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獣人国編~中級冒険者試験~

グイグイに翻弄される奥手と奥手

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テクテク…

「へー…私達が帰る準備に行ってた時にそんな事になってたんだね。(クロラ)」

「う、うん…結局相手の貴族の事は分からず仕舞い。
記憶を探ってみたけど該当する人が思い当たらなくてね…」

「でも貴族にしては気の優しそうな人だったんでしょ?
ならば一先ずは安心しても良いんじゃない?(ポーラ)」スリッ…

「あ、あぁ…そうだね…あぅ…
ってちょっと、ポーラ、さっきから近い…」


獣人国への帰路に着いたノア一行。

行きと帰りで変化があった事と言えばノアが中級冒険者になった事、それとポーラもクロラ同様ノアの彼女になった事だ。

試験は試験である意味気の抜けないモノであったが、ポーラもまた気の抜けない存在であった。

別に好ましくないと言う訳では無い。
ノアとクロラとの関係を引き裂こうとはしてこないし、寧ろノアが思っていた以上にポーラはグイグイと来る娘だったのである。





「…嫌、だった…?(ポーラ)」

「い、嫌じゃないよ!?
ただポーラが結構詰めてくるからビックリしちゃって…」

「だってしょうがないでしょ…?
いくらクロラが奥手だからと言って、何だかんだ少年との親密度は相当あるでしょ?(ポーラ)」

「「う、うん…(ノアとクロラ)」」

「2人と同じ土俵に上がる為には、攻撃力が1や2の攻撃を仕掛けてたっていつまで経っても追い付けないじゃない?(ポーラ)」

「ま、まぁね…」

「ならば答えは簡単。
生温い攻撃じゃなく、1発100位の効果的な攻撃で少年を攻め、クロラとの親密度の差を埋めてやるだけよ。(ポーラ)」

「そ、それがこの積極性の正体か!
あ、あのね、ポーラ、僕は普段のポーラが好きなんだ、だから…」

「あ、ノア君。
普段のポーラちゃんって、どちらかと言えばこっちが素だよ。(クロラ)」

「何おぅっ!?」


ノアの思うポーラと言えば、こういった積極性は見せず、影からノアとクロラの決定的瞬間を見逃すまいと行動する大人しい…

あ、行動起こしてる時点で積極性は十二分にあるか、とたった今その考えに至り、自分の中でスッと腑に落ちた。


「だから…ね?
普段の私がコレなの、嫌なら私は以前の感じで振る舞うわよ?(ポーラ)」

「…そんな事言われたら断れないじゃないか…
今までと違くて少し驚いちゃっただけだから、こっちが素ならばこれからはコレで振る舞ってくれて良いよ。」

「ふふ♪
少年は本当に優しいのね、そういう所私好きよ。(ポーラ)」ガバッ!

「あ、あの、ちょっとポーラ!?」

「は、はわわわ…(クロラ)」


自身の左隣に立つポーラに思わず抱き締められたノアは顔を真っ赤にしつつもずり落ち無い様優しく腰に手を添えて抱き止める。

知ってはいた事だが、あまりの積極っぷりにクロラはアワアワしていた。

が、何もポーラの積極っぷりはノアとの親密度を上げる為に行っている事でもあるが、もう1つ理由があった。





<ドッドッドッドッ…>

(うん、やっぱり。
クロラ、少年は同様しつつもこの状況に胸が高鳴っている様だ。
さっきよりも明らかに鼓動が早くなっている、今が好機だぞ。(口パクのポーラ))パクパク…

(そ、そうだけど、一応皆後ろに居るし、往来だから誰か来たら恥ずかしいよぅ…(口パクのクロラ))パクパク…

(そ。なら良いわ、私このまま少年にベタベタして親密所か濃密な事を催させても良いのね?(口パクのポーラ))パクパク…

(あ、あう、あう…(口パクのクロラ))


高鳴るノアの鼓動。
その鼓動をポーラのスキル<地獄耳>で聞き取りノアの反応を確認。
同じく<読唇術>を持つクロラに反応を伝える事で意志疎通を図り、その上で敢えてクロラを煽る。

そう、ポーラはクロラに分かり易い様に見せ付けてクロラをわざと焚き付けているのであった。

ちなみにポーラの思惑としては、クロラと同じ土俵に上がるつもりはあるが、追い越すつもりは無い。
あくまでクロラ優先である。

だが奥手のクロラに合わせて親密度を上げていたら時間が掛かるので、ポーラがブースターの役割を行うのである。


ギュッ!ムニュッ。

「ちょ、ちょっと、クロラさんまで!?」

「だ、だって私達付き合ってるんだもん、これ位ふつー、ふつー…(クロラ)」


見事ポーラの術中に嵌まり、ノアの腕に絡みつつ体を寄せるクロラ。

こういう事は周りに人が居ない時に密かに行っていた為、後方に居る同郷のハクアやユカリの前でイチャイチャしている事に羞恥心で顔を真っ赤にするが、目の前には愛するノアが居る為、その感情を押し殺しつつ笑顔を向ける。

その表情がノアの何かに刺さったのか


(か、可愛い…)

(ふ、計画通り…(ポーラ))


その時のポーラの顔は凄まじく悪い顔をしていたと言う。





テクテク…

((あー良いなぁ…私も彼氏作ってイチャイチャしてぇ…(ハクアとユカリ)))

(ポーラノリノリだなぁ…
クロラが焚き付けられてあのノア君がずーっと翻弄され続けてる…
まぁ何だかんだ楽しそうにしてるから良いか…(ジェイル))

(うーん、変ったなー、ポーラ…
…皆あーしてる事だし、私とジェイルもイチャついても別に良いかなー?(ロゼ))


前を歩く3人を眺め、各々感想を述べる4人。

同郷のクロラに彼氏が居る事を感じつつ、漠然と危機感を感じるハクアとユカリ。

同じく同郷の友達関係であったポーラが正直な気持ちを伝えてノアと付き合った事を素直に喜ぶジェイルとロゼ。

ただ内心、ポーラの開放ぶりには驚いていたりする。

ちなみにジェイルとロゼもひっそりと付き合っており、″色々″ひっそりと育んでいた。



~焚き付けサイド(以下(焚))~
 
「ねぇ少年、クロラとはキスしたの?(ポーラ)」

「ほぁっ!?い、いやしてないよ!(未遂はあったけど…)」

「そう…
もししたら教えて…ね?私も少年と早くシたいから…(ポーラ)」

「え!?へぇ!?」


~術中に嵌められサイド(以下(嵌))~

「ノ、ノア君…な、ならら、す、するっか…?(クロラ)」

「ク、クロラさん落ち着いて、言葉が何か変になってるよ!?」


(焚)「あ、少年今クロラとキスした時の事想像したでしょ?また鼓動が早くなったよ?(ポーラ)」

「い、いやそんな事無いよ!?」

(『当たってるぞ、主。』)

(嵌)「え…そんな事無いの…?(クロラ)」

「あばばば、う、嘘嘘!
本当はすっごく興奮し…あああそうじゃなくてね…」

(『翻弄されまくってるぞ主。』)


こんな感じで翻弄されまくったノア達が獣人国に戻ったのは、2日後の事であった。
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