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冬真ルート
第36.5話
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彼女がここまで追いかけて僕に荷物を届けてくれたのはよかったものの、いくつか問題が発生した。
「あの、私、」
「帰らないで」
「東雲って意外とがつがつアプローチかけるんだな」
「…それってどういう意味?」
この隠れ家を使う以上、牛久大輔という存在から逃げられない。
普段からからかわれたりすることは多いけど、悪い奴ではないはずだ。
「彼女がいるなら言ってくれればいいのに…。別のところで作業すればいいんだし」
「そういうのじゃないから。ただ忘れ物を持ってきてくれただけ」
適当に医学書を並べるものの、中身はほとんど覚えている。
表向きは一般の学生を装ってきた。
人との距離は置いているのに、何故か牛久大輔だけは離れてくれない。
今もこうして通称秘密基地に集まっている。
「あ、あの、やっぱり私、」
「それは駄目」
「東雲、おまえやっぱり優しいんだな」
「とにかく、ひとりで出歩くのはやめてほしい」
もうひとつの問題は、彼女がラムネ屋に見つかってしまったという事実だ。
牛久のことは大学以外で狙うとは考えづらいけど、もしあの組織が親子を逃した日の情報を共有しているとしたら狙われてしまう。
彼女をひとりにして蕀の力が人前で発動したりしたら大変なことになる。
「ご、ごめんなさい」
「別に謝らなくていい。もう少ししたら帰る予定だから、それまで待ってほしいだけ」
もしひとりで帰らせて襲われたりしたら大変なことになる。
「そういえば、教授の話受けるのか?」
「やるわけないでしょ。死んでも嫌だって断った」
「もし会ったら追い返しておく」
「…そうしてもらえると助かる。それじゃあまた」
彼女の手を傷つけないように握ってその場を離れる。
怪我はしてなさそうだから安心したけど、かなり回り道しないと鉢合わせるかもしれない。
「ご迷惑、でしたよね」
「忘れ物をした僕が悪い。届けに来てくれて助かった」
「本当ですか?」
「こんなことで嘘吐いてどうするの?」
こんな言い方しかできないけど、彼女が不安そうな顔をしていたらもやもやする。
らしくないと思いつつ、つい気になって彼女を目で追ってしまう。
…もし今この瞬間を牛久に見られていたら、またからかわれたのかもしれない。
「帰ったら、ご飯を作ります」
「ふたりでやれば早いでしょ?今日は多分秋久さんも来るし、それなら急いで仕上げた方がいいんじゃない?」
「そうかもしれません」
僕があんな言い方をしても怒らないでいてくれるのは彼女の過去に関係しているのかもしれないけど、彼女は優しい人だと思う。
玄関に入ると、テーブルの上に見覚えのない花があることに気づいた。
「これ、君の部屋で育ててるの?」
「はい。水だけは替えるようにしているのですが、それ以外は何も…」
「…そう」
考え過ぎだろうか。
その花はよく知るあいつが警告の意味で送ってくることがあるものだ。
偶然同じ石楠花なのか、或いはあいつが彼女に接触したのか。
現時点ではどちらとも言えない。
「あの、私、」
「帰らないで」
「東雲って意外とがつがつアプローチかけるんだな」
「…それってどういう意味?」
この隠れ家を使う以上、牛久大輔という存在から逃げられない。
普段からからかわれたりすることは多いけど、悪い奴ではないはずだ。
「彼女がいるなら言ってくれればいいのに…。別のところで作業すればいいんだし」
「そういうのじゃないから。ただ忘れ物を持ってきてくれただけ」
適当に医学書を並べるものの、中身はほとんど覚えている。
表向きは一般の学生を装ってきた。
人との距離は置いているのに、何故か牛久大輔だけは離れてくれない。
今もこうして通称秘密基地に集まっている。
「あ、あの、やっぱり私、」
「それは駄目」
「東雲、おまえやっぱり優しいんだな」
「とにかく、ひとりで出歩くのはやめてほしい」
もうひとつの問題は、彼女がラムネ屋に見つかってしまったという事実だ。
牛久のことは大学以外で狙うとは考えづらいけど、もしあの組織が親子を逃した日の情報を共有しているとしたら狙われてしまう。
彼女をひとりにして蕀の力が人前で発動したりしたら大変なことになる。
「ご、ごめんなさい」
「別に謝らなくていい。もう少ししたら帰る予定だから、それまで待ってほしいだけ」
もしひとりで帰らせて襲われたりしたら大変なことになる。
「そういえば、教授の話受けるのか?」
「やるわけないでしょ。死んでも嫌だって断った」
「もし会ったら追い返しておく」
「…そうしてもらえると助かる。それじゃあまた」
彼女の手を傷つけないように握ってその場を離れる。
怪我はしてなさそうだから安心したけど、かなり回り道しないと鉢合わせるかもしれない。
「ご迷惑、でしたよね」
「忘れ物をした僕が悪い。届けに来てくれて助かった」
「本当ですか?」
「こんなことで嘘吐いてどうするの?」
こんな言い方しかできないけど、彼女が不安そうな顔をしていたらもやもやする。
らしくないと思いつつ、つい気になって彼女を目で追ってしまう。
…もし今この瞬間を牛久に見られていたら、またからかわれたのかもしれない。
「帰ったら、ご飯を作ります」
「ふたりでやれば早いでしょ?今日は多分秋久さんも来るし、それなら急いで仕上げた方がいいんじゃない?」
「そうかもしれません」
僕があんな言い方をしても怒らないでいてくれるのは彼女の過去に関係しているのかもしれないけど、彼女は優しい人だと思う。
玄関に入ると、テーブルの上に見覚えのない花があることに気づいた。
「これ、君の部屋で育ててるの?」
「はい。水だけは替えるようにしているのですが、それ以外は何も…」
「…そう」
考え過ぎだろうか。
その花はよく知るあいつが警告の意味で送ってくることがあるものだ。
偶然同じ石楠花なのか、或いはあいつが彼女に接触したのか。
現時点ではどちらとも言えない。
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