約束のスピカ

黒蝶

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追憶のシグナル

第11項

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「大樹が誘拐してたのかと思ったら、まさかただ子どもたちを護っていたなんて…ちょっと意外だった」
「番人の方が、噂に呑まれている…?」
「そうかも。ということは、番人…守り人の相手をしないとどうにもならないのかも」
その夜、特に作戦もないまま結局同じ方法を使って結界内へ潜りこんだ。
番人あらため守り人は、大樹に話しかけている。
《大丈夫です。あなたは俺が護りきりますから。…だから今は、少し眠っていてください》
誰に話しかけているんだろうとよく目を凝らしてみると、見覚えのあるシルエットが浮かびあがっている。
できるだけ音をたてずに近づいて、思いきって声をかけてみた。
「…こんにちは」
《ああ、また来たのか》
「彼女に、外の世界で会いました。話しかけても、いい?」
相変わらずつまりつまりになりながら尋ねると、守り人は驚いた様子でこちらを見ていた。
《彼女に外の世界で会った?》
「教室、に…毎日、おさげで眼鏡の……同じ」
大樹の中に眠っている少女は、間違いなくクラスにいた。
恐らく呪いか何かを使える、ビーカーを割った張本人。
《彼女はずっとここで無練り続けているのに会うはずがない》
「てことは生霊か…。俺は神様の域に達しているものが見えづらいから分からないけど、彼女は嘘を吐いたりしない」
陽向はふっと笑って、守り人の手を握る。
「教えてくれ。幽体離脱のような状態になっていても、物理的に干渉することは可能なのか?」
《…恐らく。だが、俺もそこまで詳しいわけではない。この方をお守りするのでせいいっぱいなのだ。
だかラ、もウ……離レロ》
大きな蔦が飛んできて、陽向とふたり後ろに下がる。
噂に侵食されてきたのを感知したのか、守り人はただ大樹に宿った神のようなものを護るために自ら穢されたのだ。
「陽向」
「俺は平気。けど…どうしよっか、これ」
木に吊るされた人々の顔色が昨日より悪い。
時間が経ちすぎると本気で死んでしまうかもしれないけれど、そのためには噂の根本から変える前におさげ眼鏡の子を元の場所に戻す必要がある。
「…走れる?」
「勿論!」
「ごめんなさい。また来るから」
《俺は、おレハ、もウ……》
「分かってる。誰のことも傷つけたくないんだろ?絶対なんとかするから」
伸びてくる蔦をかき分け、なんとか地上に脱出する。
次おさげ眼鏡の子に会ったら、なんとか話しかけないといけない。
のど飴を口に入れると、陽向が心配そうにこちらを見つめる。
「……いる?」
「そりゃあ、もらえたらありがたいけど……」
「食べたら元気になれるかもしれない」
陽向は優しく微笑んで飴を口に入れる。
それと同時に、私を強く抱きしめた。
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