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物語の欠片
聖夜とストロベリー(バニスト)※GL注意
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「朝倉さん、25日って何か予定ある?」
唐突にクラスメイトに声をかけられた奏は困惑した。
何故かいつも同じクラスメイトの男子に話しかけられ、やたらくっついてこられるのだ。
イケメンでモテているらしい彼が近づいてくる理由は何なのかさっぱり分からない。
「ごめん。僕、その日はもう約束があるんだ」
「それなら近くで空いている日は?今日とか」
「ないかな。ごめんね」
女子生徒たちのギラギラした視線を感じ取り、急いでその場を離れようとする。
それでも腕を掴まれそうになったので、奏は思いきり振り払ってしまった。
「ごめん。いきなり人に触られるの苦手なんだ」
「俺の方こそごめんね」
「僕、これから用事があるからもう行くね」
男子生徒の方を振り返らず、奏は小走りでその場を後にした。
女子生徒たちがひそひそ話していることなんて気にならない。
そんなことより早くその場を去りたかった。
「部長、みんな集まりました」
「遅くなってごめんね。それじゃあ、これから部会をはじめます」
放送部部長としての務めを果たし、そのまま靴箱まで向かう。
奏の靴箱には手紙が2通入っていた。
そのうち、差出人が書かれていない方から開けてみる。
「痛っ……」
鋭い針が指に突き刺さり、中の手紙には『私たちの王子に近づくな』と書かれている。
「……僕から近づいたことなんて1度もないよ」
灰暗い気持ちを抱えたまま、奏はもう1通の手紙の封を切る。
そこには待ち望んでいた内容が書かれていた。
『今日は先に帰れそうだから、料理を作って待ってるね』
「今から帰るよ」
その手紙に口づけて真っ直ぐ家に帰…ろうとして少しだけ寄り道する。
それから少し歩いて扉を開けた瞬間、ふわりと美味しそうなにおいが漂ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
清香は合鍵を渡されてからというもの、ほとんど毎日顔を出すようになっていた。
今夜はふたりきりでイブを過ごそうと前々から約束していたが、突然部会になり帰りが遅くなってしまったのだ。
「…ねえ奏」
「どうかした?」
「何かあったの?」
奏の変化に気づかない清香ではない。
酷く疲れた顔をしているのを見逃さなかった。
「特に何もないよ」
「そう。それなら…」
清香は考えた末、エプロン姿のまま奏に満面の笑みを向けた。
「ご飯にする?お風呂にする?それとも、私?」
「え……」
「こういう事を言うんじゃないの?」
あまりに唐突な言葉に奏は笑ってしまった。
そんな様子を見た清香は少し安堵する。
「漫画の世界だけだと思ってたけど、言われるとちょっとどきどきする。
僕が選ぶのはひとつしかないんだけどね」
奏は清香の手を引いてソファーに倒れこむ。
清香が立ちあがろうとしたのを引き止め、奏はそのまま膝の上に頭をのせた。
「…やっぱり疲れてるでしょ」
「ごめん。流石にちょっと疲れた。もうちょっとだけこのままでいさせて」
奏の頭を撫でながら、清香はもう一方の手で絆創膏が巻かれた指を撫でる。
「これが理由?」
「うん。詳しいことはあんまり言いたくないんだけど、それが1番疲れた理由」
「お疲れ様」
恋人が滅多に見せない姿にときめきながら、言われたとおりしばらくそのままの体勢でいる。
少し時間が流れたところで奏が体を起こした。
「ありがとう。すごく元気が出たよ。お礼はちゃんと用意してる」
「これ、ケーキ?駅前の、行列ができてるお店の?」
「予約しておいたんだ。ご飯の後一緒に食べよう」
「うん!」
お嬢様モードを使わない清香を独り占めできる…そんなことを考えながら奏は苦笑した。
「どうして笑ってるの?」
「今年も清香といられて幸せだなって…。今日もお疲れ様。お嬢様モード、大変だったでしょ?」
「お疲れ様。たしかに大変だけど、今はふたりきりで楽しいから頑張ってよかったって思ってる」
それからふたりで食事をして、プレゼントを交換して、夜ふかしして…そして、同じ布団に入る。
「奏、手を繋いでもいい?」
「勿論。おやすみ清香」
「おやすみ」
こうして、恋人同士のクリスマスイブは幕を閉じる。
クリスマスもその先も、できるだけふたりで過ごそうと約束したのだ。
奏はすやすやと寝息をたてる清香の頬にそっとキスをする。
嫌な手紙のことなんて忘れて、ふたりきりの楽しい未来を想像しながら目を閉じた。
──その翌朝からお互いの腕にシンプルなデザインの時計がはめられていたのは、また別の話。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クリスマスで綴ってみました。
唐突にクラスメイトに声をかけられた奏は困惑した。
何故かいつも同じクラスメイトの男子に話しかけられ、やたらくっついてこられるのだ。
イケメンでモテているらしい彼が近づいてくる理由は何なのかさっぱり分からない。
「ごめん。僕、その日はもう約束があるんだ」
「それなら近くで空いている日は?今日とか」
「ないかな。ごめんね」
女子生徒たちのギラギラした視線を感じ取り、急いでその場を離れようとする。
それでも腕を掴まれそうになったので、奏は思いきり振り払ってしまった。
「ごめん。いきなり人に触られるの苦手なんだ」
「俺の方こそごめんね」
「僕、これから用事があるからもう行くね」
男子生徒の方を振り返らず、奏は小走りでその場を後にした。
女子生徒たちがひそひそ話していることなんて気にならない。
そんなことより早くその場を去りたかった。
「部長、みんな集まりました」
「遅くなってごめんね。それじゃあ、これから部会をはじめます」
放送部部長としての務めを果たし、そのまま靴箱まで向かう。
奏の靴箱には手紙が2通入っていた。
そのうち、差出人が書かれていない方から開けてみる。
「痛っ……」
鋭い針が指に突き刺さり、中の手紙には『私たちの王子に近づくな』と書かれている。
「……僕から近づいたことなんて1度もないよ」
灰暗い気持ちを抱えたまま、奏はもう1通の手紙の封を切る。
そこには待ち望んでいた内容が書かれていた。
『今日は先に帰れそうだから、料理を作って待ってるね』
「今から帰るよ」
その手紙に口づけて真っ直ぐ家に帰…ろうとして少しだけ寄り道する。
それから少し歩いて扉を開けた瞬間、ふわりと美味しそうなにおいが漂ってきた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
清香は合鍵を渡されてからというもの、ほとんど毎日顔を出すようになっていた。
今夜はふたりきりでイブを過ごそうと前々から約束していたが、突然部会になり帰りが遅くなってしまったのだ。
「…ねえ奏」
「どうかした?」
「何かあったの?」
奏の変化に気づかない清香ではない。
酷く疲れた顔をしているのを見逃さなかった。
「特に何もないよ」
「そう。それなら…」
清香は考えた末、エプロン姿のまま奏に満面の笑みを向けた。
「ご飯にする?お風呂にする?それとも、私?」
「え……」
「こういう事を言うんじゃないの?」
あまりに唐突な言葉に奏は笑ってしまった。
そんな様子を見た清香は少し安堵する。
「漫画の世界だけだと思ってたけど、言われるとちょっとどきどきする。
僕が選ぶのはひとつしかないんだけどね」
奏は清香の手を引いてソファーに倒れこむ。
清香が立ちあがろうとしたのを引き止め、奏はそのまま膝の上に頭をのせた。
「…やっぱり疲れてるでしょ」
「ごめん。流石にちょっと疲れた。もうちょっとだけこのままでいさせて」
奏の頭を撫でながら、清香はもう一方の手で絆創膏が巻かれた指を撫でる。
「これが理由?」
「うん。詳しいことはあんまり言いたくないんだけど、それが1番疲れた理由」
「お疲れ様」
恋人が滅多に見せない姿にときめきながら、言われたとおりしばらくそのままの体勢でいる。
少し時間が流れたところで奏が体を起こした。
「ありがとう。すごく元気が出たよ。お礼はちゃんと用意してる」
「これ、ケーキ?駅前の、行列ができてるお店の?」
「予約しておいたんだ。ご飯の後一緒に食べよう」
「うん!」
お嬢様モードを使わない清香を独り占めできる…そんなことを考えながら奏は苦笑した。
「どうして笑ってるの?」
「今年も清香といられて幸せだなって…。今日もお疲れ様。お嬢様モード、大変だったでしょ?」
「お疲れ様。たしかに大変だけど、今はふたりきりで楽しいから頑張ってよかったって思ってる」
それからふたりで食事をして、プレゼントを交換して、夜ふかしして…そして、同じ布団に入る。
「奏、手を繋いでもいい?」
「勿論。おやすみ清香」
「おやすみ」
こうして、恋人同士のクリスマスイブは幕を閉じる。
クリスマスもその先も、できるだけふたりで過ごそうと約束したのだ。
奏はすやすやと寝息をたてる清香の頬にそっとキスをする。
嫌な手紙のことなんて忘れて、ふたりきりの楽しい未来を想像しながら目を閉じた。
──その翌朝からお互いの腕にシンプルなデザインの時計がはめられていたのは、また別の話。
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クリスマスで綴ってみました。
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