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夏彦ルート
第75話
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部屋の扉が勢いよく開かれた音がして、恐る恐るそちらに顔を向ける。
「あ、えっと…」
「ごめんね、月見ちゃん。誰かさんがものすごい速さで押すからこんなことに…」
「夏彦が女々しいこと言うから、つい」
「女々しい…?」
よく分からず首を傾げていると、夏彦の腕の中から真っ白な前足が出てきた。
「ソルト…」
「さっきからずっと膝に乗られちゃってて…珍しいよね、こういうこと」
「そんなに珍しいことなの?」
「俺にはあんまり懐いてないんだよ…」
春人さんと夏彦が話しているのを見ているのを微笑ましく感じていると、勢いよく飛びついてきたソルトを抱きしめる。
「…月見ちゃん、あのね、」
「もしかして…事件、解決してないんですか…?」
「いや、あの後あの場にいた人間は全員捕まえたんだ。ただ、残党がいるかもしれない」
「残党、ですか?」
「簡単に言うと、組織自体を潰すのに時間がかかってるってこと」
夏彦の言葉に春人さんが説明を加えてくれる。
なんとなく今の状況を理解した。
「つまり、ここに誰かがやってくるかもしれないってことですか?」
「いや、それはない。冬真がそんなへまをするとは思えないし、秋久が情報を辿れないようにはしているはずだから、この場所がばれることはないよ。
…ただ、【ハイドランジア】が危ないかもしれない」
あのお店にはあの男の人たちが来たことがある。
それに、あの人たちとは全然関係ない店員さんたちがいるはずだ。
そういえば、今お店はどうなっているんだろう。
「…ハル、ちょっとだけ月見ちゃんとふたりきりにしてくれない?」
「おいで、白猫」
ソルトは恐る恐るといった様子で、春人さんに向かって前足を伸ばす。
それを抱きかかえて、終わったら呼んでとだけ話して部屋を出た。
どうしてふたりきりにしてほしいなんて言ったんだろうと疑問に思っていると、夏彦に勢いよく頭を下げられる。
「ごめん。また月見ちゃんの力を借りることになるかもしれない」
「それは構わないんですけど、その…実は育ちすぎているので」
「もしかして、ベッドの下?」
小さく頷いてみせると、夏彦は少し車椅子ごと下がった。
「…本当にごめんね」
「いえ、大丈夫です。私なんかでも誰かの役に立てるんだって思ったら、やっぱり嬉しいので…」
「私なんかなんて言わないで。俺からしてみれば、月見ちゃんはすごい子だから」
「…少しだけ、蕀さんを出します」
思った以上に育ってしまっている蔦の端を持つと、にょきにょきと伸びはじめる。
「本当に沢山育ってるんだね…。毎日どうやって隠してるの?」
「パイプとパイプの間をくぐらせています」
「そんなこともできるんだ…。他の人たちには伏せたままにしてあるから、あんまり不安がらなくても大丈夫だよ」
「…顔に出てましたか?」
「結構、思いきり」
雑談といえる内容ではないかもしれないけれど、こんなに長く話したのは久しぶりなような気がする。
「あの…具体的に、どんなことをすればいいでしょうか?」
「できれば、この建物の周りについては把握しておいてほしいんだ。
…あいつらの狙いは俺だからね」
「あ、えっと…」
「ごめんね、月見ちゃん。誰かさんがものすごい速さで押すからこんなことに…」
「夏彦が女々しいこと言うから、つい」
「女々しい…?」
よく分からず首を傾げていると、夏彦の腕の中から真っ白な前足が出てきた。
「ソルト…」
「さっきからずっと膝に乗られちゃってて…珍しいよね、こういうこと」
「そんなに珍しいことなの?」
「俺にはあんまり懐いてないんだよ…」
春人さんと夏彦が話しているのを見ているのを微笑ましく感じていると、勢いよく飛びついてきたソルトを抱きしめる。
「…月見ちゃん、あのね、」
「もしかして…事件、解決してないんですか…?」
「いや、あの後あの場にいた人間は全員捕まえたんだ。ただ、残党がいるかもしれない」
「残党、ですか?」
「簡単に言うと、組織自体を潰すのに時間がかかってるってこと」
夏彦の言葉に春人さんが説明を加えてくれる。
なんとなく今の状況を理解した。
「つまり、ここに誰かがやってくるかもしれないってことですか?」
「いや、それはない。冬真がそんなへまをするとは思えないし、秋久が情報を辿れないようにはしているはずだから、この場所がばれることはないよ。
…ただ、【ハイドランジア】が危ないかもしれない」
あのお店にはあの男の人たちが来たことがある。
それに、あの人たちとは全然関係ない店員さんたちがいるはずだ。
そういえば、今お店はどうなっているんだろう。
「…ハル、ちょっとだけ月見ちゃんとふたりきりにしてくれない?」
「おいで、白猫」
ソルトは恐る恐るといった様子で、春人さんに向かって前足を伸ばす。
それを抱きかかえて、終わったら呼んでとだけ話して部屋を出た。
どうしてふたりきりにしてほしいなんて言ったんだろうと疑問に思っていると、夏彦に勢いよく頭を下げられる。
「ごめん。また月見ちゃんの力を借りることになるかもしれない」
「それは構わないんですけど、その…実は育ちすぎているので」
「もしかして、ベッドの下?」
小さく頷いてみせると、夏彦は少し車椅子ごと下がった。
「…本当にごめんね」
「いえ、大丈夫です。私なんかでも誰かの役に立てるんだって思ったら、やっぱり嬉しいので…」
「私なんかなんて言わないで。俺からしてみれば、月見ちゃんはすごい子だから」
「…少しだけ、蕀さんを出します」
思った以上に育ってしまっている蔦の端を持つと、にょきにょきと伸びはじめる。
「本当に沢山育ってるんだね…。毎日どうやって隠してるの?」
「パイプとパイプの間をくぐらせています」
「そんなこともできるんだ…。他の人たちには伏せたままにしてあるから、あんまり不安がらなくても大丈夫だよ」
「…顔に出てましたか?」
「結構、思いきり」
雑談といえる内容ではないかもしれないけれど、こんなに長く話したのは久しぶりなような気がする。
「あの…具体的に、どんなことをすればいいでしょうか?」
「できれば、この建物の周りについては把握しておいてほしいんだ。
…あいつらの狙いは俺だからね」
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