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春人ルート
第75話
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「やっと取り寄せていた部品が揃った。…これならきっと直せる」
春人は本当に嬉しそうに笑っていて、そんな姿を見ると私の心臓はやっぱり壊れてしまうんじゃないかと思うくらい速く動きだす。
「他にできること、ありませんか?」
「俺がいう道具をそっちのテーブルから持ってきてほしい。流石に点滴中に動き回ると冬真に怒られるから」
「わ、分かりました」
片手でできることもあるんだと知ることができた。
もう役に立てないんじゃないかと思っていたけれど、これならなんとかなりそうだ。
「そっちにある大きめの歯車が沢山入ってるものを取ってくれる?」
「はい。これでしょうか?」
「うん。ありがとう」
春人の手元でだんだん歯車が噛み合っていく音がして、それを聞いているだけでも楽しくなった。
「春人さん、ちょっといい?秋久さんが話がしたいって」
「…分かりました」
やっぱり敬語を使うことが多いように見えるけれど、それはお仕事だからなんだろうと理解している。
「よう。悪いな、まだ休んでないといけないときに話を聞きに来て…」
「いえ。僕はもう平気ですから。それで、あいつらの秘密基地に行くつもりですか?」
「行こうと計画はしてる。ただ…そのときの為に少し手を借りたい」
申し訳なさそうにする秋久さんに、春人はずばり言い当てた。
「…だから、キャンディーボックスを作ってほしいと」
「よく分かったな」
「キャンディーボックス…?」
首を傾げていると、秋久さんが丁寧に説明してくれた。
「春人が作る人を殺さない程度の仕掛けができるキャンディーは見たことあるか?」
「あります」
「…あれを大量に詰めこめるうえ、誰ひとり殺すことなく任務を遂行する為に必要になるのがボックスだ。
たしか最大100個だったか」
「そんなに入るんですか?」
相手を転ばせる為に使うものという認識しかなかったけれど、沢山の使い方があると聞いたのを思い出す。
そこにはやっぱり春人の人を殺さない策が入っているんだと思うと、本当にすごい人たちのチームなんだなと少し驚いてしまった。
「今回は俺の部署と夏彦、それから雪乃に手伝ってもらう」
「…成程、雪乃の顔すら覚えていないであろうあいつらに接触してもらおうということですか」
「流石だな。相手は女だからとなめてかかるはずだから、1番怪我人を出さないであろう方法だ」
「僕の出番はないんですね」
春人は直接関わって捕まえたいと思っているのかもしれない。
多分その気持ちを秋久さんは見抜いている。
「悪いが、怪我人を…ましてや顔を知られてる奴を現場作業に関わらせるわけにはいかない」
「…分かりました」
後ろから見ているだけで分かる。
口ではそう言いながら、春人は全く納得していない。
自分だってきちんと逮捕まで関わりたかった…きっとそんな思いがあるのだろう。
そんな彼に、私はどんな言葉をかければいいのか分からなかった。
春人は本当に嬉しそうに笑っていて、そんな姿を見ると私の心臓はやっぱり壊れてしまうんじゃないかと思うくらい速く動きだす。
「他にできること、ありませんか?」
「俺がいう道具をそっちのテーブルから持ってきてほしい。流石に点滴中に動き回ると冬真に怒られるから」
「わ、分かりました」
片手でできることもあるんだと知ることができた。
もう役に立てないんじゃないかと思っていたけれど、これならなんとかなりそうだ。
「そっちにある大きめの歯車が沢山入ってるものを取ってくれる?」
「はい。これでしょうか?」
「うん。ありがとう」
春人の手元でだんだん歯車が噛み合っていく音がして、それを聞いているだけでも楽しくなった。
「春人さん、ちょっといい?秋久さんが話がしたいって」
「…分かりました」
やっぱり敬語を使うことが多いように見えるけれど、それはお仕事だからなんだろうと理解している。
「よう。悪いな、まだ休んでないといけないときに話を聞きに来て…」
「いえ。僕はもう平気ですから。それで、あいつらの秘密基地に行くつもりですか?」
「行こうと計画はしてる。ただ…そのときの為に少し手を借りたい」
申し訳なさそうにする秋久さんに、春人はずばり言い当てた。
「…だから、キャンディーボックスを作ってほしいと」
「よく分かったな」
「キャンディーボックス…?」
首を傾げていると、秋久さんが丁寧に説明してくれた。
「春人が作る人を殺さない程度の仕掛けができるキャンディーは見たことあるか?」
「あります」
「…あれを大量に詰めこめるうえ、誰ひとり殺すことなく任務を遂行する為に必要になるのがボックスだ。
たしか最大100個だったか」
「そんなに入るんですか?」
相手を転ばせる為に使うものという認識しかなかったけれど、沢山の使い方があると聞いたのを思い出す。
そこにはやっぱり春人の人を殺さない策が入っているんだと思うと、本当にすごい人たちのチームなんだなと少し驚いてしまった。
「今回は俺の部署と夏彦、それから雪乃に手伝ってもらう」
「…成程、雪乃の顔すら覚えていないであろうあいつらに接触してもらおうということですか」
「流石だな。相手は女だからとなめてかかるはずだから、1番怪我人を出さないであろう方法だ」
「僕の出番はないんですね」
春人は直接関わって捕まえたいと思っているのかもしれない。
多分その気持ちを秋久さんは見抜いている。
「悪いが、怪我人を…ましてや顔を知られてる奴を現場作業に関わらせるわけにはいかない」
「…分かりました」
後ろから見ているだけで分かる。
口ではそう言いながら、春人は全く納得していない。
自分だってきちんと逮捕まで関わりたかった…きっとそんな思いがあるのだろう。
そんな彼に、私はどんな言葉をかければいいのか分からなかった。
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