王子と内緒の人魚姫

黒蝶

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茶園 渚篇

第40話

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「渚...?」
部屋を見渡しても、渚の姿は見当たらない。
「白玉、その紙見せてね」
《黒羽
ちょっと仕事にいってくる。
お前は部屋で寝てろ。
帰ったらうまいもん作ってやるからそれまで白玉とじゃれとけ。》
(渚...)
「渚、どうしちゃったんだろうね?」
黒羽は白玉を抱きかかえた...。
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▼「帰ったぞ」
渚が帰ってきたのはお昼前だった。
「渚、おかえりなさい!」
▼「おまえ...寝てろって言っただろ」
昼食用に黒羽はパンを用意していた。
「どうしても何かしたくて...」
▼「本当に叶わないな」
頭をくしゃっと撫でられ、黒羽は照れたように下を向く。
「もう...」
▼「お前が言っていた魔女の魔法...跳ね返し方があるのか?」
「あるよ、私できる。この前は身体が先に動いちゃったけど...。どうして急にそんなこと聞くの?」
▼「...酒場で情報を聞こうとしたら、知ってることは教えられないと言われたんだよ。だが俺は知らない。そもそも魔女がどんなやつかも知らない。だからもしかするとおまえが知ってるんじゃねえかと思ったんだ」
「酒場で、誰に会ってたの?もしかして...」
黒羽はそこまでで言葉を呑みこんだ。
▼「...それで、魔法を跳ね返すには?」
「『樹歌』と呼ばれる、乱れた自然の恵みを元通りにする歌があるの。それを歌えば大丈夫なはずだよ。あの人のことも、魔女から救うことができる」
(誰も傷つかないようにするにはこうするしかない)
▼「...それも踏まえて作戦会議するか」
「うん!」
▼「だがその前に...どこかへ出掛けないか?」
「いいの⁉」
黒羽の表情は明るくなる。
▼「...ああ」
「楽しみだね、白玉!」
ふわり。
渚はその笑顔を見ながら何かを考えている様子だった。
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