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冬真ルート
第14話
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「スノウ、お疲れ様」
冬真さんは肩に止まらせていたスノウにそう言葉をかけて、籠に入るよう話していた。
「君ももう寝た方がいい。眠れないようなら取り敢えず部屋で横になってて」
「ありがとうございます」
話をするときあたふたしないように気をつけているつもりだけれど、おかしな態度になっていないか心配になる。
「…朝ご飯」
「え?」
「朝ご飯、何がいい?」
そんなふうに訊かれるのは初めてで、どう答えたらいいのか分からない。
「自分が好きなものを言ってくれれば基本的には作れると思うんだけど、何かない?」
「それじゃあ、冬真さんが好きなものを」
「僕の?」
「ごめんなさい。無理矢理作ってほしいわけではなくて…」
「別に無理とかじゃなくて、そんなふうに返ってきたの3回目だったから驚いただけ。
あと4時間くらいしたら起こすから、それまでは取り敢えず休んでて」
「分かりました」
他の2回を言った人のはどんな人なんだろう。
もしかすると人たちなのかもしれないけれど、冬真さんが用意してくれるものはどんなものも美味しいから楽しみだ。
それから4時間ぴったり経った瞬間、扉が小さくたたかれる。
「起きてたんだ。というか、寝てないの?」
「いえ。少し寝ました」
「……そう。できてるから食べに来て」
「は、はい」
部屋を出ると、ふたり分の食器が用意されていた。
冬真さんとご飯を食べるのは久しぶりな気がして、なんだか心がざわざわしている。
「焼き魚、どうやって作ったんですか?」
「普通にフライパンで焼いただけだけど、そんなに美味しい?」
「じゅわじゅわしています」
「バター焼きにしたからだと思う」
私が食べたことがある魚はもっとぱさぱさしていて、こんなに身がふっくらしていなかった。
それが普通だと思っていたのに、ここまで美味しくなるなんて予想外だ。
「冬真さんは、魔法使いみたいですね」
「そんなすごいことをした覚えないんだけど…まあ、いいか。食事が終わったら包帯換えるから、そのまま待ってて」
「先に食器を片づけないと…」
「それは僕がやるから君は座ってて」
ぴしゃりと言われた言葉ひとつひとつに優しさがつめこまれていて、また心がほかほかになった。
「あ、あの…」
「今日は休みだから朝もゆっくりできる」
「お仕事が、ですか?」
「仕事というか、大学」
大学というのはどんな場所だろう。
もしかすると、特殊なお仕事の方が集まったりするのだろうか。
「何を想像したかはっきりとは分からないけど、多分違うから」
「え…?」
「僕は普段、どこにでもいる、」
「大学生だからな、冬真は」
頭の上から声がして顔をあげると、秋久さんがなんだか楽しそうに笑っている。
「秋久さん、いつの間に…。時間はまだだよね?」
「それはそうだが、念の為早く来たんだ。悪いな、食事を邪魔して」
「い、いえ」
いつからいたんだろう…なんて考えながら、冬真さんの方を見る。
すると、彼は一瞬でエプロンをつけていた。
「僕は食べ終わったし、もうちょっと待ってて。すぐにはじめられるようにしておくから」
冬真さんは肩に止まらせていたスノウにそう言葉をかけて、籠に入るよう話していた。
「君ももう寝た方がいい。眠れないようなら取り敢えず部屋で横になってて」
「ありがとうございます」
話をするときあたふたしないように気をつけているつもりだけれど、おかしな態度になっていないか心配になる。
「…朝ご飯」
「え?」
「朝ご飯、何がいい?」
そんなふうに訊かれるのは初めてで、どう答えたらいいのか分からない。
「自分が好きなものを言ってくれれば基本的には作れると思うんだけど、何かない?」
「それじゃあ、冬真さんが好きなものを」
「僕の?」
「ごめんなさい。無理矢理作ってほしいわけではなくて…」
「別に無理とかじゃなくて、そんなふうに返ってきたの3回目だったから驚いただけ。
あと4時間くらいしたら起こすから、それまでは取り敢えず休んでて」
「分かりました」
他の2回を言った人のはどんな人なんだろう。
もしかすると人たちなのかもしれないけれど、冬真さんが用意してくれるものはどんなものも美味しいから楽しみだ。
それから4時間ぴったり経った瞬間、扉が小さくたたかれる。
「起きてたんだ。というか、寝てないの?」
「いえ。少し寝ました」
「……そう。できてるから食べに来て」
「は、はい」
部屋を出ると、ふたり分の食器が用意されていた。
冬真さんとご飯を食べるのは久しぶりな気がして、なんだか心がざわざわしている。
「焼き魚、どうやって作ったんですか?」
「普通にフライパンで焼いただけだけど、そんなに美味しい?」
「じゅわじゅわしています」
「バター焼きにしたからだと思う」
私が食べたことがある魚はもっとぱさぱさしていて、こんなに身がふっくらしていなかった。
それが普通だと思っていたのに、ここまで美味しくなるなんて予想外だ。
「冬真さんは、魔法使いみたいですね」
「そんなすごいことをした覚えないんだけど…まあ、いいか。食事が終わったら包帯換えるから、そのまま待ってて」
「先に食器を片づけないと…」
「それは僕がやるから君は座ってて」
ぴしゃりと言われた言葉ひとつひとつに優しさがつめこまれていて、また心がほかほかになった。
「あ、あの…」
「今日は休みだから朝もゆっくりできる」
「お仕事が、ですか?」
「仕事というか、大学」
大学というのはどんな場所だろう。
もしかすると、特殊なお仕事の方が集まったりするのだろうか。
「何を想像したかはっきりとは分からないけど、多分違うから」
「え…?」
「僕は普段、どこにでもいる、」
「大学生だからな、冬真は」
頭の上から声がして顔をあげると、秋久さんがなんだか楽しそうに笑っている。
「秋久さん、いつの間に…。時間はまだだよね?」
「それはそうだが、念の為早く来たんだ。悪いな、食事を邪魔して」
「い、いえ」
いつからいたんだろう…なんて考えながら、冬真さんの方を見る。
すると、彼は一瞬でエプロンをつけていた。
「僕は食べ終わったし、もうちょっと待ってて。すぐにはじめられるようにしておくから」
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