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第二章 魔法使いの追憶
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「お話しはおすみですかな?」
廊下を歩くエーリヒの元に、横合いから声が掛かる。
「お前、そこは空き部屋だぞ。何をしていた?」
ここは普段は使っていない別荘なのだから、大半が空き部屋ではあるのだが。
「暇なのでスイーツをいただきつつ、これからの展開に頭を巡らせておりました。手前があの場にいるわけにもいかないでしょうから」
「だろうな。お前は怪しすぎる」
「はっはっは」と豪快に笑うが、当のルー・シンはあまり面白くはなさそうだった。
エーリヒに合流し、ルー・シンはその歩みに合わせて横に並ぶ。
「今頃王宮は大混乱でしょうな。魔法学院には自分の子供を通わせている貴族もいますから、彼等の不満は間違いなくヘルフリートに向けられるでしょう」
「ああ。ルー・シン。ヘルフリート陛下はこの件をどう処理すると思う?」
「簡単なことです」
ルー・シンが立ち止る。
少し前に行き過ぎたエーリヒは立ち止まり、振り返って彼の方を見た。
その顔には酷薄な笑みが浮かんでいる。
「殺戮でしょう。異を唱える者全てを消せば、自分の意思だけで全てが決定されるのですから」
「それは正しいやり方か?」
「いいえ、全く。ですが無知なる王には相応しいかと。
ヘルフリートもしばらくは真面目に事を治めようとするでしょう。しかし、それができないと判るや彼は剣を取って事を鎮める。不思議なことは何もありません。王とはそれができる立場なのですから」
「その後にどうなる?」
楽しげに語るルー・シンの言葉を聞いても、エーリヒは冷静だった。彼の望みは、本当に聞きたいことはその先にある。
「一度感情が爆発すればそれは抑えられません。勢いのままに、イシュトナルを責めるでしょうな」
「勝敗はどう見る?」
「残念ながら手前は預言者ではないので、そこまでは。
戦力ではこちらが圧倒的。しかし、向こうには予測不可能なエトランゼと何よりも……。今回の件で姫と英雄は民衆を味方に付けました。それがどう転ぶか、今はまだ判りません」
敢えて言うならば、これから先どれだけヘルフリートが愚行を犯すかどうかにかかっているのだが、そればかりはルー・シンにも予想ができない。
そこで言葉を切ってから、「ただし」と怜悧なエトランゼは続ける。
「我々も準備はしておいた方がいいでしょうな」
「それは何の準備だ?」
「戦ですよ。イシュトナルとの」
わざわざそれを尋ねたエーリヒの真意を気付かない振りをして、そう言ってのけた。
「なるほど。では今日は適当にヘルフリート陛下の機嫌を取って、さっさと引き返すとしよう。俺も愛する妻と子供に会いたいしな!」
「手前はもうしばらくこの地の甘味を堪能したかったのですが」
「それは諦めろ。……それからもう一つ」
再び二人は歩き出し、その道中にエーリヒは先程の会話で気になったことを尋ねる。
「ヨハン君に聞かれたのだが、魔法学院に技術提供をしている者がいると思うか?」
教えぬとは答えたが、その事実はエーリヒも知ることはない。
当然それはルー・シンも同様のはずなのだが、帰ってきた答えは意外なものだった。
「いるでしょうな、何者かが」
「……ほう?」
「キメラについての報告を聞きましたが、あんなものが既存の技術で作れるわけがない。ましてや第二世代エトランゼのギフトの発現方法など」
「では誰がその裏にいる? ヘルフリート陛下でなければ他の五大貴族か? それとも他国の……」
「そこまではまだ」
ルー・シンは漠然と考えていた。
無論、これは単なる勘であって、そこに至る筋道の立った理屈があるわけではない。
しかし、なんとなく、エトランゼである彼には感じられた。
それを突きとめたその時が、この世界の真理のその一端が明かされるであろうと。
廊下を歩くエーリヒの元に、横合いから声が掛かる。
「お前、そこは空き部屋だぞ。何をしていた?」
ここは普段は使っていない別荘なのだから、大半が空き部屋ではあるのだが。
「暇なのでスイーツをいただきつつ、これからの展開に頭を巡らせておりました。手前があの場にいるわけにもいかないでしょうから」
「だろうな。お前は怪しすぎる」
「はっはっは」と豪快に笑うが、当のルー・シンはあまり面白くはなさそうだった。
エーリヒに合流し、ルー・シンはその歩みに合わせて横に並ぶ。
「今頃王宮は大混乱でしょうな。魔法学院には自分の子供を通わせている貴族もいますから、彼等の不満は間違いなくヘルフリートに向けられるでしょう」
「ああ。ルー・シン。ヘルフリート陛下はこの件をどう処理すると思う?」
「簡単なことです」
ルー・シンが立ち止る。
少し前に行き過ぎたエーリヒは立ち止まり、振り返って彼の方を見た。
その顔には酷薄な笑みが浮かんでいる。
「殺戮でしょう。異を唱える者全てを消せば、自分の意思だけで全てが決定されるのですから」
「それは正しいやり方か?」
「いいえ、全く。ですが無知なる王には相応しいかと。
ヘルフリートもしばらくは真面目に事を治めようとするでしょう。しかし、それができないと判るや彼は剣を取って事を鎮める。不思議なことは何もありません。王とはそれができる立場なのですから」
「その後にどうなる?」
楽しげに語るルー・シンの言葉を聞いても、エーリヒは冷静だった。彼の望みは、本当に聞きたいことはその先にある。
「一度感情が爆発すればそれは抑えられません。勢いのままに、イシュトナルを責めるでしょうな」
「勝敗はどう見る?」
「残念ながら手前は預言者ではないので、そこまでは。
戦力ではこちらが圧倒的。しかし、向こうには予測不可能なエトランゼと何よりも……。今回の件で姫と英雄は民衆を味方に付けました。それがどう転ぶか、今はまだ判りません」
敢えて言うならば、これから先どれだけヘルフリートが愚行を犯すかどうかにかかっているのだが、そればかりはルー・シンにも予想ができない。
そこで言葉を切ってから、「ただし」と怜悧なエトランゼは続ける。
「我々も準備はしておいた方がいいでしょうな」
「それは何の準備だ?」
「戦ですよ。イシュトナルとの」
わざわざそれを尋ねたエーリヒの真意を気付かない振りをして、そう言ってのけた。
「なるほど。では今日は適当にヘルフリート陛下の機嫌を取って、さっさと引き返すとしよう。俺も愛する妻と子供に会いたいしな!」
「手前はもうしばらくこの地の甘味を堪能したかったのですが」
「それは諦めろ。……それからもう一つ」
再び二人は歩き出し、その道中にエーリヒは先程の会話で気になったことを尋ねる。
「ヨハン君に聞かれたのだが、魔法学院に技術提供をしている者がいると思うか?」
教えぬとは答えたが、その事実はエーリヒも知ることはない。
当然それはルー・シンも同様のはずなのだが、帰ってきた答えは意外なものだった。
「いるでしょうな、何者かが」
「……ほう?」
「キメラについての報告を聞きましたが、あんなものが既存の技術で作れるわけがない。ましてや第二世代エトランゼのギフトの発現方法など」
「では誰がその裏にいる? ヘルフリート陛下でなければ他の五大貴族か? それとも他国の……」
「そこまではまだ」
ルー・シンは漠然と考えていた。
無論、これは単なる勘であって、そこに至る筋道の立った理屈があるわけではない。
しかし、なんとなく、エトランゼである彼には感じられた。
それを突きとめたその時が、この世界の真理のその一端が明かされるであろうと。
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