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秋久ルート
第58話
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茂みに隠れていると、ずかずかと足音がいくつも近づいてくる。
「…ディアボロ」
「本日はお越しいただき誠にありがとうございます。カルナとの話がまとまりましたので、それをお伝えしようと参りました」
「カルナと話、ねえ…。内容は?」
そんなことは絶対にあり得ない。
カルナさんは嘘を吐いていなかった。
あれだけ仲間の人たちと大切に思いあっているのに、その人たちを傷つけた相手を許すとは思えない。
「こちらをご覧いただきたいのです」
中から出てきたのは、真っ白な粉だった。
それが何か危険なものであることは分かる。
「カルナはこの手のものを嫌う。そんなものを使ったり売りさばくような真似はしない」
「果たしてそうでしょうか?あなたが勝手に思っているだけなのではありませんか?」
秋久さんが怒っているのは分かるけれど、キャンディーを使おうとして誰かに止められた。
「あなたはそのまま待っていて。私に関することならなんとかするから」
その声は聞き覚えがあるもので、その事実が私を安心させた。
「…ねえ、私の名前を語ったのはどいつ?というより、私の可愛い社員に手を出したのはあなたかしら?」
「随分早い登場だな」
「連絡ありがとう守護神」
カルナさんはお茶目に笑って、相手に銃を突きつける。
「さあ、名乗らないなら全員肉塊にするしかないのだけど…その覚悟はおありなのかしら?」
「あなたは薬物に手を染めたでしょう?そのくせして一体何をほざいているんですか?」
「ごめんなさい、何の話?」
カルナさんは本当に知らないみたいだけれど、ディアボロの人にも焦った様子はない。
ただひとり、秋久さんだけが笑っていた。
「何が可笑しい?」
「いいぜ、教えてやる。カルナが飲んでいるのは持病の薬であって、そんな物騒なものじゃない。
それから、それを処方しているのはうちの医師だから違法薬物ってことはない。…つまりおまえは騙されたんだ」
秋久さんの声に嘘はなくて、ディアボロの人たちが勘違いしていただけなんだと納得した。
「そんなはずはない!だってアポロンが…」
そこまで話したところでしまったという顔をしても、秋久さんたちの前ではもう遅い。
「そうか、アポロンか。いいことを聞いた」
「アポロン…面倒なものが出てくるみたいね。まあ、私は社員や家族に手を出されなければそれでいいんだけど」
これで終わると思っていたのに、何人かが近づいてくる気配がする。
今度こそキャンディーを思いきり上に投げた。
「なんだこの煙は…ごほごほ!」
「私は帰るわ。後はカルテットに任せる」
「了解」
秋久さんは真っ直ぐ私のところまで走ってきてくれて、そのままふたりでその場から離れた。
「教えてくれたおかげで助かった。ありがとな」
「いえ…」
冬真さんの家の前まで辿り着いたところで、秋久さんは少し申し訳なさそうに言った。
「部屋で待っててくれ。冬真たちにも報告しておかないといけないからな」
「…ディアボロ」
「本日はお越しいただき誠にありがとうございます。カルナとの話がまとまりましたので、それをお伝えしようと参りました」
「カルナと話、ねえ…。内容は?」
そんなことは絶対にあり得ない。
カルナさんは嘘を吐いていなかった。
あれだけ仲間の人たちと大切に思いあっているのに、その人たちを傷つけた相手を許すとは思えない。
「こちらをご覧いただきたいのです」
中から出てきたのは、真っ白な粉だった。
それが何か危険なものであることは分かる。
「カルナはこの手のものを嫌う。そんなものを使ったり売りさばくような真似はしない」
「果たしてそうでしょうか?あなたが勝手に思っているだけなのではありませんか?」
秋久さんが怒っているのは分かるけれど、キャンディーを使おうとして誰かに止められた。
「あなたはそのまま待っていて。私に関することならなんとかするから」
その声は聞き覚えがあるもので、その事実が私を安心させた。
「…ねえ、私の名前を語ったのはどいつ?というより、私の可愛い社員に手を出したのはあなたかしら?」
「随分早い登場だな」
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カルナさんはお茶目に笑って、相手に銃を突きつける。
「さあ、名乗らないなら全員肉塊にするしかないのだけど…その覚悟はおありなのかしら?」
「あなたは薬物に手を染めたでしょう?そのくせして一体何をほざいているんですか?」
「ごめんなさい、何の話?」
カルナさんは本当に知らないみたいだけれど、ディアボロの人にも焦った様子はない。
ただひとり、秋久さんだけが笑っていた。
「何が可笑しい?」
「いいぜ、教えてやる。カルナが飲んでいるのは持病の薬であって、そんな物騒なものじゃない。
それから、それを処方しているのはうちの医師だから違法薬物ってことはない。…つまりおまえは騙されたんだ」
秋久さんの声に嘘はなくて、ディアボロの人たちが勘違いしていただけなんだと納得した。
「そんなはずはない!だってアポロンが…」
そこまで話したところでしまったという顔をしても、秋久さんたちの前ではもう遅い。
「そうか、アポロンか。いいことを聞いた」
「アポロン…面倒なものが出てくるみたいね。まあ、私は社員や家族に手を出されなければそれでいいんだけど」
これで終わると思っていたのに、何人かが近づいてくる気配がする。
今度こそキャンディーを思いきり上に投げた。
「なんだこの煙は…ごほごほ!」
「私は帰るわ。後はカルテットに任せる」
「了解」
秋久さんは真っ直ぐ私のところまで走ってきてくれて、そのままふたりでその場から離れた。
「教えてくれたおかげで助かった。ありがとな」
「いえ…」
冬真さんの家の前まで辿り着いたところで、秋久さんは少し申し訳なさそうに言った。
「部屋で待っててくれ。冬真たちにも報告しておかないといけないからな」
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