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夏彦ルート
第68話
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「大丈夫?」
「すみません…」
夏彦はすっかり体調がよくなった私をまだ気遣ってくれている。
「ねえ、月見ちゃん」
「は、はい」
「ひとつ大仕事があるんだ。それが片づいたら、何かやってみたいこととかない?」
「お、おまかせします」
「おまかせか…じゃあ、それまでに月見ちゃんがやりたいことを探して、なかったら俺がやりたいことをやろう」
「わ、分かりました」
大仕事というのは、あの人たちを捕まえることをさしているのだろう。
頑張りすぎないか心配になりながら、じっと夏彦を見つめる。
「俺は平気だよ。きっと暴走したりもしない」
「…何かあったら言ってくださいね」
どれだけの蔦を出せるかなんて分からないけれど、やれるだけのことはやってみよう。
…待っているばかりではいられない。
「ありがとう。今夜は帰りが遅くなると思うから先に休んでて」
「…はい」
ここで嫌ですなんて言ったら、きっと夏彦を苦しめてしまう。
ソルトを抱きあげて、そのまま後ろ姿を見送る。
「…ごめんね、ソルト」
ソルトにはそのまま毛糸とじゃれあってもらうしかない。
そのことに罪悪感を覚えながら、ただぼんやりとグローブを外して包帯を解く。
「──お願い、蕀さんたち」
指先にぴりっと痛みを感じたけれど、それよりも早く夏彦を追いかけたかった。
一応家の鍵にちょっとした細工はさせてもらったものの、ちゃんと作動してくれるかは分からない。
「…ソルト、もう少しだけ待ってね」
にゃあ、とひと鳴きして側でまったり過ごしはじめる。
猫も察知することがあるんだろうかと考えながら、どこまで伸びたか分からない蔦を一旦切り離す。
それからすぐに包帯を巻き直して、歪になったのを補強する為にグローブで覆った。
「…これで大丈夫。お待たせ、ソルト」
最近春人さんたちのところに行ったりして、ここに帰ってきていなかったから心配なんだろう。
…私も今、夏彦に何かあったらと怖くてたまらない。
「ご飯、食べますか?」
元気よく鳴いたソルトの頭を撫でながら、猫缶を開けてお気に入りの皿に盛りつける。
「楽しそうでよかった…」
ソルトの目を見た途端、つい釘付けになってしまう。
少し青みがかった瞳が綺麗で、何度見てもついうっとりしてしまうのだ。
自分のご飯を作っていると、もう引き返せない工程であることに気づく。
「…量、多かったですね」
いつもの癖でついふたり分の材料を入れてしまったらしく、フライパンの中身が多く見える。
温めなおせば食べられるかもしれないけれど、夜はどんなアレンジをくわえよう…。
そんなとき、小さめの机の上に広がっている書類を偶然見てしまった。
「…?」
そこに書かれてあることを見て、ソルトをケージに入れてできるだけ走る。
【もしも俺が帰ってこられなかったら、そのとき月見ちゃんたちはどうなるんだろう】
そんな不穏な言葉を目にしてしまったら、もう平常心ではいられない。
蕀さんたちに力を借りながら少しずつ後を追った。
「すみません…」
夏彦はすっかり体調がよくなった私をまだ気遣ってくれている。
「ねえ、月見ちゃん」
「は、はい」
「ひとつ大仕事があるんだ。それが片づいたら、何かやってみたいこととかない?」
「お、おまかせします」
「おまかせか…じゃあ、それまでに月見ちゃんがやりたいことを探して、なかったら俺がやりたいことをやろう」
「わ、分かりました」
大仕事というのは、あの人たちを捕まえることをさしているのだろう。
頑張りすぎないか心配になりながら、じっと夏彦を見つめる。
「俺は平気だよ。きっと暴走したりもしない」
「…何かあったら言ってくださいね」
どれだけの蔦を出せるかなんて分からないけれど、やれるだけのことはやってみよう。
…待っているばかりではいられない。
「ありがとう。今夜は帰りが遅くなると思うから先に休んでて」
「…はい」
ここで嫌ですなんて言ったら、きっと夏彦を苦しめてしまう。
ソルトを抱きあげて、そのまま後ろ姿を見送る。
「…ごめんね、ソルト」
ソルトにはそのまま毛糸とじゃれあってもらうしかない。
そのことに罪悪感を覚えながら、ただぼんやりとグローブを外して包帯を解く。
「──お願い、蕀さんたち」
指先にぴりっと痛みを感じたけれど、それよりも早く夏彦を追いかけたかった。
一応家の鍵にちょっとした細工はさせてもらったものの、ちゃんと作動してくれるかは分からない。
「…ソルト、もう少しだけ待ってね」
にゃあ、とひと鳴きして側でまったり過ごしはじめる。
猫も察知することがあるんだろうかと考えながら、どこまで伸びたか分からない蔦を一旦切り離す。
それからすぐに包帯を巻き直して、歪になったのを補強する為にグローブで覆った。
「…これで大丈夫。お待たせ、ソルト」
最近春人さんたちのところに行ったりして、ここに帰ってきていなかったから心配なんだろう。
…私も今、夏彦に何かあったらと怖くてたまらない。
「ご飯、食べますか?」
元気よく鳴いたソルトの頭を撫でながら、猫缶を開けてお気に入りの皿に盛りつける。
「楽しそうでよかった…」
ソルトの目を見た途端、つい釘付けになってしまう。
少し青みがかった瞳が綺麗で、何度見てもついうっとりしてしまうのだ。
自分のご飯を作っていると、もう引き返せない工程であることに気づく。
「…量、多かったですね」
いつもの癖でついふたり分の材料を入れてしまったらしく、フライパンの中身が多く見える。
温めなおせば食べられるかもしれないけれど、夜はどんなアレンジをくわえよう…。
そんなとき、小さめの机の上に広がっている書類を偶然見てしまった。
「…?」
そこに書かれてあることを見て、ソルトをケージに入れてできるだけ走る。
【もしも俺が帰ってこられなかったら、そのとき月見ちゃんたちはどうなるんだろう】
そんな不穏な言葉を目にしてしまったら、もう平常心ではいられない。
蕀さんたちに力を借りながら少しずつ後を追った。
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