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40・真弓がアーチャーを名乗る理由。
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「言ったのはいきなりだけど、もうずっとずっとそう思い続けてる。
俺、真弓が好きだ。」
「ちょ………わ、分かった!
分かったから何度も言わなくていい!」
胸の下辺りに抱き着いた俺の肩に手を置き、真弓が俺を押して離した。
離れた俺の前で、真弓は口元を手で覆って横を向いている。
………耳真っ赤。
押し離されたのが拒絶されたのでは無いのだと分かっていたけど…
こんなに分かりやすく照れて貰えると、嬉しくて堪らない。
「真弓、照れてる?
すげー可愛いんだけど!」
「あ、アホか、子どもにじゃれ付かれた位で照れるか。
注目を集めたくないだけだ。
ほら、もう行くぞ!」
俺に背を向け、停めてあるバイクに向かった真弓の背を追いかけて見上げた。
高い位置でハーフアップに括られたチョロンとした髪が短い尻尾の様に揺れ動く。
それすらも、照れているせいで揺れ動いているように見えてしまう。
━━うわぁ…俺の恋人が、可愛すぎる━━
口の端がヒクヒクと緩み、真弓が好きだと、この可愛い人が俺の恋人なんだと大声で世間に公言して回りたい衝動に駆られそうになる。
それをこらえて早足で先を行く真弓の後を追いかけた。
「待ってよ、真弓!」
俺がバイクの所に到着したら、真弓は既にフルフェイスのスモークヘルメットを被ってしまっていて顔が見えなくなっていた。
照れた顔を隠したかったのだろうか。
……………かーわいぃ…やっば。
バイクにまたがりベルトを付けて真弓の背にくっつく。
エンジンをかける前に訊ねてみた。
「真弓、怒った?」
「怒ってなんかネェ。急過ぎて…少し驚いただけだ。」
ボソボソとヘルメットの中からくぐもった答えが返って来てすぐ、バイクのエンジンが掛かった。
真弓が続けて何か言っていたっぽいがエンジン音で聞こえない。
やがて真弓はコンビニの駐車場を出て、バイクを走らせ始めた。
俺は真弓の背中にギュッと抱き着き、さっきの真弓がナニを呟いていたのかを考える。
嘘をつけない真弓が怒ってないと言うのだから、怒ってはないのだろうけど…。
イラッとさせたりしたのだろうか。
そんな考えが浮かんだ瞬間、遠慮するかの様に真弓に抱き着いていた手から少し力が抜けてしまった。
信号待ちで停車した際、真弓が俺の腕を掴み「もっと強くしがみつけ」と言う様に俺の手を自分の腰にグッと押し付けた。
それだけで、真弓に許された気がしてしまう俺は能天気なのかも知れない。
「真弓…大好きだ。ホントにホントに大好きなんだ。」
ヘルメットの中で呟き、グッと強く真弓に抱き着いた。
コンビニから1時間近く走り、バイクは海の側にあるオシャレなペンション風な建物の前に停車した。
なんで、こんな場所に?と疑問を浮かべつつバイクから降りる。
真弓はペンションの中に入ってゆき、ペンションの偉い人っぽいおじさんと話をしている。
俺は物珍しそうに辺りをキョロキョロと見回した。
ロビーは割と広く、宿泊出来る部屋数もそれなりにありそう。
規模としては、ペンションとホテルの間くらい??
海が近いので、夏はかなり混雑したのじゃないだろうか。
今は少し静かな感じがするけど、まばらながらも宿泊客らしき人の姿がある。
大人の会話を立ち聞きするのは…とは思ったけど、真弓とこのおじさんの関係が気になる。
友達にしては、おじさんがかなり歳上だし、親しげだけど妙にかしこまってる真弓の態度を見ていたら………
一番しっくり来るのが仕事関係での知り合いだ。
仕事……仕事!?真弓の仕事!?
俺はさり気なく2人に近付いて、会話に聞き耳を立てた。が、その時には2人の会話は終わってしまった。
「せっかく来てくれたんだ、アーチャーさん。
昼食を用意するから食べてってくれ。
うちの自慢の風呂も息子さんと一緒に入って行って下さいな。」
「ありがとうございます、お言葉に甘えます。」
アーチャー!?おじさんにアーチャーって呼ばれた!
アーチャーって、あだ名じゃなかったっけ?
親しい関係…にしては、俺を息子だって言われて否定もしなかった。
「ランチタイムまでは、まだ時間がある。
海に行って遊ぶか。」
ロビーでおじさんと別れ、真弓は俺の肩を掴んでグイグイとドアの方に押した。
あまり深く追及されたくないのか、何かから遠ざける様に俺の身体が押される。
「え?あ、うん…真弓、さっきのおじさんと、どういった知り合い?」
「仕事で世話になった。そんだけだ。」
「だから、その仕事って………」
言い掛けて、玄関ドアに貼ってある近隣の他の観光施設やイベントのポスターに混ざって、このペンションの物らしきポスターが目に入った。
━━海を眺めて温泉を満喫。日本のおもてなし━━
浴衣を着た外国人カップルらしき2人がロビーから海を見ている姿を斜め後ろから撮ったポスターだ。
つかこれ、真弓じゃん!
自宅に居るのと同じ様な格好してるし、立ち姿はまんま真弓じゃん!
「まっ真弓!?これ、真弓………」
「……………ッッ何で分かるんだよ……」
「だって後ろ姿……肩から腰、腰からお尻のライン、まんま真弓じゃん。」
「腰から尻って、どこを見て……!」
カァッと顔を赤くした真弓が片手で顔を覆った。
いやだって…俺、クロウ伯爵も真弓だって気付いたしな。
真弓の身体のラインや動きのクセを把握してるって事だよな。
…………確かにやばいな、俺!
「特撮ばっか見てたせいかも。
俺さ時々、スーツアクターさんが誰か分かる事があるんだ。
ポージングの時の身体のラインとか、アクションのクセとかで。」
なんか変な言い訳をしつつ、玄関に貼られたポスターをまじまじと眺めた。
「………あんまバレたくなかったんだがな……。
俺は小さなモデル事務所で働いている。
その……モデル名がアーチャーだ。」
「ええッ!ちゃんと仕事してたんだ!」
色々と驚き過ぎて、変な方向に対して言葉が出た。
いや、よく仕事、仕事言っていたから無職ではないと思っていたけど。
悪い仕事してそうな風貌にしては真弓は真面目だし、ちゃんと仕事してるとは思っていたけど!
まさかモデルなんて………。
「そりゃしてるわ。
まぁ、モデルは顔も出ない様な小さな仕事ばかりで稼ぎは少ないが、ジイさんが遺してくれた小さなアパート数軒の大家をしているから収入はある。
無職じゃねえぞ。」
改めて思った。
前の映画館デートの日に、真弓は自分の名前はアーチャーで通していると言っていた。
本名を誰にも教えたくないし、知られた所で本名では呼ばれたくないと。
アーチャーは仲の良い人に呼ばせるあだ名では無かったんだ。
俺だけが……真弓を真弓と呼ぶ事を許されている。
話しながら海に向かって歩き、割とすぐに海岸に出た。
ペンションの宿泊客や近所の人なのだろうか、海岸にはまばらに人が居て、若いカップルや、子ども連れの家族もいる。
俺と真弓は海岸に降りる階段に並んで腰を下ろした。
普段の俺なら海に来たら、テンション上がって海にザブザブ入ってしまうのだけれど…
今は真弓の隣に居たい。
俺は左隣に座った真弓にピタッと寄り添う様に身を寄せた。
「さっきのポスター、余ってないかな。
余っていたら欲しい。」
「あれ、日本に旅行に来た外国人の若い夫婦って設定だぞ。
お前は、それでもいいのかよ。」
真弓の問いに少し驚いた。
俺が、見知らぬ女性と真弓が夫婦役をしている事を嫌がるかもと理解してくれてるんだと。
俺が嫉妬するかもと……俺が真弓を好きだって気持ちが少しは伝わってるのかと嬉しくなった。
「夫婦か。
真弓……俺と結婚して、御剣真弓になって欲しい。」
「……………ッッあ?……はぁ!?」
2人で海を眺めながらのプロポーズは、それなりにロマンチックかも知れないけど…なんか色々と焦り過ぎたみたい。
真弓が口を開きっぱなしにしたまま静止画の様に止まってしまったし。
「……それは……
俺がお前に婿入り…いや、嫁入りする立場で言ってんのか。」
しばらくの沈黙の後、真弓が俺に訊ねた。
「そ、そうなるのかな…神鷹走でもイイんだけど、さっきは御剣真弓しか思い付かなかった。」
俺の頭の中での真弓は、俺の花嫁さんなんだとの認識が定着してしまってるようだ。
じゃぁ今の真弓は、やはり彼氏ではなく彼女なのかな。
真弓が階段から腰を上げてグッと両腕を上げて身体を伸ばした。
着ていた革ジャンを脱ぎ砂で汚れるのも構わずバサッと階段に投げブーツも脱ぎ、ジーンズと眩しい位の白いTシャツ姿になった真弓が俺を見てニッと笑った。
「旦那のお前が、嫁の俺より稼ぐ様になったら考えてやるよ。御剣真弓になる事をな。」
真弓は裸足で砂浜を歩いて海に向かう。
その背を見ながら心臓を撃ち抜かれた気がした俺は、シャツの胸辺りをギュッと握り、ポーッと真弓の後ろ姿を目で追いかけた。
「ちょ、真弓!俺も行くから、ゆっくり行って!」
革のジャケットを脱いで真弓の革ジャンに重ね、靴下とスニーカーを脱いで真弓の後を追いかけた。
砂上の真弓の足跡に、自分の足を乗せて行く。
今はまだ大きな真弓の足跡にすっぽり収まる自分の足跡。
早く大きくなって、真弓の所に俺も行く。
急いで行くから、走って行くから。
だから真弓は、ゆっくりゆっくり歩きながら俺を待ってて。
俺だけの御剣真弓になるまで━━
俺、真弓が好きだ。」
「ちょ………わ、分かった!
分かったから何度も言わなくていい!」
胸の下辺りに抱き着いた俺の肩に手を置き、真弓が俺を押して離した。
離れた俺の前で、真弓は口元を手で覆って横を向いている。
………耳真っ赤。
押し離されたのが拒絶されたのでは無いのだと分かっていたけど…
こんなに分かりやすく照れて貰えると、嬉しくて堪らない。
「真弓、照れてる?
すげー可愛いんだけど!」
「あ、アホか、子どもにじゃれ付かれた位で照れるか。
注目を集めたくないだけだ。
ほら、もう行くぞ!」
俺に背を向け、停めてあるバイクに向かった真弓の背を追いかけて見上げた。
高い位置でハーフアップに括られたチョロンとした髪が短い尻尾の様に揺れ動く。
それすらも、照れているせいで揺れ動いているように見えてしまう。
━━うわぁ…俺の恋人が、可愛すぎる━━
口の端がヒクヒクと緩み、真弓が好きだと、この可愛い人が俺の恋人なんだと大声で世間に公言して回りたい衝動に駆られそうになる。
それをこらえて早足で先を行く真弓の後を追いかけた。
「待ってよ、真弓!」
俺がバイクの所に到着したら、真弓は既にフルフェイスのスモークヘルメットを被ってしまっていて顔が見えなくなっていた。
照れた顔を隠したかったのだろうか。
……………かーわいぃ…やっば。
バイクにまたがりベルトを付けて真弓の背にくっつく。
エンジンをかける前に訊ねてみた。
「真弓、怒った?」
「怒ってなんかネェ。急過ぎて…少し驚いただけだ。」
ボソボソとヘルメットの中からくぐもった答えが返って来てすぐ、バイクのエンジンが掛かった。
真弓が続けて何か言っていたっぽいがエンジン音で聞こえない。
やがて真弓はコンビニの駐車場を出て、バイクを走らせ始めた。
俺は真弓の背中にギュッと抱き着き、さっきの真弓がナニを呟いていたのかを考える。
嘘をつけない真弓が怒ってないと言うのだから、怒ってはないのだろうけど…。
イラッとさせたりしたのだろうか。
そんな考えが浮かんだ瞬間、遠慮するかの様に真弓に抱き着いていた手から少し力が抜けてしまった。
信号待ちで停車した際、真弓が俺の腕を掴み「もっと強くしがみつけ」と言う様に俺の手を自分の腰にグッと押し付けた。
それだけで、真弓に許された気がしてしまう俺は能天気なのかも知れない。
「真弓…大好きだ。ホントにホントに大好きなんだ。」
ヘルメットの中で呟き、グッと強く真弓に抱き着いた。
コンビニから1時間近く走り、バイクは海の側にあるオシャレなペンション風な建物の前に停車した。
なんで、こんな場所に?と疑問を浮かべつつバイクから降りる。
真弓はペンションの中に入ってゆき、ペンションの偉い人っぽいおじさんと話をしている。
俺は物珍しそうに辺りをキョロキョロと見回した。
ロビーは割と広く、宿泊出来る部屋数もそれなりにありそう。
規模としては、ペンションとホテルの間くらい??
海が近いので、夏はかなり混雑したのじゃないだろうか。
今は少し静かな感じがするけど、まばらながらも宿泊客らしき人の姿がある。
大人の会話を立ち聞きするのは…とは思ったけど、真弓とこのおじさんの関係が気になる。
友達にしては、おじさんがかなり歳上だし、親しげだけど妙にかしこまってる真弓の態度を見ていたら………
一番しっくり来るのが仕事関係での知り合いだ。
仕事……仕事!?真弓の仕事!?
俺はさり気なく2人に近付いて、会話に聞き耳を立てた。が、その時には2人の会話は終わってしまった。
「せっかく来てくれたんだ、アーチャーさん。
昼食を用意するから食べてってくれ。
うちの自慢の風呂も息子さんと一緒に入って行って下さいな。」
「ありがとうございます、お言葉に甘えます。」
アーチャー!?おじさんにアーチャーって呼ばれた!
アーチャーって、あだ名じゃなかったっけ?
親しい関係…にしては、俺を息子だって言われて否定もしなかった。
「ランチタイムまでは、まだ時間がある。
海に行って遊ぶか。」
ロビーでおじさんと別れ、真弓は俺の肩を掴んでグイグイとドアの方に押した。
あまり深く追及されたくないのか、何かから遠ざける様に俺の身体が押される。
「え?あ、うん…真弓、さっきのおじさんと、どういった知り合い?」
「仕事で世話になった。そんだけだ。」
「だから、その仕事って………」
言い掛けて、玄関ドアに貼ってある近隣の他の観光施設やイベントのポスターに混ざって、このペンションの物らしきポスターが目に入った。
━━海を眺めて温泉を満喫。日本のおもてなし━━
浴衣を着た外国人カップルらしき2人がロビーから海を見ている姿を斜め後ろから撮ったポスターだ。
つかこれ、真弓じゃん!
自宅に居るのと同じ様な格好してるし、立ち姿はまんま真弓じゃん!
「まっ真弓!?これ、真弓………」
「……………ッッ何で分かるんだよ……」
「だって後ろ姿……肩から腰、腰からお尻のライン、まんま真弓じゃん。」
「腰から尻って、どこを見て……!」
カァッと顔を赤くした真弓が片手で顔を覆った。
いやだって…俺、クロウ伯爵も真弓だって気付いたしな。
真弓の身体のラインや動きのクセを把握してるって事だよな。
…………確かにやばいな、俺!
「特撮ばっか見てたせいかも。
俺さ時々、スーツアクターさんが誰か分かる事があるんだ。
ポージングの時の身体のラインとか、アクションのクセとかで。」
なんか変な言い訳をしつつ、玄関に貼られたポスターをまじまじと眺めた。
「………あんまバレたくなかったんだがな……。
俺は小さなモデル事務所で働いている。
その……モデル名がアーチャーだ。」
「ええッ!ちゃんと仕事してたんだ!」
色々と驚き過ぎて、変な方向に対して言葉が出た。
いや、よく仕事、仕事言っていたから無職ではないと思っていたけど。
悪い仕事してそうな風貌にしては真弓は真面目だし、ちゃんと仕事してるとは思っていたけど!
まさかモデルなんて………。
「そりゃしてるわ。
まぁ、モデルは顔も出ない様な小さな仕事ばかりで稼ぎは少ないが、ジイさんが遺してくれた小さなアパート数軒の大家をしているから収入はある。
無職じゃねえぞ。」
改めて思った。
前の映画館デートの日に、真弓は自分の名前はアーチャーで通していると言っていた。
本名を誰にも教えたくないし、知られた所で本名では呼ばれたくないと。
アーチャーは仲の良い人に呼ばせるあだ名では無かったんだ。
俺だけが……真弓を真弓と呼ぶ事を許されている。
話しながら海に向かって歩き、割とすぐに海岸に出た。
ペンションの宿泊客や近所の人なのだろうか、海岸にはまばらに人が居て、若いカップルや、子ども連れの家族もいる。
俺と真弓は海岸に降りる階段に並んで腰を下ろした。
普段の俺なら海に来たら、テンション上がって海にザブザブ入ってしまうのだけれど…
今は真弓の隣に居たい。
俺は左隣に座った真弓にピタッと寄り添う様に身を寄せた。
「さっきのポスター、余ってないかな。
余っていたら欲しい。」
「あれ、日本に旅行に来た外国人の若い夫婦って設定だぞ。
お前は、それでもいいのかよ。」
真弓の問いに少し驚いた。
俺が、見知らぬ女性と真弓が夫婦役をしている事を嫌がるかもと理解してくれてるんだと。
俺が嫉妬するかもと……俺が真弓を好きだって気持ちが少しは伝わってるのかと嬉しくなった。
「夫婦か。
真弓……俺と結婚して、御剣真弓になって欲しい。」
「……………ッッあ?……はぁ!?」
2人で海を眺めながらのプロポーズは、それなりにロマンチックかも知れないけど…なんか色々と焦り過ぎたみたい。
真弓が口を開きっぱなしにしたまま静止画の様に止まってしまったし。
「……それは……
俺がお前に婿入り…いや、嫁入りする立場で言ってんのか。」
しばらくの沈黙の後、真弓が俺に訊ねた。
「そ、そうなるのかな…神鷹走でもイイんだけど、さっきは御剣真弓しか思い付かなかった。」
俺の頭の中での真弓は、俺の花嫁さんなんだとの認識が定着してしまってるようだ。
じゃぁ今の真弓は、やはり彼氏ではなく彼女なのかな。
真弓が階段から腰を上げてグッと両腕を上げて身体を伸ばした。
着ていた革ジャンを脱ぎ砂で汚れるのも構わずバサッと階段に投げブーツも脱ぎ、ジーンズと眩しい位の白いTシャツ姿になった真弓が俺を見てニッと笑った。
「旦那のお前が、嫁の俺より稼ぐ様になったら考えてやるよ。御剣真弓になる事をな。」
真弓は裸足で砂浜を歩いて海に向かう。
その背を見ながら心臓を撃ち抜かれた気がした俺は、シャツの胸辺りをギュッと握り、ポーッと真弓の後ろ姿を目で追いかけた。
「ちょ、真弓!俺も行くから、ゆっくり行って!」
革のジャケットを脱いで真弓の革ジャンに重ね、靴下とスニーカーを脱いで真弓の後を追いかけた。
砂上の真弓の足跡に、自分の足を乗せて行く。
今はまだ大きな真弓の足跡にすっぽり収まる自分の足跡。
早く大きくなって、真弓の所に俺も行く。
急いで行くから、走って行くから。
だから真弓は、ゆっくりゆっくり歩きながら俺を待ってて。
俺だけの御剣真弓になるまで━━
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