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冬真ルート
第6話
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目を開けると、そこには見覚えのある天井が広がっていた。
「…?」
「目が覚めた?」
「あの、すみません、私…」
さっきまで外にいたはずなのに、どうしてベッドで寝ているんだろう。
まだぼんやりしている頭で考えようとしたけれど、すぐ近くにいた冬真さんの不安そうな表情が気になった。
「君は倒れたんだ」
「え…?」
「息苦しそうにしてたけど、今は大丈夫みたいだね」
「…ごめんなさい」
迷惑をかけないようにしようと決めたばかりだったのに、結局お世話になりっぱなしだ。
「今回はちょっと怒ってる」
「ご、ごめんなさ、」
「少しならと言っておきながら、僕は君のことをちゃんと見てなかった」
「え…?」
思いきり大きな声で怒られると思っていたのに、冬真さんはどうしてか俯いてしまっている。
「だから、僕も悪い」
「そんなことありません。私が、迷惑をかけただけで、」
「体調が悪いのを知っていたのに、僕は何も気をつけてなかった。それは悪いことだよ」
「だけど、また助けられました。ありがとうございます、冬真さん」
とにかく元気になってほしくて、本心を思いきって言葉にする。
私独りだったら、きっとこんなふうにすぐ起きあがれるような状態ではなかったと思う。
「…こんなときにお礼を言うなんて、君は変わってるね」
「そう、でしょうか?」
「少なくとも、僕はそう思った。お腹空いたでしょ?何か食べたいものはある?」
「おまかせしてもいいですか?」
「分かった」
私には、白米に卵料理、サラダに時々食べられた焼き魚の味しか分からない。
お菓子の生地だけなら食べたことがあるけれど、味見だけで完成しているものを口にしたこともなかった。
「それじゃあ、今日はこれ」
「これって、パスタですか?」
「苦手だった?」
「いえ。ありがとうございます。…いただきます」
箸を使おうとすると、銀食器が出てくる。
使ったことがないそれを前に、ただ戸惑うことしかできない。
すると、冬真さんがフォークを持って説明してくれた。
「…こうやってくるくる回すと、上手く食べられる」
「や、やってみます…」
初めての感触になんだか少し緊張しながら、一口食べてみる。
「もう少し時間をかけたかったけど、あんまり煮詰めすぎても駄目だと思ったから」
「このお料理は、冬真さんが作ってくださっているんですね」
「…好きじゃない?」
「その、料理が上手なんだなって思ったんです。私はきっと、こんなふうには作れていませんでしたから…」
「…そう」
いつも叱られてばかりで、こんなふうに誰かと囲む食事もなくて…だから今、胸が温かい。
一緒に食べてもらえるのも嬉しくて、ゆっくり少しずつ味わった。
「…?」
「目が覚めた?」
「あの、すみません、私…」
さっきまで外にいたはずなのに、どうしてベッドで寝ているんだろう。
まだぼんやりしている頭で考えようとしたけれど、すぐ近くにいた冬真さんの不安そうな表情が気になった。
「君は倒れたんだ」
「え…?」
「息苦しそうにしてたけど、今は大丈夫みたいだね」
「…ごめんなさい」
迷惑をかけないようにしようと決めたばかりだったのに、結局お世話になりっぱなしだ。
「今回はちょっと怒ってる」
「ご、ごめんなさ、」
「少しならと言っておきながら、僕は君のことをちゃんと見てなかった」
「え…?」
思いきり大きな声で怒られると思っていたのに、冬真さんはどうしてか俯いてしまっている。
「だから、僕も悪い」
「そんなことありません。私が、迷惑をかけただけで、」
「体調が悪いのを知っていたのに、僕は何も気をつけてなかった。それは悪いことだよ」
「だけど、また助けられました。ありがとうございます、冬真さん」
とにかく元気になってほしくて、本心を思いきって言葉にする。
私独りだったら、きっとこんなふうにすぐ起きあがれるような状態ではなかったと思う。
「…こんなときにお礼を言うなんて、君は変わってるね」
「そう、でしょうか?」
「少なくとも、僕はそう思った。お腹空いたでしょ?何か食べたいものはある?」
「おまかせしてもいいですか?」
「分かった」
私には、白米に卵料理、サラダに時々食べられた焼き魚の味しか分からない。
お菓子の生地だけなら食べたことがあるけれど、味見だけで完成しているものを口にしたこともなかった。
「それじゃあ、今日はこれ」
「これって、パスタですか?」
「苦手だった?」
「いえ。ありがとうございます。…いただきます」
箸を使おうとすると、銀食器が出てくる。
使ったことがないそれを前に、ただ戸惑うことしかできない。
すると、冬真さんがフォークを持って説明してくれた。
「…こうやってくるくる回すと、上手く食べられる」
「や、やってみます…」
初めての感触になんだか少し緊張しながら、一口食べてみる。
「もう少し時間をかけたかったけど、あんまり煮詰めすぎても駄目だと思ったから」
「このお料理は、冬真さんが作ってくださっているんですね」
「…好きじゃない?」
「その、料理が上手なんだなって思ったんです。私はきっと、こんなふうには作れていませんでしたから…」
「…そう」
いつも叱られてばかりで、こんなふうに誰かと囲む食事もなくて…だから今、胸が温かい。
一緒に食べてもらえるのも嬉しくて、ゆっくり少しずつ味わった。
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