蒼き英雄

雨宮結城

文字の大きさ
上 下
44 / 78
第三章

Part13

しおりを挟む
リアルワールドで、菊池ともう一人、メギドの捜索をしているユキ達。ユキ達は、特別チームの車に乗り、移動していた。

移動している中、ユキ達は、菊池の動きを追っている特別チームからの連絡を待っていた。

「…」

「…連絡、来ないですね」

サオリが青山に話しかけた。

「あぁ、銀座駅から菊池を追っていると思うが…」

「見失った可能性は、無いですかね」

ユキが青山に聞く。

「それは大丈夫だろう、彼らはそんなミスはしない」

「…信頼しているんですね」

「まあね、彼らは大事な仲間だ」

「仲間…」

「…お、連絡が来た」

青山の元に一本の電話が入った。

「もしもし」

「青山さん、菊池は今、銀座線にいます。現在の駅は、表参道駅です。ここで降りないと言うことは…」

「あぁ、奴は渋谷駅で降りるな」

「えぇ、我々はこのまま監視を続けます」

「分かった。それと、菊池は一人か?」

「はい、菊池の近くに、菊池の仲間はいません」

「了解した。引き続き頼む」

「はい」

二人は会話を終え、電話を切った。

「遥、青山さんには連絡した。俺達はこのまま、菊池の行方を追う。そして、菊池を脱獄させたと言う奴の事も見つけねばな」

「そうね、私達の任務は、菊池達の行方を追う事、気を引き締めましょう」

「あぁ……遥」

「なに?」

「この仕事が片付いたら、例の話を」

「…そうね。この仕事が片付いたら、ね」

遥と言う特別チームの女性と、青山に連絡を取った誠一と言う男性、二人は交際していた。そして、例の話と言うのは、結婚の話だ。

「でも誠一、それ以上は言わないで頂戴ね。なんだが死亡フラグっぽいわよ」

「あぁ、そうだな」

「…渋谷駅に着くわ。行きましょう、誠一」

「…」

「?誠一?」

誠一から返事がなく、後ろを振り返る遥。

「っ!」

振り返ると、そこには腹を貫かれ、傷を負った誠一が倒れていた。

「誠一!んっ」

突然背後から手で口を塞がれる遥。

「んっ、んーん!」

「暴れるな、彼の様に死にたいのか?」

「!」

「あー、そうとも、彼は俺が殺した。何やら俺達を嗅ぎ回っていたからね。でもそれは、君も同じか」

「んーん!(誠一!)」

「ふふ、悲しんでいるようだな」

恋人を殺され、遥は当然悲しみ、涙を流した。そしてそれと同時に、メギドに対する殺意も、湧いてきていた。口を塞がれながら、彼女は言った。

「殺してやる!」

「おーお、殺意を感じるね。ふふ」

「(!おかしい、人が死んでいるのに、何で周りの人は、何の反応もないの!?)」

「(ふふ、気づいたかな?この列車と言うものに乗っている人間達は全て、今は俺の支配下にある。お前達を探す為、列車に乗った時点で、コイツらの支配は完了していたと言う訳だ)」

「んっ!」

「ふふ、ハッハッハ。実に愉快だ。この世界の人間は、実に弱いな。この程度の能力も使えないとは。ふっふっふ、虫けら同然だ。…さて、君には、少し働いてもらおうか」

「!んっん!」

「君にも洗脳を施す。少しの間、俺の支配下に下ってもらう」

「んーん!」

〈その頃、車では〉

「青山さん、菊池は渋谷駅を降りるんですよね?」

「あぁ、降りた所を、我々で挟み撃ちにする」

「じゃあ、ボクは、メギドを探します。サオリちゃん、菊池は任せて大丈夫?」

「ええ、私は大丈夫よ。ユキちゃんこそメギドの方を頼むわね」

「うん」

「…!遥君から連絡が入った」

「なんて来たんですか?」

「…予想通り、菊池は渋谷駅で降りたそうだ。そして出口B七に向かっているみたいだ。我々もそこに行こう!向かってくれ」

「了解!」

「…」

遥から連絡が入り、出口B七の東口バスターミナルに向かうユキ達。そして数分後、東口バスターミナル付近へと着いたユキ達。

「…菊池はどこに」

「…!遥君から連絡だ。…菊池は東急プラザ渋谷駐車場へと移動したみたいだ。そこに向かおう。そこで遥君達と合流だ」

「了解しました」

「…」

遥からのメールを見て、駐車場へと向かうユキ達。そして駐車場に着き、遥を見つけ、車から降りる青山。

「…!遥君だ」

「…」

辺りに敵はいないと判断し、青山だけが車から降りた。

「遥君、無事で良かった。菊池は今どこだい?」

「…」

「遥君?…そう言えば、誠一君はどこだい?彼が今追っているのか?」

「…」

「遥、君?どうしたんだい」

「…ごめん、なさい」

涙を流しながら、答える遥。

「?それはどういう…」

とその時、ユキ達が乗っていた車が、突然爆発した。

「っ!」

「…」

気を失う遥。

「遥君!」

「…」

「っ!これは一体」

「君が」

「っ!」

突如後ろに現れたメギド。

「彼女らのボスか?」

「…お前は」

「俺の名はメギドだ」

「メギド、お前が」

「ああ」

「メギド、誠一君はどうした」

「誠一?あー、アイツの事か」

「…」

「殺したよ。邪魔だったからね」

「!何だと」

「メギド、予定通り。車の連中は始末した」

「っ!菊池…」

「久しぶりだな、青山」

「車をやったのは、お前か」

「あぁ、メギド君から貰ったこの力のおかげでな」

「力…」

「あぁ、お前らみたいな人間にはない力だ」

「ホント、良くやってくれたよ、菊池」

「なあに、君から貰ったこの力のおかげさ」

「…(そこに立っているだけなのに、菊池もだが、このメギドと言う男、なんて威圧感だ。アスタ君やユキ君達は、こんな者達と戦っていたのか)」

「所で、さっき爆破したヤツらの中に、魔力を持っている者を確認したぞ。どういう事かな?」

「…」

「黙りか、まあ、もうヤツらは死んだし、もう用は…?」

メギドが、爆破した車の方を見て、疑問に思った。

「…誰も、いない?」

そう、ユキ達が乗っていたはずの車だったが、爆破した車には、誰もいなかった。

「おい、菊池」

メギドが菊池に、ホントに殺したのか問おうとしたその時、メギドと菊池の後ろに、瞬間移動で現れたユキとサオリ。二人はメギドと菊池に近づき、ユキはメギドを、サオリは菊池を瞬間移動の能力で、ソウルワールドまで一緒に飛んだ。

「!ここは…、ゲータの創った世界か?」

「!メギド君、どこだ!」

「君の相手はボクだよ、メギド」

「!」

「貴方の相手は私です。菊池」

「…お前、あの時の」

ユキとメギドは、ソウルワールド第二十階層の北の森、サオリと菊池は、同じ第二十階層の西の森へと移動していた。

実は駐車場に行く前、ユキがある話をしていた。

「青山さん」

「?なんだいユキ君」

「ボクちょっと考えたんですけど、おかしくないですか?」

「おかしい?」

「はい」

「どうしたの?ユキちゃん」

「遥さんって人達を信用してない訳ではないんですけど、菊池をこんな簡単に見つけられるの、都合が良すぎないですか?」

「…言われてみれば」

「これは、菊池達の罠かもしれません」

「罠?」

「はい、このまま駐車場に行くのは良いんですけど、菊池達は、何か企んでいるかもしれません。ですから、合流できたら、周囲を警戒します。青山さんも注意してください」

「あぁ、分かった」

そして駐車場に着き、青山が遥に会っている最中、ユキとサオリは周囲を警戒していた。そして、爆発する直前、二人は、遠くから魔力を感知し、運転手を含め、三人は瞬間移動していた。

「遥君、大丈夫かい?」

「……あ、青山さん、すいません」

「謝ることはない、何より君が無事で良かった」

「…青山さん」

「青山さん!」

「吉蔵君、君も大丈夫かい」

「はい、あの子達のおかげで、無事です」

「なら良かった」

「青山さん、誠一が…」

「あぁ、誠一君の事は、私も残念だ」

「私の、私のせいで」

「そんな事はない、誠一君だって、君を責めたりなんか絶対にしない。だから、君は大丈夫だ」

「青山さん、はい、そうですね」

「あぁ、メギドと菊池は二人に任せよう。メギドは元からだが、菊池はもう人ではなく、怪物になってしまった。我々ではどうしようもできない。だから、我々は、信じて待とう。だが、後始末は残っている。そこは頑張ろう」

「はい!」

〈そしてソウルワールドでは〉

「…お前、何者だ」

「ボクはユキ。一人の剣士だ」

「剣士だと(…これほどの魔力、今まで感じ無かったのは何故だ)」

「お前の目的はなんだ、メギド」

「ふっ、そんなのあの世界の支配に決まっているだろう。他に何か理由があるのか?あんな世界に。あんな世界、支配する以外には何の価値もない。だから俺が支配してやろうと言うのに、お前は邪魔するのか」

「…君は、根っからの悪なんだね。支配だの価値がないだの、ふざけるなよ。あの世界、リアルワールドは、お前には一生かけても理解できない魅力がたくさんあるんだ。侮辱するな」

「…で、俺をどうする気だ」

「お前を止める」

「俺を止めるか、笑わせてくれる。なら、止めてみろ、この俺を」

「あぁ、そうするさ」

ユキは剣を握り、メギドが魔力を貯め、構えた。そしてそれは、サオリや菊池の方も同じだった。

「菊池、また会ったからには、貴方を止めます」

「…ふんっ、止めるか。前は失敗に終わったが、今の俺は、前の俺とは違う。この力で、何もかもぶっ壊してやる。そして俺がリアルワールドの頂点に立つ」

「…力を持ったせいで、そんな考えが出てしまうのですね。誰かの為ではなく、自分の為に使う力。…力…」

サオリは、昔父に教えられた事を思い出した。それは、「力とは、力無き者に救いの手を差し伸べ、救う為にある。そしてそれは、悪の道に行ってしまった者を、止める為の力でもある」と言う教えだった。

そして、サオリはそれを、今自分がすべき事と捉え、菊池を止める為、戦う。

「(お父さん、見ていてください。私は、貴方から教わったその教えを、今、実行します)」

既にソウルワールドで戦っているアスタ達を始め、ユキとサオリも、敵を止める為の戦いが、今始まる。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界転移の……説明なし!

サイカ
ファンタジー
 神木冬華(かみきとうか)28才OL。動物大好き、ネコ大好き。 仕事帰りいつもの道を歩いているといつの間にか周りが真っ暗闇。 しばらくすると突然視界が開け辺りを見渡すとそこはお城の屋根の上!? 無慈悲にも頭からまっ逆さまに落ちていく。 落ちていく途中で王子っぽいイケメンと目が合ったけれど落ちていく。そして………… 聞いたことのない国の名前に見たこともない草花。そして魔獣化してしまう動物達。 ここは異世界かな? 異世界だと思うけれど……どうやってここにきたのかわからない。 召喚されたわけでもないみたいだし、神様にも会っていない。元の世界で私がどうなっているのかもわからない。 私も異世界モノは好きでいろいろ読んできたから多少の知識はあると思い目立たないように慎重に行動していたつもりなのに……王族やら騎士団長やら関わらない方がよさそうな人達とばかりそうとは知らずに知り合ってしまう。 ピンチになったら大剣の勇者が現れ…………ない! 教会に行って祈ると神様と話せたり…………しない! 森で一緒になった相棒の三毛猫さんと共に、何の説明もなく異世界での生活を始めることになったお話。 ※小説家になろうでも投稿しています。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...