349 / 385
冬真ルート
第34話
しおりを挟む
「…もうできたの?」
「は、はい」
「いただきます」
作ったことはあるけれど、食べたことがない料理というものは沢山ある。
今日はオムライスにしてみたものの、どうするのが正解か分からないまま作った。
「僕、こういうふわふわとろとろな卵のオムライスが好きなんだ。…美味しい」
「ありがとうございます」
食べてもらえなかったらと心配になっていたけれど、美味しいと言ってもらえてほっとした。
その直後、冬真は何故か急いで窓を開ける。
真っ白な翼がばさばさと動いていた。
「おかえり、スノウ」
ほう、とひと鳴きしたスノウの足には、また手紙がくくりつけられている。
「ご苦労さま。ごめん、少しだけ仕事する」
「は、はい」
「見られたくないものはやらないからいてもいいけど、煩いと思ったら言って」
「わ、分かりました」
そう話した彼は、かたかたと機械をいじりはじめる。
こうなると私にできることはないので、結局一旦部屋に戻ることにした。
花の水を換えて、そのままベッドに倒れこむ。
まだやりたいことがあるのに、起きあがる元気がなかった。
「…スノウ?」
何かが飛んでくる気配がして名前を呼ぶ。
すると、スノウは近くにとまって羽を動かしていた。
「足の怪我はもう大丈夫ですか?」
返ってきた声は大丈夫だと言っている気がして、ほっとする。
何かをやろうと思っていたはずなのに、すっかり忘れてしまった。
「このお花、とても綺麗ですね。私は好きです」
スノウに話しかけながら、勢いよく体を起こす。
冬真が無理をしていないか心配になった。
ずっと働きづめではいつか体を壊してしまう。
休んでもらえるようにお願いしようと部屋を出ると、彼はとても複雑な表情を浮かべていた。
「あ、あの…飲み物、淹れましょうか?」
「紅茶がいい」
「分かりました」
キッチンに立つと、またかたかたという音が鳴り響く。
失敗しないように気をつけていたつもりだったのに、うっかり手の甲にお湯をかけてしまった。
「あ…」
ポットだけでも受け止めようと思ったのに、床にお湯をばら撒いてしまう。
どうしようと慌てていると、冬真が駆け寄ってきた。
「そのまま動かないで」
「え、あ、」
「大丈夫だから少し落ち着いて」
冷たい水がかかったのに吃驚して、思わず手をひっこめそうになる。
「ごめん。冷たいと思うけど少しだけそのままでいて」
「分かり、ました」
やっぱり痛いと感じたけれど、こんなふうに手当てしてもらえるのはありがたい。
後ろを振り向こうとした瞬間、思った以上に冬真との距離が近いことに気づく。
今まで意識したことなんてなかったのに、そう考えると心が熱い。
どうしてこんなにぽかぽかしているのか、自分でも分からなかった。
…いつかそれを知ることができるだろうか。
「は、はい」
「いただきます」
作ったことはあるけれど、食べたことがない料理というものは沢山ある。
今日はオムライスにしてみたものの、どうするのが正解か分からないまま作った。
「僕、こういうふわふわとろとろな卵のオムライスが好きなんだ。…美味しい」
「ありがとうございます」
食べてもらえなかったらと心配になっていたけれど、美味しいと言ってもらえてほっとした。
その直後、冬真は何故か急いで窓を開ける。
真っ白な翼がばさばさと動いていた。
「おかえり、スノウ」
ほう、とひと鳴きしたスノウの足には、また手紙がくくりつけられている。
「ご苦労さま。ごめん、少しだけ仕事する」
「は、はい」
「見られたくないものはやらないからいてもいいけど、煩いと思ったら言って」
「わ、分かりました」
そう話した彼は、かたかたと機械をいじりはじめる。
こうなると私にできることはないので、結局一旦部屋に戻ることにした。
花の水を換えて、そのままベッドに倒れこむ。
まだやりたいことがあるのに、起きあがる元気がなかった。
「…スノウ?」
何かが飛んでくる気配がして名前を呼ぶ。
すると、スノウは近くにとまって羽を動かしていた。
「足の怪我はもう大丈夫ですか?」
返ってきた声は大丈夫だと言っている気がして、ほっとする。
何かをやろうと思っていたはずなのに、すっかり忘れてしまった。
「このお花、とても綺麗ですね。私は好きです」
スノウに話しかけながら、勢いよく体を起こす。
冬真が無理をしていないか心配になった。
ずっと働きづめではいつか体を壊してしまう。
休んでもらえるようにお願いしようと部屋を出ると、彼はとても複雑な表情を浮かべていた。
「あ、あの…飲み物、淹れましょうか?」
「紅茶がいい」
「分かりました」
キッチンに立つと、またかたかたという音が鳴り響く。
失敗しないように気をつけていたつもりだったのに、うっかり手の甲にお湯をかけてしまった。
「あ…」
ポットだけでも受け止めようと思ったのに、床にお湯をばら撒いてしまう。
どうしようと慌てていると、冬真が駆け寄ってきた。
「そのまま動かないで」
「え、あ、」
「大丈夫だから少し落ち着いて」
冷たい水がかかったのに吃驚して、思わず手をひっこめそうになる。
「ごめん。冷たいと思うけど少しだけそのままでいて」
「分かり、ました」
やっぱり痛いと感じたけれど、こんなふうに手当てしてもらえるのはありがたい。
後ろを振り向こうとした瞬間、思った以上に冬真との距離が近いことに気づく。
今まで意識したことなんてなかったのに、そう考えると心が熱い。
どうしてこんなにぽかぽかしているのか、自分でも分からなかった。
…いつかそれを知ることができるだろうか。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
あなたにはもう何も奪わせない
gacchi
恋愛
幼い時に誘拐されそうになった侯爵令嬢ジュリアは、知らない男の子に助けられた。
いつか会えたらお礼を言おうと思っていたが、学園に入る年になってもその男の子は見つからなかった。
もしかしたら伯爵令息ブリュノがそうかもしれないと思ったが、確認できないまま三学年になり仮婚約の儀式が始まる。
仮婚約の相手になったらブリュノに聞けるかもしれないと期待していたジュリアだが、その立場は伯爵令嬢のアマンダに奪われてしまう。
アマンダには初めて会った時から執着されていたが、まさか仮婚約まで奪われてしまうとは思わなかった。
同窓会に行ったら、知らない人がとなりに座っていました
菱沼あゆ
キャラ文芸
「同窓会っていうか、クラス会なのに、知らない人が隣にいる……」
クラス会に参加しためぐるは、隣に座ったイケメンにまったく覚えがなく、動揺していた。
だが、みんなは彼と楽しそうに話している。
いや、この人、誰なんですか――っ!?
スランプ中の天才棋士VS元天才パティシエール。
「へえー、同窓会で再会したのがはじまりなの?」
「いや、そこで、初めて出会ったんですよ」
「同窓会なのに……?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる