物置小屋

物語の欠片

『ブラックスワン』

あるところに、見た目が大変美しいスワンという少女がいた。
「1+1=3である」
スワンははいいえと答えた。
「違うだろ！」
「3なんだよ！」
「俺たちが3といえば3なんだよ！」
痛い、辛い、悲しい。
スワンが感じたのは、束縛。
「ごめんなさい」
スワンには謝ることしかできない。
前向きに考えれば、『1人と1人で力を合わせると3以上の力が発揮される』ということ。
だが、この世界では意味が違った。
「個性は捨てろ」
「みんなと同じになれ」
「おまえが悪いんだ」
「私が、悪いです」
みんなと同じ量になるまで。
みんなと同じ時間、やらなくてはならない。
体調不良は個人の責任なので、休むこともできない。
真面目なスワンはどんどん心を蝕まれていく。
「では質問です。1+1=3になる」
「...はい」
スワンの意志はとうとう折れた。
みんなと同じ。
みんなと同じに言っていれば、嫌なことをされずにすむ。
ある日、スワンは屋上まできていた。




ーーここから堕ちれば、会社からも世界からも解放される。

そうしてスワンは飛び降りた。
...自らが空を飛べることさえ忘れてしまっていた。
スワンは見た目だけでなく心まで綺麗な子だった。
だが...実際はどんどん黒くなっていくのに堪えていただけだったのだ。
毎日の残業に、執拗な嫌がらせ。
人格も否定され、そのうえ本当は入院しなければならないほどの状態だったのに...。
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過去に書いたものなのですが、バッドエンドになってしまいました...。
白鳥は綺麗なイメージがあるのでそこから考えましたが、『1+1=3』と上司が言えばなるなんて、絶対にないです。
私には3以上に映ることもありますが、それは個人によると思います。
でも、こんなところでもなかなか辞められないのが現状...。
羽があることさえ、最期には忘れてしまうのです。