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夏彦ルート
第11話
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「おはよう」
「お、おはようございます…」
ご飯を作っていると、いつものように夏彦が起きてくる。
そんな彼と一緒に食べるご飯は独りだった頃よりずっと美味しくて、いつも料理を褒めてもらえるから本当にありがたい。
「ごちそうさまでした。今日も美味しかった…」
「それならよかったです」
「片づけは俺がやるから、月見ちゃんは出掛ける準備してて。
今日から本格的にお仕事をお願いするかもしれないから、裁縫道具も持っておいてね」
「は、はい…」
結局、コサージュは売り物にはせずに1点ものとして持っておいた方がいいと言われた。
売り物にできない訳じゃないから気にしないでほしいと言ってもらえたけれど、私が作ったものでは売れないものだったのだろう。
…気を遣わせてしまって申し訳ない。
「月見ちゃん、これから開店準備をするけど…」
そのとき、こつこつとシャッターがたたかれる音がした。
「月見ちゃん、念のためにそっちに隠れてて。…今開けます!」
開かれたシャッターの先には、見覚えがある短髪の女性が立っていた。
「こんにちは、お邪魔します!」
「…こんな朝早くからどうしたの?」
「いいから取り敢えず入れて!…中に見られたくないものがあるなら話は別だけどね」
花菜は楽しそうに話していて、夏彦はため息を吐きながら招き入れている。
出ていっても大丈夫だろうか…迷っていると、夏彦がこちらに向かって手招きした。
「…アレルギーとかない?」
「私、ですか?ありません、けど…」
目の前にいる動物は、直接見たことがないものだった。
「この子、前の飼い主から虐待を受けてたみたいで…というより、放置?
だから、誰か預かってくれる人を探してるんだ!もしよかったら月見に預かってもらえないかなって思ったんだ」
「私、動物のお世話には自信がなくて、えっと…」
夏彦の家でお世話になっていますとは流石に言えないのでなんとか誤魔化してみる。
「ふうん…訳ありか」
「…!」
どうして花菜に分かってしまったのだろうか。
話し方がまずかった?それより、このままでは夏彦に迷惑を……
「花菜、からかいに来ただけなら帰って。その子は怪我してるかもしれないし俺が引き取るよ。
猫なら前に世話してたことがあるから」
「なっちゃん、そんなに怖い顔しなくてもいいのに…。ごめんね、月見!誰だって聞かれたくないことはあるよね」
「あ、いえ…」
ほっとしたものの、なんだか夏彦の様子がおかしいことはすぐ分かった。
彼は自分がどんな表情をしているか気づいていないのか、花菜が帰っていった後は笑顔で話しはじめる。
「ごめん。俺の独断で決めちゃったけど…」
「気をつけることとか餌のこととか、全然分からないので教えてください」
「了解!一先ずこの子にはケージにいてもらって、開店準備をすませるね」
「分かりました」
夏彦にも、秘密にしたいことがあるのだろうか…直感的にそう思った朝だった。
「お、おはようございます…」
ご飯を作っていると、いつものように夏彦が起きてくる。
そんな彼と一緒に食べるご飯は独りだった頃よりずっと美味しくて、いつも料理を褒めてもらえるから本当にありがたい。
「ごちそうさまでした。今日も美味しかった…」
「それならよかったです」
「片づけは俺がやるから、月見ちゃんは出掛ける準備してて。
今日から本格的にお仕事をお願いするかもしれないから、裁縫道具も持っておいてね」
「は、はい…」
結局、コサージュは売り物にはせずに1点ものとして持っておいた方がいいと言われた。
売り物にできない訳じゃないから気にしないでほしいと言ってもらえたけれど、私が作ったものでは売れないものだったのだろう。
…気を遣わせてしまって申し訳ない。
「月見ちゃん、これから開店準備をするけど…」
そのとき、こつこつとシャッターがたたかれる音がした。
「月見ちゃん、念のためにそっちに隠れてて。…今開けます!」
開かれたシャッターの先には、見覚えがある短髪の女性が立っていた。
「こんにちは、お邪魔します!」
「…こんな朝早くからどうしたの?」
「いいから取り敢えず入れて!…中に見られたくないものがあるなら話は別だけどね」
花菜は楽しそうに話していて、夏彦はため息を吐きながら招き入れている。
出ていっても大丈夫だろうか…迷っていると、夏彦がこちらに向かって手招きした。
「…アレルギーとかない?」
「私、ですか?ありません、けど…」
目の前にいる動物は、直接見たことがないものだった。
「この子、前の飼い主から虐待を受けてたみたいで…というより、放置?
だから、誰か預かってくれる人を探してるんだ!もしよかったら月見に預かってもらえないかなって思ったんだ」
「私、動物のお世話には自信がなくて、えっと…」
夏彦の家でお世話になっていますとは流石に言えないのでなんとか誤魔化してみる。
「ふうん…訳ありか」
「…!」
どうして花菜に分かってしまったのだろうか。
話し方がまずかった?それより、このままでは夏彦に迷惑を……
「花菜、からかいに来ただけなら帰って。その子は怪我してるかもしれないし俺が引き取るよ。
猫なら前に世話してたことがあるから」
「なっちゃん、そんなに怖い顔しなくてもいいのに…。ごめんね、月見!誰だって聞かれたくないことはあるよね」
「あ、いえ…」
ほっとしたものの、なんだか夏彦の様子がおかしいことはすぐ分かった。
彼は自分がどんな表情をしているか気づいていないのか、花菜が帰っていった後は笑顔で話しはじめる。
「ごめん。俺の独断で決めちゃったけど…」
「気をつけることとか餌のこととか、全然分からないので教えてください」
「了解!一先ずこの子にはケージにいてもらって、開店準備をすませるね」
「分かりました」
夏彦にも、秘密にしたいことがあるのだろうか…直感的にそう思った朝だった。
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