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春人ルート
第87話
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「本当ですか?」
「俺は嘘は言わない」
春人の笑顔を見ていると本当に安心する。
彼の喜ぶ顔が見られてよかった。
もしかすると、私が知らないところで何かあったのかもしれない。
…なんだか少し、落ち着かない様子だったから。
「それじゃあ、こっちも味見してみてもらえませんか…?」
残り物だという刺し身を使わせてもらい、塩胡椒で味つけして焼いただけの単純な一品だ。
もしかしたら残飯と思われてしまうかもしれないと不安に思っていたけれど、春人は文句ひとつ言わずに食べてくれた。
「…ここまで美味しくなるものなんだね」
「ありがとうございます」
「いつも作ってたの?」
「え?あ、はい、まあ…」
あの場所では、あの人たちが残飯として捨てたものを食事にすることしか許されなかった。
はじめは生のまま食べてお腹を壊したので、それから手軽に美味しく食べられる方法を探した結果がそれだ。
ある意味苦いものとも言えるけれど、それがあるから私は今ここに立っている。
「…やっぱり苦労してきたんだね」
「苦労度合いは、春人たちに比べれば全然…」
「度合いは問題じゃないと思う。心が傷つけられれば、辛いって声なき悲鳴をあげる。
…本当の問題は、それを誰にも伝えられず、独りでなんとかするしかない事象があることだ」
春人の表情は真剣そのもので、思わず聞き入ってしまう。
淡々と告げられる言葉ひとつひとつに間違いなく重みがあった。
「…はじめはこんなふうに考えられなかったから、他人からの優しさなんて全部まやかしに感じてたこともあるけどね」
「そうなんですか?」
「俺にはこの子がいれば充分だと思ってた。また失ってしまうなら、はじめから優しさなんてない方がいいと思ったんだ」
春人はラビの頭を撫でながら、ゆっくり私の方に視線を向ける。
「…ただ、君との暮らしは悪くないと思えた」
「本当、ですか?」
「俺は嘘は言わない」
「そう思ってもらえたなら嬉しいです」
錆びついた歯車が少しずつ動き出すように、鼓動が高鳴っていくのを感じる。
じっと見つめ返していると、勢いよく抱きしめられた。
「ど、どうしたんですか…?」
「……だ」
「え?」
「こ、転んだだけ…」
やっぱり歩きづらいのか、それとも怪我が痛むのか。
どっちにしても心配だ。
「…しばらくこのまま支えますね」
「靴が脱げたみたいだから、履き直す間だけ待って」
「はい」
申し訳なさそうな声が耳元で聞こえて、心臓がずっとうるさく動いているような気がする。
どうか春人に聞こえてしまわないようにと願いながら、俯いて赤くなっているであろう顔を隠した。
「ごめん。ありがとう」
「い、いえ…。あの、スープのおかわりは如何でしょうか?」
少し声がうわずってしまったものの、なんとか会話することができた。
春人は笑いながらお願いしますと言ってくれて、すぐ準備する。
…もう少しだけこんな時間を過ごしていたいと考えてもいいだろうか。
「俺は嘘は言わない」
春人の笑顔を見ていると本当に安心する。
彼の喜ぶ顔が見られてよかった。
もしかすると、私が知らないところで何かあったのかもしれない。
…なんだか少し、落ち着かない様子だったから。
「それじゃあ、こっちも味見してみてもらえませんか…?」
残り物だという刺し身を使わせてもらい、塩胡椒で味つけして焼いただけの単純な一品だ。
もしかしたら残飯と思われてしまうかもしれないと不安に思っていたけれど、春人は文句ひとつ言わずに食べてくれた。
「…ここまで美味しくなるものなんだね」
「ありがとうございます」
「いつも作ってたの?」
「え?あ、はい、まあ…」
あの場所では、あの人たちが残飯として捨てたものを食事にすることしか許されなかった。
はじめは生のまま食べてお腹を壊したので、それから手軽に美味しく食べられる方法を探した結果がそれだ。
ある意味苦いものとも言えるけれど、それがあるから私は今ここに立っている。
「…やっぱり苦労してきたんだね」
「苦労度合いは、春人たちに比べれば全然…」
「度合いは問題じゃないと思う。心が傷つけられれば、辛いって声なき悲鳴をあげる。
…本当の問題は、それを誰にも伝えられず、独りでなんとかするしかない事象があることだ」
春人の表情は真剣そのもので、思わず聞き入ってしまう。
淡々と告げられる言葉ひとつひとつに間違いなく重みがあった。
「…はじめはこんなふうに考えられなかったから、他人からの優しさなんて全部まやかしに感じてたこともあるけどね」
「そうなんですか?」
「俺にはこの子がいれば充分だと思ってた。また失ってしまうなら、はじめから優しさなんてない方がいいと思ったんだ」
春人はラビの頭を撫でながら、ゆっくり私の方に視線を向ける。
「…ただ、君との暮らしは悪くないと思えた」
「本当、ですか?」
「俺は嘘は言わない」
「そう思ってもらえたなら嬉しいです」
錆びついた歯車が少しずつ動き出すように、鼓動が高鳴っていくのを感じる。
じっと見つめ返していると、勢いよく抱きしめられた。
「ど、どうしたんですか…?」
「……だ」
「え?」
「こ、転んだだけ…」
やっぱり歩きづらいのか、それとも怪我が痛むのか。
どっちにしても心配だ。
「…しばらくこのまま支えますね」
「靴が脱げたみたいだから、履き直す間だけ待って」
「はい」
申し訳なさそうな声が耳元で聞こえて、心臓がずっとうるさく動いているような気がする。
どうか春人に聞こえてしまわないようにと願いながら、俯いて赤くなっているであろう顔を隠した。
「ごめん。ありがとう」
「い、いえ…。あの、スープのおかわりは如何でしょうか?」
少し声がうわずってしまったものの、なんとか会話することができた。
春人は笑いながらお願いしますと言ってくれて、すぐ準備する。
…もう少しだけこんな時間を過ごしていたいと考えてもいいだろうか。
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