物置小屋

１人向け・慰め系

Passion leaves(視える人シリーズです)

こんばんは。ここは紅葉も綺麗に見えるんですね。
ああ、えっと...俺が見ていたのはこっちなんです。
もうすぐ咲きそうだなって思って、毎日見に来ていました。やっと咲いてよかった...。
どうして、ですか。この花には色々な思い出があって、好きだからだと思います。
ごめんなさい、俺、人と話すのはあんまり得意じゃなくて...。
あなたもなんですか？無視、ですか。
...そこにいるのに、まるでいないかのように振る舞われてしまうのは辛いですよね。
あなたは沢山頑張ってきたけど、乗り越えられそうにないことがある。...違いますか？やっぱり...。
あなたに会いたいと話している人に会ったんです。
どこへ行けば会えるのか、ずっと待ち続けていたと話していました。
今夜も近くにいると思うんですが...会いませんでしたか？
あなたが1番会いたいと思っているであろう人物です。
この季節には、大切な人と過ごした思い出があるそうです。
...まさかあなたみたいな人がいるなんて思っていませんでしたけど。
いえ、なんでもありません。
ナンパとか、そういうので話しかけたわけではありません。
人を待っているんですよね？...あなたは、自分がしたことを本当に覚えていないんですね。
この時期になると、彼は必ずやってくる...彼女の為に。
あなたは、人の命を消したんです。
あなたが会いたがっている人は、あなたにとっての恋人。...ただし、それはあなたが勝手に思いこんでいるだけですが。
彼のことも、血で染まったその手で傷つけるつもりですか？
残念ながら、それは恐らく不可能です。
本当に覚えていないんですね。...あなたが無視されるのは、誰にも見えていないから。
もう死んでいるんです。
そういえば、あなたに会いたがっている人の話をしていませんでしたね。
...その日、あなたが命を奪った相手ですよ。
彼女は命懸けで、最期の瞬間一緒にこのあたりにあったコンクリートに倒れこんだんです。
その結果、打ち所が悪かったあなたも命を落としました。
もし本当に彼のことを想っているなら...少しでも彼女に対して申し訳ないという気持ちがあるなら、もうやめましょう。
...！待ってくださ...遅かった。
これで、あなたに頼まれたことは一応終わりましたけど...相手の方に対する憎しみで悪霊になりかけていますよね。
俺には、無理矢理成仏させるような何かはありません。
ただ、あなたは彼にもう1度会いたかった。それで、ストーカーの悪霊から護りたかったんですよね。
俺にはそう思える相手がいないので、心から尊敬します。
どうかそのまま、彼に対する想いを忘れないでください。
俺が出会ってきた死者たちは、本当に想っている相手のことを忘れなければ悪霊にはなりませんでしたから。
それじゃあ、俺はこれで失礼します。


...あの人、結局どうしただろう。
成仏したか、それとも...。どうか彼女がいい形で彼の側にいられますように。
...命を懸けて護った相手なんだから。
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
彼岸花の花言葉は『絶望』『全てへの諦め』など暗めのものが多いのですが、今回は『情熱』の意味で綴ってみました。
『Automn leaves』が紅葉、『Passion』が情熱...上手く組み合わさりませんでした。