物置小屋

１人向け・other

最初で最後の贈り物(彼との約束)

こんばんは。今日も来たの？
僕はただ、この場所が好きだから毎日来てるだけだよ。星が綺麗だし、読書の邪魔もされない。
君はどうして毎日こんな廃墟まで来てるの？…言いたくないなら無理にとは言わないけど。
賑やかな場所ってあんまり得意じゃないんだ。
だけど、君と過ごせる時間は幸せだったよ。
…なんでそんな顔するの？実は僕、そろそろここに来られる時間が無くなりそうなんだ。
最近ちょっとばたばたしてきたし、そろそろやりたいことができたから。
…君の笑顔、もっと見ていたかった。
いや、なんでもない。それより、今日もご飯抜くつもり？そういうのよくないよ。
ほら、僕のお弁当あげるから一緒に食べよう。
た、たまたまふたつ持ってただけ。お礼なんていいから、早く食べて。
どう？美味しい？それならよかった。
僕はあんまりこういうものに興味がないから、味付けとか見た目とか…とにかく自信がない。
だけど、最後に君の笑顔が見られてよかった。
…ごめん、もう時間だ。流れ星、沢山流れてるね。
それを見ているうちに、僕はもう行くよ。
明日検診なんでしょ？大丈夫、君の悪いものは全部僕が持っていくから。
僕のこと、本当にただの人間だと思ってたんだね。…いいよ、もう最後になるだろうから教えてあげる。
僕は、年に1度人間に贈り物を届ける存在…の、子孫。
サンタクロース、だっけ？本当はそんな名前じゃなかったはずなんだけど、まあそのへんは置いておいて…。
君の体調不良は消えて元気に走れる体になるのに、嬉しくないの？
知ってたよ、君が病弱で悩んでたことくらい。
初めて会ったとき、血を吐くくらい咳きこんでたでしょ？
頼むだけ頼んでおいていらなくなったらすぐ忘れていく人間なんて、どうなってもいいって思ってた。
そう思ってた、はずなのに…。
君はいつも僕と話をしてくれた。できるだけ笑って、痛いのも我慢して…。
苦しくて泣いてたことがあるのも知ってる。
できることが増えたら、僕以外の人たちともきっと仲良くなれるよ。
そうすれば、いつかは忘れられる。
…本当なら、元気になった君と一緒に色々な場所に行ってみたかった。
もっと沢山、一緒に過ごしたかった…なんてね。
そんなに悲しいなら、約束しておく？もしも君が僕のことを誰にも話さず、次の冬も忘れずにいられたら…そのときはまた会えるかもしれない。
かもしれないってだけだけどね。
もうそろそろ行くよ。明日になればきっと体調がよくなってるはずだから、今夜はゆっくり休んで。
…それじゃあまた。いつか会えるといいけどね。
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少し素直じゃないサンタクロースは、彼女に降りかかる災厄全てを持ち去ることにしました。
会えるかどうかは、次の冬まで分かりません。