物置小屋

黒蝶

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1人向け・other

次があるなら...(童話モチーフ・心中ものです)

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...もう逃げられないね。
気にしなくていいんだ、君は何も悪くない。
ただ車椅子を使っているというだけなんだから。
僕がもっと早く聞き取れていたらよかったのに...ごめん。
左側じゃなかったら、ちゃんと聞こえていたのかもしれない。
僕は、君が好きだよ。ううん、愛してる。
左耳が聞こえない僕を、君だけは人間として扱ってくれた。
それだけで充分だったんだ。
だけどまさか、こんなふうに追われることになるなんてね。
覚えてる?この海は、君と初めてデートにきた場所だ。
そうそう、君が作ってくれたサンドイッチを一緒に食べたね。
あの日もこんなふうに月が綺麗だった。
ふたりで見られてとても嬉しかったよ。
...え、君も楽しいって思ってくれてたの?嬉しいな。
もうすぐ追っ手がきてしまいそうだ。
ねえ。もしも、僕たちが普通の家に生まれていたら...夫婦になることも赦されたのかな?
泣かないで、君のせいじゃないから。
僕がいけないんだ。
...婚約させられそうになった君を連れ去った。
それは大罪でしょ?
嬉しかったなんて、変なことを言うんだね。
でも僕は後悔してないよ。
君があの男性のことを愛しているなら諦めようと思っていた。
だけど、そういうわけじゃなかったんでしょ?
泣いているのを見て、放っておけなかった。
だから...僕は、君が側にいてくれるなら何も怖くないよ。
これからここに飛びこむのも、間違いなく生きてはいられないであろうことも。
君は怖くないの?今ならまだ引き返せるよ。
...そっか、もう覚悟を決めてるんだね。
僕を選んでくれて...僕を好きになってくれてありがとう。
君のことを幸せにできなくてごめんね。
これからか...そうだね。
きっと、ふたりだけの世界に行ける。
そうなったら何がしたい?
いいよ、君のことはどこまでだって運ぶから。
君の車椅子を押すのは僕だけがいい。
一緒に花を摘んで、ご飯を食べて。
夜はおしゃべりしながら眠りにつく。
全部ありふれたことだけど、それだけでいいんだ。
君が隣にいてくれれば、あとは何も要らない。
...まずい、本当に時間がないみたいだ。
本当にいいんだね?...よし、それじゃあふたりだけの世界を目指して出発だ。
大丈夫だよ、君のことはこうやって抱きしめていくから。
勿論、この車椅子もね。
ありがとう。僕も愛してるよ。
...たとえ次があったとしても、こうしてふたりで添い遂げよう。
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久しぶりの童話モチーフです。
左耳が聞こえないロミオと、車椅子のジュリエット...ふたりはきっと幸せになったことでしょう。
『ロミオとジュリエット』...小さい頃は哀しい終わりだと思っていました。
ですが今は、【世界で1番大切な人と添い遂げられた物語】として読んでいます。
ふたりは永遠想いあうことができる...そんな関係がいいと思えるのは何故でしょうか。
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