51 / 385
春人ルート
第36話
しおりを挟む
読んでいいものなのか分からない。
ただ、中身を見れば私が知らない春人を知ることができるだろうか。
…そう考えると、自然と頁をめくっていた。
《あの人は自殺なんかしない。
任務により命を狙われていたことも熟知していた。護れなかったのは俺の責任だ。あの人に側にいてほしかったのに、どうしてあいつらは追ってきたのか…》
文字はそこで途切れていて、最後に一言だけ書かれていた言葉が心に突き刺さった。
《俺がもっと強ければ…俺のせいだ》
【あの人】というのは、春人にとってとても大切な人だったというのがよく分かる。
「寝てるのかと思ったら、見られちゃったのか」
「……!春人、えっと、その、」
「別に気にしなくていい。書き損じの報告書だし、もうすぐ捜査は終わるから」
その目には時々見る翳りが入っていて、何かしら思っていることがあることを理解する。
「春人を助けてくれた人というのは、【伝説の便利屋】さんなんですか?」
「君は感受性が強い。だから知らない方がいい」
「でも、」
「諦めなくちゃいけないことだってあるんだ」
彼はそう言い放っていたけれど、本心から言っている訳じゃない。
私に何ができるかなんて分からないけれど、護ってもらってばかりでいるのは嫌だ。
「私では、何もできないと思います。ただ、あなたのことを知りたいんです」
「…俺の話なんか聞いても全然楽しくないよ」
「楽しいかどうかじゃなくて、春人についてならどんなことでもいいんです」
怒らせてしまうかもしれない、そう思いながらも言葉を止められなかった。
真っ直ぐ彼を見つめると、小さく息を漏らす。
「それじゃあひとつだけ。…俺のことをハルって呼ぶのは、夏彦の他にもうひとりだけいた。
…それが俺を助けてくれた人だよ」
春人はそれだけ話すと、別の部屋に行ってしまった。
その場所は入らないでほしいと言われている場所で、どんなものがあるのかさえ分からない。
「…やっぱり、怒らせてしまったでしょうか」
ラビとチェリーに話しかけながら、淹れておいたカモミールティーを片づける。
それはすっかりぬるくなってしまっていて、揺れる水面に歪んだ顔だけがうつっていた。
ふたりを連れて部屋に戻ったものの、どうしても気になってしまう。
春人が何を抱えているのか、ひとりでどんなことを考えているのか…さっきの記録の内容の意味についても知らない。
蕀さんたちにお願いすれば今彼がどうしているのかくらいは分かるだろう。
ただ、私はそうしたくなかった。
それにしても、春人が後ろから気配を消して近づいてくるのは癖なのだろうか。
…やっぱり、危ない仕事をしているからなのかもしれない。
ただ、中身を見れば私が知らない春人を知ることができるだろうか。
…そう考えると、自然と頁をめくっていた。
《あの人は自殺なんかしない。
任務により命を狙われていたことも熟知していた。護れなかったのは俺の責任だ。あの人に側にいてほしかったのに、どうしてあいつらは追ってきたのか…》
文字はそこで途切れていて、最後に一言だけ書かれていた言葉が心に突き刺さった。
《俺がもっと強ければ…俺のせいだ》
【あの人】というのは、春人にとってとても大切な人だったというのがよく分かる。
「寝てるのかと思ったら、見られちゃったのか」
「……!春人、えっと、その、」
「別に気にしなくていい。書き損じの報告書だし、もうすぐ捜査は終わるから」
その目には時々見る翳りが入っていて、何かしら思っていることがあることを理解する。
「春人を助けてくれた人というのは、【伝説の便利屋】さんなんですか?」
「君は感受性が強い。だから知らない方がいい」
「でも、」
「諦めなくちゃいけないことだってあるんだ」
彼はそう言い放っていたけれど、本心から言っている訳じゃない。
私に何ができるかなんて分からないけれど、護ってもらってばかりでいるのは嫌だ。
「私では、何もできないと思います。ただ、あなたのことを知りたいんです」
「…俺の話なんか聞いても全然楽しくないよ」
「楽しいかどうかじゃなくて、春人についてならどんなことでもいいんです」
怒らせてしまうかもしれない、そう思いながらも言葉を止められなかった。
真っ直ぐ彼を見つめると、小さく息を漏らす。
「それじゃあひとつだけ。…俺のことをハルって呼ぶのは、夏彦の他にもうひとりだけいた。
…それが俺を助けてくれた人だよ」
春人はそれだけ話すと、別の部屋に行ってしまった。
その場所は入らないでほしいと言われている場所で、どんなものがあるのかさえ分からない。
「…やっぱり、怒らせてしまったでしょうか」
ラビとチェリーに話しかけながら、淹れておいたカモミールティーを片づける。
それはすっかりぬるくなってしまっていて、揺れる水面に歪んだ顔だけがうつっていた。
ふたりを連れて部屋に戻ったものの、どうしても気になってしまう。
春人が何を抱えているのか、ひとりでどんなことを考えているのか…さっきの記録の内容の意味についても知らない。
蕀さんたちにお願いすれば今彼がどうしているのかくらいは分かるだろう。
ただ、私はそうしたくなかった。
それにしても、春人が後ろから気配を消して近づいてくるのは癖なのだろうか。
…やっぱり、危ない仕事をしているからなのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる