道化師より

黒蝶

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5枚目

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「お疲れ様でした」
昨日の蓮の顔……間違いなく訳ありだ。
なんとなく分かってしまう。
幼い頃の私と同じ目をしていたあの子は、次の機会も来てくれるだろうか。
ビルの前で不審な動きをしている人物を見つけ、警備員を呼ぼうか迷う。
だが、よく見ると見知った顔だと気づいた。
「細田さん?」
「あ……お疲れ様です」
人気俳優が何故こんな廃れたスタジオにいるんだろう。
忙しいだろうに……もしかして忘れ物だろうか。
「この間はありがとうございました」
「いえ。私は自分の仕事をしただけですので」
早く立ち去りたかったけど、帰れという態度をとるのはあまりに失礼だ。
「それでは、私はこれで失礼します。お仕事お疲れ様です」
「あ、あの!」
まさか呼び止められるとは思っていなかった。
「もしよければ、一緒に食べませんか?」


先日のお礼だと渡されたのはドーナツだ。
空き部屋の一室で一緒に食べながら、蓮のことを考える。
そういえば、好きな食べ物はなんだろう。
コンビニのホットスナックは私の好みのものを一緒に食べてもらっているだけだし、あの子が好きなものとは言い切れない。
「あの……」
「すみません。だんまりじゃ気まずいですよね。とっても美味しいです。どこのお店のものなんですか?」
「ひとつはここからひと駅離れた場所のものです。もうひとつは、その……作りました」
「料理、お上手なんですね」
「いえ、俺の腕じゃまだまだです」
ストイックな人なんだろうと感じる。
流石にタクシーがつかまらないなかひとりで帰すわけにもいかず、駅まで送り届けた。
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