裏世界の蕀姫

黒蝶

文字の大きさ
上 下
359 / 385
冬真ルート

第43話

しおりを挟む
翌朝、冬真の姿が見当たらない。
あれから放心状態で部屋に戻った私は、また何もできなくて後悔していた。
彼の力になりたいのに、私にはそれさえまともにできない。
あの人たちが言っていたとおり、私は役立たずなんだ。
「どうしていつも上手くいかないんでしょうか…」
指先に熱が集まるのを感じて、慌てて手のひらを見つめる。
そこからは少しずつ蕀さんが伸びてきていて、少し怖くなった。
止まってほしいけれど止まらない。
そのとき、近くに真っ白な翼があるのが目に入る。
「スノウ、今は近づかないでください…」
私が誰にも迷惑をかけないようにする方法なんて、これしかない。
こんなふうになったときの引っ込め方をよく知らない私の体を蔦が覆っていく。
お部屋に傷をつけなければ迷惑をかけることもないだろう…頭の片隅に思い浮かべながら、そのまま目を閉じた。
「…何、してるの」
少し離れた場所から声が聞こえる。
何が起きているのか分からないままもう1度目を閉じようとすると、また誰かに話しかけられた。
「このままじゃまずい。──たら、……する」
よく聞こえない。何を話しているのか全部を理解することはできなかった。
「…中にいるの?」
冬真の声だと分かった瞬間、外側の蕀さんが少し崩れた。
「少し待ってて」
そう話した冬真の気配が遠ざかったかと思うと、何かが切られていく音がする。
ぼんやり前を向くと、視界の端に彼がうつった。
「やっと見つけた」
「どうして…」
「当たり前でしょ。僕は君にいなくなってほしくないから。さっきのままだったら死んでたよ」
その目には強い意思が宿っていて、かけられる言葉はいつも以上に真剣だった。
「僕は誰にも死んでほしくない。その中には君も含まれてる。あいつとのことは君が悩む必要ない。あくまで僕の問題だから。
…それより、君が思い悩んで辛さや苦しみを隠すことの方が嫌だ。これはあくまで僕のエゴだけど、君のことをちゃんと救いたいんだ」
私にできることなんて何もないのに、それでも一緒にいていいのだろうか。
この人の隣にいる未来を思い描くことは、赦される…?
色々な考えで頭がぐちゃぐちゃになっていると、突然冬真に抱きしめられた。
「ごめん。僕はやっぱり不器用で、人と上手く関われなくて…結局君を傷つけた。
だけど、護りたいのは本当なんだ。もう目の前で誰かが死んでしまうのを見たくない」
彼の手は震えていて、私はただ抱きしめ返す。
「ごめんなさい。どうしてこうなったのか、私にも分からないんです…。蕀さんたちが沢山現れるのはどうしてなんでしょうか」
「それはこれから知るしかない。…僕も一緒に探す」
「ありがとうございます」
冬香さんとのことで私に何ができるかは分からない。
ただ、どうにか仲良しに戻れないかどうしても考えてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ハーフ&ハーフ

黒蝶
恋愛
ある雨の日、野崎七海が助けたのは中津木葉という男。 そんな木葉から告げられたのは、哀しい事実。 「僕には関わらない方がいいよ。...半分とはいえ、人間じゃないから」 ...それから2ヶ月、ふたりは恋人として生きていく選択をしていた。 これは、極々普通?な少女と人間とヴァンパイアのハーフである少年の物語。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

後宮の棘

香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。 ☆完結しました☆ スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。 第13回ファンタジー大賞特別賞受賞! ありがとうございました!!

【完結】試される愛の果て

野村にれ
恋愛
一つの爵位の差も大きいとされるデュラート王国。 スノー・レリリス伯爵令嬢は、恵まれた家庭環境とは言えず、 8歳の頃から家族と離れて、祖父母と暮らしていた。 8年後、学園に入学しなくてはならず、生家に戻ることになった。 その後、思いがけない相手から婚約を申し込まれることになるが、 それは喜ぶべき縁談ではなかった。 断ることなったはずが、相手と関わることによって、 知りたくもない思惑が明らかになっていく。

推しであるヤンデレ当て馬令息さまを救うつもりで執事と相談していますが、なぜか私が幸せになっています。

石河 翠
恋愛
伯爵令嬢ミランダは、前世日本人だった転生者。彼女は階段から落ちたことで、自分がかつてドはまりしていたWeb小説の世界に転生したことに気がついた。 そこで彼女は、前世の推しである侯爵令息エドワードの幸せのために動くことを決意する。好きな相手に振られ、ヤンデレ闇落ちする姿を見たくなかったのだ。 そんなミランダを支えるのは、スパダリな執事グウィン。暴走しがちなミランダを制御しながら行動してくれる頼れるイケメンだ。 ある日ミランダは推しが本命を射止めたことを知る。推しが幸せになれたのなら、自分の将来はどうなってもいいと言わんばかりの態度のミランダはグウィンに問い詰められ……。 いつも全力、一生懸命なヒロインと、密かに彼女を囲い込むヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:31360863)をお借りしております。

憑かれるのはついてくる女子高生と幽霊

水瀬真奈美
恋愛
家出じゃないもん。これは社会勉強! 家出人少女は、雪降る故郷を離れて東京へと向かった。東京では行く当てなんてないだから、どうしようか? 車内ではとりあえずSNSのツイツイを立ち上げては、安全そうなフォロワーを探すことに……。

処理中です...