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27・同級生の金森。悪い奴じゃいけどムカつく。

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いつもいつも、月曜の朝は起きるのがダルい。
日曜日の余韻をズルズルと引き摺って、まだ遊び足りないし、休み足りないと身体が訴えてくる。
ベッドから出たくない。
身体を起き上がらせない状態で、ベッドの上でうだうだと何度も寝返りを打つ。

ブブッ

枕元に置いた携帯の振動で、ガバっと飛び起きた。
真弓からの、おはようさんコールだ。
いや、まだ6時半だよ?
今日の真弓、メチャクチャ早起きじゃん!


━━━━おはようさん


「~~~!!!やっぱり真弓!おはよう!」


スマホを開き身悶えながら朝一番に真弓のメッセージを見る。
お母さんに起こされるのではなく、真弓に起こされる。
一日が真弓を感じる事から始まるって。
もう、それだけでテンション爆上がりするんだけど。


━━━━今日も一日頑張ってこい


大好きな真弓からの激励の言葉。
メチャクチャ嬉しいに決まってるんだけど…。

次にいつ会えるのか、真弓からまだ教えて貰って無い。
忙しいとか貴重な休みって表現をした事もあったから、仕事をしていないワケじゃないのだろうけど…。
初めて会った日は金曜日の夕方前辺りに家に居て、次の日にもウチに居た。
一昨日の初デートは土曜日で、昨日のおウチデートは日曜日。

俺から、いつ会える?だとか何曜日なら毎週会える?とか催促して良いのかが分からない。
分からないけど………真弓の方から俺に会いたいなんて、言わなさそう。
俺から会いたいって言わなきゃ、いつまでも会ってくれないかも知れない。
悪気は無く、誕生日みたいに「あ、忘れてた」なんて軽いノリで。


 おはよう真弓!
ね、真弓のウチに遊びに行きたい!
いつなら行ってもいい?━━━━


何だか危機感を覚えて、慌てる様にメッセージを送った。
すぐに既読がついて、いつもの様に一言だけの返事が来る。


━━━━まだ分からん



「………そうだよね……真弓だって仕事してるんだし……
自分の趣味の時間だって持ちたいだろうし……」



真弓のメッセージを見て何だかヘナっと脱力してしまった。
真弓のメッセージは感情が見えなくて、怒らせたり嫌われたりしてないかと不安になる。
真弓の中での俺の優先順位も分からない。
本当は、何よりも誰よりも俺を一番にしてって言いたいけど。

朝っぱらから、これ以上のワガママや追及は出来ない。



「改めて考えたら俺って真弓の事を何にも知らないんだな。」



  じゃあ、時間が空きそうなら教えて。学校から帰ってからでも、真弓に会いに行くから。━━━━


  あ、月曜日と木曜日は早く帰らなきゃならない日だから…
会いに行けないんだけど…━━━━



メッセージを送ってから、溜め息をついた。
自分が少林寺拳法を習いに行っているのが悔やまれる。
真弓が暇な日が月曜と木曜だったら、どうしよう……。



━━━━分かった覚えとく



真弓からのメッセージは素っ気ない。
覚えていてくれるからと言って、俺のために時間を調整してくれるとは限らない。



「………俺って、ウッザ。」



真弓に対して必死過ぎる自分がうざったい。
好きだって気持ちを押し付けたがるクセに、嫌われたらどうしようって、その境目を知ろうと変な探りを入れたりして。

友達にしろ何にしろ、自分から人をここまで好きになった事がないから、もっと好きになって貰う方法や繋ぎ止め方が分からなくて必死過ぎてキモ。

ベッドの上でスマホを持ったまま項垂れるようにハァーっと大きな溜め息をついた俺は、ゆっくり顔を上げた。

……ら……お母さんと目が合った。は?なぜソコに?



「走は、恋でもしたの?それは初恋かしら」



「…………ッお母さん!いつから、部屋を覗いてたんだよ!!」



「起こしに来たのはたったイマよ。
俺ってウザいって呟いた瞬間を見たトコ。」



俺の部屋のドアを開いて隙間から顔を覗かせたお母さんが、口元に手を当てニマニマ笑いながら嬉しそうに答える



「ドア開ける前に声くらい掛けろよ!
起きてるって分かったんなら、もう下に行ってて!」



ベッドから降りて、お母さんを閉め出すように急いでドアを閉めた。
面白がられても困るし、恋した相手が誰かも知られたら困る!



「初恋はラファエル皇子だって何度も言ってんじゃん。
……女の子じゃないから、お母さんの中では初恋にカウントしないのかも知れないけどさ。」



だったら、お母さんの望む様な初恋は俺には一生訪れないよ。
俺は真弓以外を絶対に好きにならないから。







朝から真弓の事で喜んだり脱力したり、朝食中にはお母さんの質問にイラッとしたりとバタバタした気持ちのまま家を出た。

でも真弓と付き合える様になったのは事実だし、と気持ちを切り替え学校に到着した俺は、教室に行き自分の机にランドセルを置いて席に着いた。
まだ教科書も出してない内に、金森が俺の前の席に座って話しかけて来た。



「御剣、お前…昨日、大丈夫だったのかよ。」



昨日…あ、真弓と歩いてるトコでコイツと出くわしたんだった。
あの後、真弓のウチに行って………

あの後の流れで真弓と恋人として付き合える様になったのは、金森のお陰もすこーしあるかも知れない。



「………な、何だよ、ニヤニヤして気持ち悪いな。
痛い、痛い!叩くな!ホント、何なんだよ!!」



ほんのすこーしだけ感謝している…かも知れないなんて考えてしまったせいだろうか。
気が付けばニヤけ顔で、金森の肩をバンバン叩いてしまっていた。



「いやぁ、お前ってムカつくけどイイ奴だったんだなって。
俺を助けようとしてくれたんだもんな。勘違いだったけど!」



「誘拐されかかってるかと思ったし周りに誰も居なかったし!
ほっとけないだろ!」



「うん、大声で人を呼んだりしなくて助かった。
そんな事していたら、神鷹のオジサンがすげー怒っていたかも。あの人、子ども嫌いだから!」



何だか不自然な位に真弓を怖い人アピールしてしまう。
真弓に対して金森が変に興味を持っりしたら嫌なんで。
俺の態度に違和感を覚えたのか、金森が不信感いっぱいの目で俺を見た。



「あのオッサン、本当に御剣の父さんの友だちか?
お前の父さんって、すげー優しそうな地味なヒトじゃん。
タイプ違くない?」



「友達なんだよ。スマホでメッセージのやり取りしてるし。」



「友達だからって、なんで子ども嫌いの大人に御剣の子守りを頼んだりするんだよ。おかしくないか?」



「子守りって言い方すんなよ!俺はガキじゃねぇし!」



変に勘繰られたのと子ども扱いされた事で、金森にイラッとしてしまった。
ガキじゃないとか言って声を荒らげた、今の俺が一番ガキっぽい。
大人しく「そうだよな~」って言っとけば良かったのに…。

真弓と居た俺を同級生の金森に子ども扱いされた事で、改めて大人と子どもなんだと。
その立場を明確にさせられ、だから恋人なんかには、なれないと何かに指摘された様な気がした。

これは相手が金森だから尚さらなんだろうな。
俺達はナニが気に食わないのか、いつも互いの言葉の揚げ足を取ってしまう。
そして片側がヒートアップすれば、つられてもう片方もヒートアップするワケで……。


「子守りじゃなかったら何なんだよ!
紛らわしく腕掴まれて引っ張られてたじゃねーか!
駄々こねたガキみたいに!」



「あれは引っ張られたんじゃなくて!
俺の方がサッサと先に行かないでって腕を掴んで引き止めてたんだし!!」



「ボクを置いてかないでーオジサーンってか!?
やっぱりガキじゃねーか!!」



互いに席から立ち上がって喧嘩になり掛けたが、金森の座った席の机に、ダンっとランドセルが置かれて終了した。



「金森どいて。そこわたしの席だから。」



女子つよっ。
ランドセルを置いた、俺の前の席の澤田さんが金森につっけんどんな態度で冷たく言った。
金森が、澤田さんに言われて素直に立ち上がって席を譲る。

女子が強いつか、金森が俺の前の席の澤田さんには弱い。
詳しく知らないが、幼馴染らしくて金森は澤田さんに頭が上がらないらしい。
ゴニョゴニョと文句を言うが、逆らえないっぽい。



「御剣くん、おはよー!」



「おはよ、澤田さん。」



澤田さんは俺にはいつも、メチャクチャ良い笑顔で挨拶してくれる。
幼馴染って、こんなに冷たいモンだっけ?
金森に取る態度と、俺に対する態度に差があり過ぎない?
金森が可哀想になるほど……。


   
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