王子と内緒の人魚姫

赤城玲音 篇

第２９話

(玲音...)
あれから玲音の様子はおかしい。
調べものをしたり、忙しいと黒羽とあまり顔を会わせてくれないのだ。
玲音らしくない、と理由もありながら、本当はただ、玲音に会いたくて。
(話しかけてもいいんだろうか...)
ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ
◆「かー...」
玲音はイビキをかいて寝ていた。
(...)
ねえ、玲音。
玲音と話せないのは寂しいんだよ。
どうして急に忙しくなったの？
(...言いたい言葉が出てこない)
黒羽はふと机に目をやった。
(...！これは、)
それは、海の薬について書かれたものだった。
(どうしてこんなものを...)
黒羽の頭は疑問でいっぱいだった。
一つだけ、答えが出た。
(玲音...もうやめて)
玲音にそっと口づけた。
◆「黒羽...泣かせてごめん」
「え...？」
驚いてみると、いつの間にか玲音が起きていた。
◆「海について、もう少し調べてみようと思ったんだ。思いの外、時間がかかって...」
「そんなの、いいよ」
◆「え？」
「私の、薬のことは、い、から...」
言葉につまりながら、玲音に思いをぶつけていく。
「私はっ、玲音とっ、一緒にいたい。寂し、寂しいよ...」
◆「ごめん、何やってるんだろうな俺は。...黒羽を、泣かせたりしない。約束するよ」
「...本当？」
◆「ああ、本当」
「んっ...」
玲音とキスをしたのは、何日ぶりだろう。
そんなことを考えながら甘い口づけを繰り返した...。