておいたんだ。ご飯の後一緒に食べよう」
「うん!」
お嬢様モードを使わない清香を独り占めできる…そんなことを考えながら奏は苦笑した。
「どうして笑ってるの?」
「今年も清香といられて幸せだなって…。今日もお疲れ様。お嬢様モード、大変だったでしょ?」
「お疲れ様。たしかに大変だけど、今はふたりきりで楽しいから頑張ってよかったって思ってる」
それからふたりで食事をして、プレゼントを交換して、夜ふかしして…そして、同じ布団に入る。
「奏、手を繋いでもいい?」
「勿論。おやすみ清香」
「おやすみ」
こうして、恋人同士のクリスマスイブは幕を閉じる。
クリスマスもその先も、できるだけふたりで過ごそうと約束したのだ。
奏はすやすやと寝息をたてる清香の頬にそっとキスをする。
嫌な手紙のことなんて忘れて、ふたりきりの楽しい未来を想像しながら目を閉じた。
──その翌朝からお互いの腕にシンプルなデザインの時計がはめられていたのは、また別の話。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クリスマスで綴ってみました。
唐突にクラスメイトに声をかけられた奏は困惑した。
何故かいつも同じクラスメイトの男子に話しかけられ、やたらくっついてこられるのだ。
イケメンでモテているらしい彼が近づいてくる理由は何なのかさっぱり分からない。
「ごめん。僕、その日はもう約束があるんだ」
「それなら近くで空いている日は?今日とか」
「ないかな。ごめんね」
女子生徒たちのギラギラした視線を感じ取り、急いでその場を離れようとする。
それでも腕を掴まれそうになったので、奏は思いきり振り払ってしまった。
「ごめん。いきなり人に触られるの苦手なんだ」
「俺の方こそごめんね」
「僕、これから用事があるからもう行くね」
男子生徒の方を振り返らず、奏は小走りでその場を後にした。
女子生徒たちがひそひそ話していることなんて気にならない。
そんなことより早くその場を去りたかった。
「部長、みんな集まりました」
「遅くなってごめんね。それじゃあ、これから部会をはじめます」
放送部部長としての務めを果たし、そのまま靴箱まで向かう。
奏の靴箱には手紙が2通入っていた。
そのうち、差出人が書かれていない方から開けてみる。
「痛っ……」
鋭い針が指に突き刺さり、中の手紙には『私たちの王子に近づくな』と書かれている。
「……僕から近づいたことなんて1度もないよ」
灰暗い気持ちを抱えたまま、奏はもう1通の手紙の封を切る。
そこには待ち望んでいた内容が書かれていた。
『今日は先に帰れそうだから、料理を作って待ってるね』
「今から帰るよ」
その手紙に口づけて真っ直ぐ家に帰…ろうとして少しだけ寄り道する。
それから少し歩いて扉を開けた瞬間、ふわりと美味しそうなにおいが漂ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
清香は合鍵を渡されてからというもの、ほとんど毎日顔を出すようになっていた。
今夜はふたりきりでイブを過ごそうと前々から約束していたが、突然部会になり帰りが遅くなってしまったのだ。
「…ねえ奏」
「どうかした?」
「何かあったの?」
奏の変化に気づかない清香ではない。
酷く疲れた顔をしているのを見逃さなかった。
「特に何もないよ」
「そう。それなら…」
清香は考えた末、エプロン姿のまま奏に満面の笑みを向けた。
「ご飯にする?お風呂にする?それとも、私?」
「え……」
「こういう事を言うんじゃないの?」
あまりに唐突な言葉に奏は笑ってしまった。
そんな様子を見た清香は少し安堵する。
「漫画の世界だけだと思ってたけど、言われるとちょっとどきどきする。
僕が選ぶのはひとつしかないんだけどね」
奏は清香の手を引いてソファーに倒れこむ。
清香が立ちあがろうとしたのを引き止め、奏はそのまま膝の上に頭をのせた。
「…やっぱり疲れてるでしょ」
「ごめん。流石にちょっと疲れた。もうちょっとだけこのままでいさせて」
奏の頭を撫でながら、清香はもう一方の手で絆創膏が巻かれた指を撫でる。
「これが理由?」
「うん。詳しいことはあんまり言いたくないんだけど、それが1番疲れた理由」
「お疲れ様」
恋人が滅多に見せない姿にときめきながら、言われたとおりしばらくそのままの体勢でいる。
少し時間が流れたところで奏が体を起こした。
「ありがとう。すごく元気が出たよ。お礼はちゃんと用意してる」
「これ、ケーキ?駅前の、行列ができてるお店の?」
「予約しておいたんだ。ご飯の後一緒に食べよう」
「うん!」
お嬢様モードを使わない清香を独り占めできる…そんなことを考えながら奏は苦笑した。
「どうして笑ってるの?」
「今年も清香といられて幸せだなって…。今日もお疲れ様。お嬢様モード、大変だったでしょ?」
「お疲れ様。たしかに大変だけど、今はふたりきりで楽しいから頑張ってよかったって思ってる」
それからふたりで食事をして、プレゼントを交換して、夜ふかしして…そして、同じ布団に入る。
「奏、手を繋いでもいい?」
「勿論。おやすみ清香」
「おやすみ」
こうして、恋人同士のクリスマスイブは幕を閉じる。
クリスマスもその先も、できるだけふたりで過ごそうと約束したのだ。
奏はすやすやと寝息をたてる清香の頬にそっとキスをする。
嫌な手紙のことなんて忘れて、ふたりきりの楽しい未来を想像しながら目を閉じた。
──その翌朝からお互いの腕にシンプルなデザインの時計がはめられていたのは、また別の話。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クリスマスで綴ってみました。
0
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
会社員の青年と清掃員の老婆の超越した愛
MisakiNonagase
恋愛
二十六歳のレンが働くオフィスビルには、清掃員として七十歳のカズコも従事している。カズコは愛嬌のある笑顔と真面目な仕事ぶりで誰からも好かれていた。ある日の仕事帰りにレンがよく行く立ち飲み屋に入ると、カズコもいた。清掃員の青い作業服姿しか見たことのなかったレンは、ごく普通の装いだったがカズコの姿が輝いて見えた。それから少しづつ話すようになり、二人は年の差を越えて恋を育んでいくストーリーです。不倫は情事かもしれないが、この二人には情状という言葉がふさわしい。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる