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春人ルート
第4話
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それから私は、できることが少ないからと部屋の掃除をさせてもらっていた。
…勿論、入ってはいけないと言われている場所と春人の部屋以外。
「…?」
テーブルの拭き掃除をしていると、ころんと何かが落ちてくる。
随分古いうさぎのぬいぐるみのようだが、かなり大切なものではないだろうか。
「…その子、こっちに返して」
「あ、ごめんなさい。どこかから落ちてきたみたいで…」
そっと両脇を掴んでそのまま渡す。
「大切なもの、ですよね。ごめんなさい」
「別に謝る必要はない。ただ…俺のこと、軽蔑したりしないんだなって思っただけだから」
「軽、蔑?」
「男がぬいぐるみ持ってるなんて、変でしょ?」
その言葉に、私はすぐ首を横にふった。
「大切なものに性別は関係ないと思います」
「……ありがとう」
そのときの春人は柔らかい笑顔で、うさぎの頭を撫でながらぽつりと呟いた。
「すごく大切なもので、今でも手離せずにいる。…ずっと俺の側にいる子なんだ」
「とても、素敵なことだと思います」
私にはそういったものがなかった。
…正確に言えば、あったけれど忘れてしまったのかもしれない。
それはまるで、壊れかけの硝子細工を触るような手つきでそっと棚の上に置き直す。
そんな姿を見てひとつだけ思い出した。
「君にはなかったの?」
「ひとつだけなら…」
ポケットに入れていた小さいクマを取り出して見せると、春人はじっと見つめていた。
「…やっぱり似たような境遇だと、同じようなものを持っているのか」
「あの……?」
「ごめん、なんでもない。掃除ありがとう。今日は少しだけ出掛けようと思うんだけど、体調はどう?」
「悪くはない、です」
「それなら着替えておいで。俺はここで待ってるから」
春人はいつも私のことを気遣ってくれている。
それが申し訳ない反面、とても嬉しく感じているのは何故だろう。
ただ、今までこんな扱いを受けたことがなかったから戸惑うことも多い。
最低限しか持ち合わせていない洋服のなかで1番汚れが目立たないものを選んだ。
「お待たせしました」
「それじゃあ行こうか」
「…うん」
そっと差し出された手を握ると、そのままゆっくりとひかれていく。
その感覚さえもなんだか心地よくて、そのまま身を委ねた。
「いらっしゃいま…あれ、月見ちゃん?」
「こ、こんにちは」
どうしてもおどおどしてしまうのを抑えていると、すっと間に春人が入ってくれくれる。
「いけませんよ、夏彦」
「まったく、ボディーガードがここまできついと話しかけるのもひと苦労だ」
ふたりに来るように言われてついていくと、そこには別世界が広がっていた。
「今日は定休日で店開けてないし、好きなの選んでいいからね!」
…勿論、入ってはいけないと言われている場所と春人の部屋以外。
「…?」
テーブルの拭き掃除をしていると、ころんと何かが落ちてくる。
随分古いうさぎのぬいぐるみのようだが、かなり大切なものではないだろうか。
「…その子、こっちに返して」
「あ、ごめんなさい。どこかから落ちてきたみたいで…」
そっと両脇を掴んでそのまま渡す。
「大切なもの、ですよね。ごめんなさい」
「別に謝る必要はない。ただ…俺のこと、軽蔑したりしないんだなって思っただけだから」
「軽、蔑?」
「男がぬいぐるみ持ってるなんて、変でしょ?」
その言葉に、私はすぐ首を横にふった。
「大切なものに性別は関係ないと思います」
「……ありがとう」
そのときの春人は柔らかい笑顔で、うさぎの頭を撫でながらぽつりと呟いた。
「すごく大切なもので、今でも手離せずにいる。…ずっと俺の側にいる子なんだ」
「とても、素敵なことだと思います」
私にはそういったものがなかった。
…正確に言えば、あったけれど忘れてしまったのかもしれない。
それはまるで、壊れかけの硝子細工を触るような手つきでそっと棚の上に置き直す。
そんな姿を見てひとつだけ思い出した。
「君にはなかったの?」
「ひとつだけなら…」
ポケットに入れていた小さいクマを取り出して見せると、春人はじっと見つめていた。
「…やっぱり似たような境遇だと、同じようなものを持っているのか」
「あの……?」
「ごめん、なんでもない。掃除ありがとう。今日は少しだけ出掛けようと思うんだけど、体調はどう?」
「悪くはない、です」
「それなら着替えておいで。俺はここで待ってるから」
春人はいつも私のことを気遣ってくれている。
それが申し訳ない反面、とても嬉しく感じているのは何故だろう。
ただ、今までこんな扱いを受けたことがなかったから戸惑うことも多い。
最低限しか持ち合わせていない洋服のなかで1番汚れが目立たないものを選んだ。
「お待たせしました」
「それじゃあ行こうか」
「…うん」
そっと差し出された手を握ると、そのままゆっくりとひかれていく。
その感覚さえもなんだか心地よくて、そのまま身を委ねた。
「いらっしゃいま…あれ、月見ちゃん?」
「こ、こんにちは」
どうしてもおどおどしてしまうのを抑えていると、すっと間に春人が入ってくれくれる。
「いけませんよ、夏彦」
「まったく、ボディーガードがここまできついと話しかけるのもひと苦労だ」
ふたりに来るように言われてついていくと、そこには別世界が広がっていた。
「今日は定休日で店開けてないし、好きなの選んでいいからね!」
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